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吸血鬼状態に意識を切り替えると、敵の挙動が加速する思考に対してゆっくりと見える。赤い双眸は不気味に輝いており、心なしかプログラムであるはずのモンスターたちは怯えているように見える。
前線が崩れたことにより迫ってきたモンスターたちはすでに中衛を通り越して後衛まで到達しており、各所で悲鳴が聞こえてきている。状況を立て直すためにパニックになりながらもプレイヤー達は指示に従い行動しているが、なかなか数が減らない現状だ。
ソフィアもモンスターの集団に囲まれ、モンスターは怯えながらもじりじりと距離を詰め、攻撃のタイミングをうかがっている。
気づけば私の周りのプレイヤーはほとんどやられてしまい、数人ほどしか姿が確認できない。そんな状況を打開するためプレイヤーたちの集団を抜け出し、敵の前に姿をさらし右手に握るGLOCK17のマズルから弾丸を敵に向けて撃ち放していき、クリティカルとスキルによるダメージ増加を受けた攻撃は命中した敵をすべて一撃で倒していく。
敵を倒した勢いのまま左手に握るコンバットナイフで目の前の敵の首をすれ違いざま切り離し、切り抜けた勢いのまま空中で側方宙返りをしつつ、ポーチからマガジンを出しリロードする。続けざま接近し銃を撃ち、敵との距離が縮まるとナイフで切るというパターンを繰り返しているとついに道が開け合流できるようになる。
「道は作ったわ。カバーはするからみんなと合流をしましょう」
プレイヤーたちは素直に指示に従ってくれ、開けた道を走り味方と合流をする。
これである程度まともな戦力が用意できたわね。そうしたら次は敵を殲滅するのみよ。
「このまま合流したら一気に敵を殲滅するわ!」
ピンチを切り抜けた甲斐もあり、周りのプレイヤーたちは意見を聞いてくれ敵の殲滅のため攻撃を開始する。人間ピンチの時に発揮する集中力というものはすさまじいもので、初めて組む者同士であるのにも関わらず見事な連携で敵を倒していく。
その後も戦闘は続き、しばらくすると復帰した前衛たちが合流し敵を殲滅することに成功した。
ゲーム内は夜になり、休息をとるためキャンプを設営する。キャンプ経験者のプレイヤー主導のもと、そこまで時間をかけることもなくキャンプ地の設営が終わる。
私は椅子に座りショップで買っておいたオレンジジュースを飲んでいると声を掛けられる。
「嬢ちゃん、さっきはありがとうな。あそこで食い止められなかったら砦まで一気に突破されて、クエスト失敗するところだったぜ」
声の方を向くと、ガタイが良く頭部がはげた黒人のおじさんが満面の笑みを浮かべている。
「気にすることはないわ。私はあの状況を楽しめたもの」
「おぉ、頼もしいもんだな。その調子でこの後も頼むぜ」
優雅な笑みを浮かべつつ返すと、お礼を言い満足したのかおじさんは仲間たちのもとへ帰っていく。にしてもあのガタイと見た目で魔法使いなのね。
先ほどの戦闘からずっと周りを警戒していたが敵の気配はないようで、目を瞑り意識を落ちつかせると目が本来の青と赤のオッドアイに戻り、雰囲気も本来のものに戻る。それにしてもさっきの戦闘は楽しかった、これなら今回のイベントの統率者と戦うときはもっと楽しそう。
食事をとり夜景を眺めていると、先ほどの戦闘で司令官を務めたものが発言する。
「みんなさっきはありがとう。おかげで無事クエストをここまで進めることが出来ました。この後は交代で睡眠をとって早朝に作戦会議の後奥地に進もうと思います。それではまた朝に」
どうやら深夜の進軍はやめ、睡眠をとってから攻略するようだ。ゲーム内での睡眠は現実で寝るよりも疲れが残るものの、ある程度は疲れが取れるため少しでも寝れるのはありがたい。
私は女性用のテントに入り、隅に座った後毛布をかぶりそのまま睡眠につく。睡眠に着いたソフィアの寝顔はとてもかわいらしく、先ほど殺戮ショーを繰り広げていた妖艶な雰囲気はない、年相応のあどけない可愛さがあった。
今回も短いです。次回はボスとの戦闘のため、ある程度長い話になると思います。
追記:次回更新は24日です。




