35話 再会
俺たちはダンジョンを攻略したあとそのまま病院に来た。
「すみません、神崎朱音の兄です。面会をお願いします」
「はい。神崎朱音様の面会ですね」
朱音のいる部屋に案内された。
「この子が蒼空の妹さんね。確かに魔力過多症になっているわね」
「そうなんです。だから俺はエリクサーを探し求めていたんです」
俺はアイテムボックスから取り出した物を見つめている。
俺はドロップ品を確認した。
中に入っていたのは豪華な瓶だった。いつも見るポーションとは瓶から雰囲気が違った。
「え!?これって!」
「どうしたのよ?」
俺はシュリにもドロップ品を見せた。
「もしかしてこれってエリクサーですか?」
「私も見たことがないから確証はないけど鑑定してみるわよ?」
「お願いします」
もしかしてという物をやっと見つけれたのでこれで違ったらショックを受けそうだからシュリに鑑定してもらうことにした。
(頼む!これがエリクサーであってくれ!)
表情でどうだったか分かりそうだからシュリの顔も見ることができない。
「蒼空」
「はい」
なんかいつもよりシュリの声が優しい気がする。
「伝えてもいいかしら?」
俺は答えを聞く前に深呼吸して心を落ち着かせた。
「お願いします」
「蒼空、これはエリクサーよ」
「え?」
聞き間違いだろうか。今、シュリはエリクサーと言ったのか。
「おめでとう。正真正銘これはエリクサーよ」
「やっとです。やっとこれで朱音を救ってあげられる」
俺はここ数年の苦労がフラッシュバックした。
「俺、頑張ったんです。ここまで大変でした」
「ちょっと、蒼空?」
やっと目的のアイテムが手に入ったことで泣いてしまった。
「両親が死んでから朱音の入院費を稼ぐのに学校を辞めて働いたしダンジョンで死にそうになりました」
シュリは静かに聞いてくれている。
「なんで俺だけ学校を辞めて働かないといけないんだ親と妹を恨んだこともありました」
親は交通事故で死んでしまったため高校1年生になったばっかりの俺に全ての責任が突如として降りかかった。
周りの学生は学校に通い部活をして青春をして普通の生活をしているのを羨ましく思ったと同時に自分は何をやっているんだろうと思ったことは数知れない。
「それでも朱音は俺のたった1人の家族なんです」
親を亡くし祖父母もいなかったので家族と言えるのはもう妹しかいないのだ。
「だからどんなに辛くてもまた朱音と一緒に暮らしたいと思って必死に働いたんです」
俺の中で家族より大事なものはないと思っている。
「でもこれでやっとまた一緒に暮らせます」
シュリは俺を抱きしめて頭を撫でてくれた。
「私と出会ってからの蒼空はすごく頑張っていたから出会う前もすごく頑張っていたと思うわ。妹のために必死に魔法を覚えようとしたりそんな中、私にも気を遣ってくれたわ。蒼空は私が出会った誰よりもお兄ちゃんをできているわ。だから頑張った自分を誇りなさい」
俺は誰かに褒めて欲しくて頑張っていたわけではないがシュリが褒めてくれたことによりここ数年の努力が報われた気がする。
「ありがとうございます」
「もう涙拭きなさいよ。さっさとダンジョンを出て本当の褒美を貰いに行くわよ」
「はい!」
「蒼空?どうしたの?ぼっーとして」
「いえ感慨に浸っていました」
一鬼さんたちと会った時に仮面があってよかった。じゃなきゃ俺の目は赤かっただろう。
「これって飲ませたらいいんですよね?」
「そうよ」
緊張した手で俺は朱音を起こした。鑑定で治ることは分かってはいるが、もしもの事を考えてしまっている。
「大丈夫よ心配しないで」
その言葉で俺は緊張がほぐれて溢さずに口にエリクサーを注ぐことができた。
「またせたな。朱音」
妹が昏睡状態になったのは最近だが病気になったのは8歳の頃だからそこから考えると長かった。
エリクサーを飲ませてすぐには目を覚さなかったので起きるまで待つことにした。
「全然目を覚まさないですね」
飲ませてから1時間が経った。鑑定で魔力過多症の状態異常は消えているから治っているのだが目を覚まさない。
「そのうち起きるわよ」
「もしかしてまだ別の何かがあるんじゃないですか?」
「大丈夫、落ち着きなさい。エリクサーは全ての病気、怪我を治すの。だから大丈夫よ」
「はい」
それから起きることを祈りながら待った。
「ん」
「朱音!」
朱音はゆっくり目を開けた。
「お兄ちゃん?」
「ああ。よかった、無事起きて本当によかった」
「お兄ちゃん見たの久しぶりな気がする」
「待たせてごめんな」
これでやっと本当の意味で報われた。
「身体に異常は無いか?」
「うん!病気が治ったのかってくらい人生で1番、身体の調子が良いよ!」
「それならよかった」
俺はナースコールを押して医者を呼んだ。
「え!?朱音ちゃん目覚めたの!?」
「はい。朱音に異常ないか検査をお願いしてもいいですか?」
「勿論よ!すぐに先生呼んでくるわね」
