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「よし、今日もがんばろう」
イベントまで残り3日となり、フリューセルにはボスを攻略してたどり着いたプレイヤーたちの姿がちらほらと見えている。
この町の周りには剣、銃、魔法などを使うゴブリンや、色に応じた魔法を撃ってくるスライムが出現し、種類の多い攻撃手段に最初は手間取ったものの、人間は嫌でも覚えるもので、慣れてきたプレイヤーが多くなってきた。
町の外に出ると違う陣営同士で組んだパーティが何組かおり、交流も結構しているみたい。
敵を見つけ、無防備にこちらに背を向けているゴブリンにFN F2000のスコープを覗き標準を合わせ発砲し、反動を制御しつつ撃った弾を全て命中させHPを削りきる。
「この武器にも慣れてきたな」
近距離状況下での戦闘はハンドガンであるGLOCK17と、つい先日購入したコンバットナイフを両手に持ち戦うことが多いが、ある程度余裕のある中距離から遠距離は、アサルトライフルのFN F2000で戦うことが多い。
でもリスクがないとはいえ、この距離から銃を撃って安全に倒せちゃうのはつまらないな。いっそのこと2挺目のハンドガンを用意して二挺拳銃とかで戦うのもいいかもしれない。
「まぁ、武器はおいおい考えておこう」
それにしても魔法は厄介だ。魔法にもヒットボックスが設定されているため、その位置に攻撃を当てれば消すことが出来るのだが、銃弾や弓と違って表面上ではヒットボックスの位置がわからないため、同じレベルの魔法同士で当たれば打ち消しあうが、魔法に対してそれ以外の手段で攻撃した場合は正確にヒットボックスに攻撃を当てないと消すことができない。
魔法を撃たせなかったり撃たれても避けれればいいのだが、攻撃をくらっても魔法は発動できてしまうため、止める手段が現状相手詠唱を止めるか体力を削りきるしかなく、一部に追尾してくる魔法があるため、防御手段を持っていない場合タイミングを見て回避するか撃ち落とすしかないのである。
銃口からまっすぐ飛んでくる銃とは違い、魔法は直線に限らず曲げたり、追尾したりできるため人気な攻撃手段のようだ。
「どうにかイベントまでに魔法に慣れないと。そうと決まればゴブリンメイジ狩りだ」
敵にわざと魔法を撃たせ撃ち落とす練習をする。回避は安定してできるが、魔法を撃ち落とすとなるとかなり難しく、体力が減っては回復を繰り返す。
2時間ほどぶっ続けで戦闘を繰り返していると、普段よりも弾の消費が多いこともあって弾数が心もとなくなったため、弾の補充のため休憩も兼ねて町に戻ることにした。
ショップで弾と回復薬の補充をしていると、広場の方から喧噪が聞こえてくる。声の方に向かい野次馬の隙間からどうにか見ると、囲いらしき集団に守られた女性と男性が揉めているようだ。
「いい加減しつこいのよ! 攻略のお礼にデートを1回だけする約束で、彼女になるなんて言ってないわよ!」
「おいおい、あんなに楽しそうにしてくれたんだから惚れてるんだろ。俺今はフリーだから付き合ってやるよ」
「お礼なんだから、少なくとも表面上は楽しそうにするに決まってるでしょ」
「照れてるのか? ならさ、俺とバトルして俺が勝ったら付き合えよ。負けたら潔く引いてやる」
「なんであんたと戦わないといけないのよ。戦うまでもなくあんたなんて願い下げよ」
「なら俺はお前の彼氏だって言いふらすぜ。姫プレイかつ配信者のお前に彼氏がいるってなったらどうなるだろうな」
「ぐ、でもあたしのレベルじゃこいつに勝てない」
女性は悔し気に言葉を漏らしており、周りの男たちは心配そうにしている。
「別に代役立ててもらってもかまわないぜ。どうせ俺が勝つしな」
「あたしらより実力があるのなんてわかりきってるじゃない」
「姫、俺がこの中で一番実力あるけど、正直あいつには勝てないよ」
「わかってるわよ。でもだからって無視したらめんどくさいし」
姫と呼ばれたプレイヤーと囲いは相談しあっているが周りに野次馬も増えつつあり、男の仲間だろうかヤジを飛ばしている奴もいて逃げれる状況でもなさそうだ。
幼馴染のあいつを見習うわけじゃないけど、たまには人助けしてみようかな。私は目を瞑り意識を集中させ、吸血鬼である自分の力を呼び起こす。
意識が切り替わり目を開くと思考が早くなっているのを感じる。どうやら無事切り替えられたようだ。
そのまま野次馬の方に向かい歩くと自然と道が出来、そのまま出来た道を歩み姫と呼ばれるプレイヤーに話しかける。
「よかったら私が代役やりましょうか」
「気持ちはうれしいですけど、失礼ですがどなたですか?」
話しかけると困惑したようにこちらを見てくる。知らないやつに代役やろうかといわれても困るわよね。
私は胸に片手を置き、不敵な笑みを浮かべながら自己紹介する。
「私の名前はソフィア。少なくともあなた達よりは強いから安心して任せなさい」
私が名乗るとざわつきが起こり、レグナント側のエリア解放したやつだよなと聞こえてくる。私の名前は意外と情報が回っていたようだ。
姫も解放者の名前は知っていたのか、覚悟を決めた顔つきでこちらに頭を下げてくる。
「ぜひお願いします。こいつなんかボコボコにしちゃってください」
「任せなさい。ということで、私が代役をさせてもらうけどいいわよね」
男にそう聞くと頷き言葉を返してくる。
「構わないぜ。そのかわり俺が勝ったら俺が飽きるまでお前も俺の彼女になれよ。容姿が大きくいじれないこのゲームでそれだけの美貌だ、飽きることはないだろうけどな」
「私に勝てたならよろこんで彼女になってあげる。さぁ、戦いましょう?」
促すとバトルの申請が飛んでくる。もちろん受諾すると二人を囲むように透明の壁が出来、ほかのプレイヤーは侵入できないようになる。
さて、どう料理してあげようかしら。




