20話 異世界人
やはり俺の予想通り異世界人だった。しかもこの地球にダンジョンを作った女神ラミリアの世界の人だ。
俺は今からこの子にとって絶望的なことを言う。
「あのよく聞いてくださいね。ここはあなたがいた世界ではありません。どうゆうわけか違う世界に来ています。」
「どういうこと?冗談は辞めて欲しいんだけど」
こんなこといきなり言われても冗談だと思うのも無理はない。
「いや冗談じゃなく本当です」
「嘘よ!適当なことを言わないで!」
「じゃああなたの世界にこういう物はありましたか?」
俺はスマホを取り出して見せた。
「何この薄い板は?」
「スマホです。この世界の人なら大体の人がわかります。」
「これだけならアーティファクトの一種かもしれないわ」
「じゃあこの地図を見たことありますか?」
俺はスマホで世界地図を調べて見せた。
「私が知ってる地形や地図じゃないわ」
今のでこれが現実と信じ始めた。
「あは、あははは。じゃあ私は本当に異世界に来たってこと?」
「そうです」
自分の頭の中を整理しているのか落ち着いて何か考えている。
「取り乱してごめんなさい」
やっと現実を認めたようだ。そりゃ信じたくもない気持ちも分かるが現実なのだからしょうがない。
「いえ、大丈夫です」
「そういえばまだ名前を教えていなかったわね。私の名前はシュリ・アーレシアよ。シュリって呼んでちょうだい。」
「分かりました。俺の名前は神崎蒼空です。蒼空って呼んでください。」
「わかったわ。蒼空、確かに私の世界では聞かない名前ね。蒼空、私ってどうしたらいいかしら?元の世界に帰れるかしら?」
ここで気休めの言葉を言っても意味ないだろう。
「現状では無理だと思います」
「そうよね。私の世界でも異世界に渡る方法なんてなかったもの」
だが1つだけ可能性がある。
「1つだけ可能性があるとしたら女神ラミリア様に会うことですね」
「ラミリア様に会う方法なんてあるの?」
「実は・・・」
ここ半年くらいであったことを話した。
「つまりラミリア様はこの世界に干渉してダンジョンを作った。しかも私たちの世界の管理不足で何かが攻めてくるから強くなって欲しい。そのために大型ダンジョンを攻略するように言われて攻略するとまた会えると。」
「そうです。前回、ラミリア様と話したことが本当ならですけど」
「わかったわ。それなら私も攻略に付き合うわ」
「それはありがたいですけどシュリって強いんですか?」
「失礼ね、勇者パーティーの魔導士をやっていたのだから強いに決まってるでしょ」
本当に強いのか鑑定してみようかな?
無断で鑑定するのは失礼だと思うので一応聞いておく。
「本当かどうか鑑定してみていいですか?」
「いいわよ。その代わり私もあなたを世界眼で見るわね」
シュリ・アーレシア 48歳 ハイヒューマン
レベル110
職業 魔導士
HP 2800/2800 MP4000/4000
攻撃力 980
防御力 890
体力 870
敏捷性 920
魔法力 2700
魔法耐性2450
スキル
火魔法8、水魔法7、土魔法7、風魔法7、木魔法7、雷魔法7、氷魔法7、空間魔法6、付与魔法6、生活魔法7、合成魔法6、創造魔法6、並列思考7、無詠唱7、気配察知7、魔力感知7、世界眼4、魔眼4、アイテムボックス7、言語理解6、剣術3、武術3、身体強化5
ツッコミどころ満載だがまずは強すぎじゃね?素の状態で魔法系ステータスがデュハランと戦った時の俺のステータスより高い。
これを見ると本当に勇者パーティーの一員なんだなって思う。
あと年齢や種族もおかしい。シュリの見た目は高校生くらいで年齢から考えるとかなり童顔だから48歳と言われても信じれない。
たぶんこのハイヒューマンという種族と関係しているのだろう。
「あなたなんで全属性魔法のユニークスキルを持っているの?」
彼女の顔を見ると驚きからか信じれないって顔をしている。
「特典でもらったからですかね」
「特典って何かしら?それにもう一つユニークスキルあるしこのスキルの数は何?多すぎない?」
「そんなにおかしいですか?」
「おかしいわよ」
もしかしなくても俺も俺でツッコミどころが多いようだ。
「お互い聞きたいことがあると思うから質問していきましょう」
「分かったわ」
「なんでこんなにMPや魔法力が高いんですか?」
「生まれつきね。私は生まれた時からその辺の数値が高かったのよ」
朱音と同じタイプなのかもしれない。
「なるほど。じゃあハイヒューマンって種族は何ですか?人間とどう違うんですか?」
「ハイヒューマンは人間の上位互換ね。寿命と基礎スペックが違うわね。ハイヒューマンは平均寿命が500歳くらいで若い時期がとても長いの。
だから若く見えるみたいだ。
「シュリって勇者パーティーなんですよね?」
「そうよ」
「そっちの世界ではどれくらい強いんですか?」
「S級冒険者より強いわ」
「S級がどれくらいの強さかが分からないんですが」
「うーん、例えるのが難しいけど蒼空が戦った1番強かったモンスターってなに?」
「デュラハンです」
「デュラハンが私たちの世界のA級くらいS級なら1人で討伐出来るわ」
デュラハンでA級ということは異世界のS級は結構強いようだ。だが本当にそんなに強いのだろうか。
「デュラハンでA級ですか?馬に騎乗したデュラハンのステータスは2000近かったですよ」
「え?デュラハン単体じゃないの?しかもそのステータスならそのデュラハンは特殊個体でS級相当ね」
「やっぱりそうですよね」
やっぱり俺が戦ったデュラハンは強かったようだ。
