第九十七話 遺体
「っとぉ……ギリッギリ……あぶねぇ……!」
強襲する船から、治療船まで今回は無事に届いた。……ともかく、急いでティナに伝えなければ。そう思い、ティナを捜してみる。甲板全体を捜してみると、船の尖端にティナが立っており、シーラウディを見ていた。
「おい!」
「……ごめん。少しだけ、ボーッとしてた」
ティナはゆっくりと首を横に振り、そして俺に向き合ってくれる。
「それで、どうだった?」
「この船をあそこの……攻撃を行っている船につける。つけた後に支持をまた仰ごうと思う」
「そう……その間は何をするの?」
ティナは俺にそう言ってくる。俺はその言葉に少し考え、そして答えた。
「それまではまぁ……この船の手伝いするぜ。何かあんだろ?」
その言葉に、少しだけ驚いたようで、ティナが目を見開いていた。
「……いったいメイさんどうしちゃったの? なんか少し変……」
「そうか? ……そうかも……な」
俺自身、分からない事をティナが質問してきた。……分からないんだ。あの化け物を見て恐怖を覚えたか、それとも、失うのを臆病になったか……。
「ともかく、なんでも言ってくれ。この船は男手が足りなそうだしな」
「……分かった。早速で悪いんだけれど……あの……遺体を運ぶのを手伝ってあげてくれないかな……?」
申し訳なさそうに、ティナが言ってくる。遺体を運ぶって……なんだ? 死人が出たのか?
「遺体って……死んだのか?」
「自害だと思う……首に刺さった刃物に……誰も気づけなかった……」
悔しそうに、ティナが拳を固め、震えている。……辛く、悔しいのだろう。救えたハズの人を救えることが出来なかったのが。
「……分かった。場所は?」
「ここから左、甲板の端にいるよ……」
「了解だ……ティナはどうするんだ?」
俺のやることは分かったのだが、ティナのやるべき事も一応聞いておこうと思った。この報告にどう対応するのか。
「皆集めて、船をつけることを伝えなきゃ」
「……そうか」
俺はそう言って、ティナから離れていった。……あっちもしっかりやろうとしているんだ。こっちもちゃんとやらないとな。
甲板を少し歩くと、倒れている男と、その手を掴む女がいた。倒れている方は生気がない顔色をしており、女は涙をこぼしながら泣きじゃくっている。
「なんで……! 一緒に帰るって約束したのに……!!」
涙をぼたぼたと甲板の上に垂らし、そんなことを擦れた様な声で言葉にしていた。返事はもちろん無いが。
「なんで……!」
「……あんたの恋人か? 首を刺して……ねぇ……」
俺が女に問い掛け、その後に呟いていた。その言葉が聞こえたようで、キッとこちらを睨みつけて、敵愾心を向けてくる。……敵は俺じゃねぇだろうに……。
「あんた……誰よ……!!」
「……この遺体を運べって言われてな。んで、何処に運ぶんだ?」
場所が分からなかったので、普通に尋ねてみる。それなのに、ギリッという音がしたと思ったら……パチンッ! という音が鳴り響いていた。
「イッ……つ……」
……なんで平手打ちなんか受けたんだ……?
「今すぐあたしの前から消えろッ!! そして、死んじまえッ!!」
投げ掛けられた罵倒に俺は唖然としていた。




