9
前回ログアウトした町『フリューセル』にソフィアはログインし、現在は町の探索中だ。
「カラフルな建物や川が流れてるなんて、まるでイタリアの街並みみたいできれいだ」
ソフィアの発言通り、この町はイタリアの街並みを参考にしており、ソフィアが来た方向とは逆の方にユグドラシルの拠点へとつながる道があるが、所属する陣営とは違う拠点に行くことは出来ず、陣営同士のバトルがあるため情報が限られている。
町の探索をしているとおしゃれな喫茶店を見つけ中に入る。するとダンディーな男性のNPCが出迎えてくれ席に案内された。
電子パネルのメニューを見て紅茶とパンケーキを注文すると、データでしかないからか注文はすぐに届いた。
とてもフラワリーで明るい紅茶と、3段重ねになったパンケーキに控えめな量のはちみつシロップがかけられ、その上にとても濃厚そうなバニラアイスを乗せたものが運ばれる。
最近のVRゲームでは特殊な脳波を送ることにより、味覚や風味などを再現しており、実際に食べた感じがあるのに栄養は入らないため、スタイルに気を遣う女の子にとってこんなにうれしいことはない。
食事が終わり、ゲーム内でも見れる掲示板で情報を集めていると、運営からイベント告知があったようで盛り上がっている。
《平素よりNational Battle Onlineを楽しんでいただきありがとうございます。まもなくリリース1ヶ月になるためイベントの開催を予定しております。今回のイベントを通して皆様の成長につながればと思い、経験値やアイテム、特殊な装備が手に入るものとなっています。具体的内容に関してはホームページにてご確認ください。プレイヤーの皆様の活躍を期待しております》
「ついに最初のイベントか」
私は今の装備で満足だけど、アイテムや特殊な装備は気になる。今日は町の探索を終えたらログアウトして、情報を見たらお風呂に入って寝よう。
注文を頼んだ段階で会計は済んでおり、席を立ちそのまま外に出る。
ある程度見て回り満足し、もうすぐ最初にいた場所に戻るところである建物が目に入る。
「げ、教会がある……」
嫌なものが見えてしまい顔をしかめてしまう。
遅ればせながら私の紹介をすると、私『ソフィア』改め実名『結月真冬』は先祖代々続く吸血鬼の末裔なのだ。長い歴史を継いできただけあり、よく苦手とされている十字架やニンニク、日光などは克服に成功しており問題はないのだが、教会に先祖が苦しめられた歴史と、とある影響があり私は苦手意識を持っている。
この前の戦闘で人格が変わったのは吸血鬼の力で、自分で意識してなることもできるけど、感情が高ぶると完全に吸血鬼の状態になるんだよね。ファンタジー小説の様な火の玉や雷みたいな魔法を使うことは出来ないけど、羽を生やして空を飛んだり、相手を魅了して従わせたり、身体能力があがるから普段できない動きが出来たりする。
力を抑えるために戦闘技能に関しては小さい時から仕込まれていて、普段の状態でもかなり戦えるようにはなったし、吸血鬼状態になったら戦闘のプロも圧倒できるくらい強いと思う。
現実の世界では吸血鬼化すると髪の色が白くなって、青色の両目は赤くなるよ。
「イタリア風の街だから教会もあるよねそりゃ……」
近づかないために、残りあと少しの探索はやめてログアウトした。