ナースのお姉さんは先生を呼びに行った。
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「さっきから気になっていたけどそちらの超絶美少女は誰?」
そういえば朱音とシュリは初対面だった。
「蒼空の妹さん、初めまして。私はシュリ・アーレシアよ。シュリって呼んでね。よろしくね」
「うちは朱音って言います。朱音って呼んでください。こちらこそよろしくお願いします」
「じゃあ朱音ちゃんって呼ぶわね」
「朱音、実は今シュリと一緒に暮らしているんだ」
「え!?なんで!?もしかしてお兄ちゃんの彼女なの?こんな綺麗な人が?しかもシュリさんは高校生くらいだよね?え?どういうこと?」
「朱音、説明するから落ち着け」
朱音は凄く動揺している。確かにいきなり同棲しているって言われたら驚くがそれにしても驚きすぎだ。
先生が来る前に軽くシュリとの関係を話した。
「まぁこんな世の中になったしそんなこともあるか。シュリさん大変でしたね。こんなお兄ちゃんのお守りをして」
「おいこら。事実だが言葉にされるとイラつくぞ」
「大変だったわ。蒼空たら泣くんだもん」
「シュリも乗らないでください。ってかそれは言わないでくださいよ」
「冗談よ」
シュリと朱音にイジられているがこんな普通のことが今は嬉しい。
ガラガラ
「神崎さん起きたんですか!?」
「あ、先生」
「あの病から起きた事例はたぶん神崎さんが初めてですよ」
「先生、たぶん異常はないと思いますが朱音を検査してくれませんか?」
「はい、すぐにしましょう。神崎さんこちらの車椅子に乗ってください」
「先生、うちたぶん歩けます」
「え?」
朱音はここ数年ベットと車椅子の生活だったとは思えないくらい安定して立ち上がり歩いた。
「え!?どうして歩けるんですか?」
「分からないのですが今、絶好調なんです!」
「これはいろいろ精密検査をしないといけないですね」
たぶん今日中には検査は終わらないだろう。
「じゃあ今日のところは俺たちは帰るからまた明日くるよ」
「うん」
「先生、よろしくお願いします」
俺たちは朱音と別れて病院をあとにした。
「朱音ちゃん、元気になってよかったわね」
「はい。あんな元気な朱音は久しぶりに見ました」
病気になってからお見舞いに行っていたが朱音は常に笑顔でいたがどこか嘘ぽく無理していたように見えたが今日の朱音は嘘偽りない笑顔だった。
「あの感じだとすぐ退院してまた一緒に暮らせそうです」
「よかったわね」
俺は立ち止まった。
「シュリ」
「うん」
「本当にありがとうございました」
「いきなりどうしたの?」
「シュリがいなかったらエリクサーはまだ手に入れれていなかったと思いますしそれにもしかしたら俺1人だけだったら今頃大型ダンジョンで死んでいたかもしれないのでお礼を言っておきたいんです」
たぶんシュリに出会ってなかったら大型ダンジョンをひたすら異常も気づかずに進んでいた。
だからシュリはいわば俺と朱音、2人を救っていると言っても過言ではないのだ。
「本当にありがとうございました」
「蒼空、それはお互い様よ。そんなこと言い出したら私も蒼空がいなかったらもしかしたら路頭に迷っていたかもしれないわ」
「そんなことはないと思いますが」
「蒼空もそうでしょ?だからお互い様よ」
「でも俺の方が借りは大きいですよ」
こっちは2つ分の命を救ってもらってる。
「じゃあ蒼空。とびっきり美味しいご飯につれてて」
「突然ですね。別にいいですけど」
「それで貸し借りはなしね。私、一緒にいる人と貸し借りを作るのは嫌なの。だから今回のことはこれでおしまい」
「でもそれだけでは」
「いいの!お・し・ま・い分かった?」
顔を近づけられて脅された。
「分かりました。でも俺からもこれだけは言っときます」
俺は朱音を治すという目標は叶った。だから次に叶える新しい目標をここで宣言しておく。
「俺はシュリを元の世界に絶対に帰します!これだけは譲れません」
これは宣言でもあり実現することだ。そのためなら俺は再びどんな苦難にも負けずに努力を続けられる。
「はぁー分かったわ。今の蒼空に何を言っても無駄だと思うから」
「そうですよ。だから諦めて俺にこの願いを叶えさせてください!」
「じゃあ私はこう返すわ。私を元の世界に帰して!」
「じゃあ俺もこう言います。俺に任せてください!」
これでシュリ公認の新しい目標になった。
「ヒロインぽく言ってみたんだけどどうかしら?」
「俺も主人公ぽく言ってみました」
「「ハハハハ」」
今の俺たちならどんな目標も叶えられる気がする。
このあと祝勝会を兼ねて高級焼肉店に行った。
「何このお肉!口に入れた瞬間に溶けたわ。この世界にはまだまだこんな美味しいものがあるのね!これは美味しい物を食べ尽くすまでは元の世界に帰れないわ」
先ほどのやり取りはなんだったのかと思うような発言をするくらいお肉が美味しかったようだ。