「というかよく勝てたわね。ステータス見る感じ武器ありでA級に差し掛かったくらいよ」
自分がどれくらいの強さか知らなかったがA級くらいらしい。
「それは称号の効果のおかげですね」
「そう!それも気になっていたの!次は私が質問するわよ」
「どうぞ」
「まずはユニークスキルを特典で貰ったってどうゆうこと?普通は生まれつきか大型ダンジョンやS級ダンジョンのボスを倒した時に極稀にユニークスキルの書をドロップしたやつを使うくらいよ。それもほとんどないから基本は生まれつきね」
やっぱりユニークスキルを持っているのは稀みたいだ。
「そうなんですね。特典っていうのは称号を獲得した時に一緒に貰えたんです。」
「称号を獲得したら貰えたっていうのがよく分からないのよ。こっちの世界ではそんなことないから」
どうやら俺の世界とシュリの世界では少し設定が違うみたいだ。
「ラミリア様が言ってましたけどこの世界で強い人を作るために称号と一緒に武器とかアイテム、スキルを与えているみたいなことを言ってました。まぁそのほとんどの称号を俺が手に入れてしまいましたけど。」
そのせいでラミリアは文句を言いたそうにしていた。
「そうゆうことね。だからユニークスキルを2つ持っているのね」
「そうです」
「デュラハンはどうやって倒したの?」
「それは称号の効果によるステータスアップです」
「称号によってはそういうのがあるわよね。私はそうゆう称号を持っていないけど勇者が英雄の証という称号を持っているの。その効果がモンスターとの戦闘時ステータス2倍とHPが50%を切るとさらにステータス2倍っていう勇者らしい効果ね」
「すごい称号ですね」
流石、世界を救う勇者という感じの効果の称号だ。
「勇者がいるってことは魔王がいるんですか?」
「いるわ」
シュリに魔王のことを聞いたら急に顔が暗くなってしまった。
「どうしたんですか?あまり聞かない方がいい話ですか?」
「いえ、大丈夫よ。私たちの世界では魔王軍と人類で戦っているのだけど魔王軍が強すぎるせいで人類の生存圏が大陸の半分くらい侵略されているの」
シュリの世界ではだいぶ人類が劣勢のようだ。
「先代の勇者が強かったからまだ世界征服されてないけどその先代も5年前の戦いで死んでしまったわ。今代の勇者に人類の命運がかかっている中、私がパーティーから居なくなってしまったから心配で」
そんな大変な時にこちらの世界に飛ばされてしまったみたいだ。
「ごめんなさい。貴方には関係ないのに落ち込んでしまって」
「そうゆう事情ならしょうがないですよ」
もしシュリが向こうの世界に戻っても魔王軍に人類が負けていたらと思うと気が気じゃないだろう。
「それならなおさら早く元の世界に戻らないといけないですね」
「そうね」
「他に聞きたいことってありますか?」
「あなたのユニークスキル全属性魔法ってとんでもないスキルなのは自覚している?」
「まぁなんとなく」
全属性使える時点でとんでもないことだと思うがシュリが言っているのは別の意味だと思う。
「全属性の魔法を使えると賢者になれるらしいのだけど私の世界では過去に賢者になれたのは2人しかいないのよ」
「そんな少ないんですか?」
「そうよ。まぁあなたを入れたら3人になったけどね。それで過去の文献を見ると2人ともとんでもないことをしていたのよ」
「とんでもないこと?」
「例えば万を超える魔物の軍勢を1発の魔法で消し飛ばしたとか初代魔王を1人で倒したとかエンシェントドラゴンをペットにしていたとか本当の事かどうか正直怪しい話ばかりだけどね」
「確かにあり得ないような話ですね」
でもそれが本当なら俺にはそれだけの潜在能力を秘めていることになる。
「俺もそれくらい強くなりますかね?」
「1年経たずにA級くらいの強さになっているからいけるんじゃない?仮にそんだけ強くなったら私たちの世界を救って欲しいけど」
「そうなれたら救いに行きますよ」
「気長に待ってるわ」
顔を見るとまだ落ち込んでいるようだ。少しでも元気になるように何かしてあげたい。
「聞きたいことも聞いたし時間が勿体無いから行き(ぐぅ)ましょうか」
シュリはお腹が空いているようだ。俺にお腹の音が聞かれてしまい恥ずかしそうにしている。
「進む前にご飯食べますか?」
シュリは頷いた。
俺はアイテムボックスからメロンパンとチョココロネとコーヒー牛乳を取り出して渡した。
「ありがとう。これって何?」
「菓子パンです。甘いパンですけど大丈夫ですか?」
「パンが甘いの?気になるから食べるわ」
シュリはメロンパンから手にとった。
「手に持っただけで分かるわ、すごくふわふわね」
手で感触を確かめてから1口食べた。
「何これ!?美味しい!こんなふわふわで甘いパンを食べるのは初めて!」
「気に入ってくれたなら良かったです」
日本の企業努力は異世界人の口にもあったようだ。
それからメロンパンをすぐ食べ終わりチョココロネも美味しそうに食べていた。
「凄いわね。パンってこんなに美味しいのね」
「そっちの世界では美味しくないんですか?」
「そうね。硬めのパンでパサパサしているからスープにつけて柔らかくして食べるわ。それに甘味なんて高級品だから貴族の食べ物って感じで滅多に食べることが出来ないの」
「俺たちの国では考えられないです」
異世界の食事事情は結構厳しそうだ。
「それなら日本には美味しい物が沢山あるので食べて欲しいです」
「他にも美味しい物があるなら食べてみたいわね」
俺たちはお互いの世界のことを話したが今まで1人でダンジョンにいたので誰かといると新鮮で悪くない。
これからのダンジョン攻略が楽しみだ。




