第九十六話 厳しいかもな
「……無事だったか! メイ!」
カートナードのいる船へと戻ると、疲れた様子のリドルグに、出迎えてくるカートナードの姿が見えた。……あら? 辺りを見ると、さっきより人が少ないような気がする。
「……人減ってね?」
「……自害だよ自害。……無駄なことしやがって」
「……は?」
何故……そう聞こうとしたら、カートナードが先に理由を言ってくれる。
「大方、あの魔物に殺られるくらいならーとかだろ。くだらねぇ」
「……潔く死ぬってか……笑えねぇ」
……俺も、もしかしたらそうなっていたのかもしれない。その事を考えるとゾッと寒気がする。
「……メイ? どうした?」
「……なんでもない。……伝達はしてきた。後、治療船から報告がある」
カートナードは俺の言葉を聞くと、すぐに聞く体制に入る。そして、続けてくれと言われたので、容赦なく続けさせて貰う。
「船の揺れで軽傷多数に、戦意喪失も多数……らしい」
「……戦意喪失って……死んだのか?」
「……いや、魔物の攻撃を見て、怯えているらしい」
「士気の低下……か。……分かった」
覚えていたハズの言葉が上手く伝えられなかった。これは、本当に予想外だった。本当なら言葉のあやを防ぐ為に具体的に話せれば良いのだが……。考えても仕方が無いので、次からはと気持ちを切り替える。
「あと、提案が来た。言っていいか?」
「頼む」
その言葉に俺は頷き、ティナの言葉とそっくりそのまま伝える。すると、カートナードは少し考えるように腕を組んだ後、結論を出したかのように姿勢を崩した。
「その提案を呑み込む。治療船は今後、第二強襲船として班を分ける。ただ、人員を移動するには船同士を付けなければならない上に、危険も多い」
カートナードの言葉にそうかと頷く。この船とくっつけるのはかなり危険が大きい。何故なら、攻撃の流れ弾が当たってしまい、船が損傷してしまう恐れがあるからだ。
「まず、強襲第一船……強襲する船と強襲第二船……治療船をくっつけ、人員の移動を。軽傷を負っているものと、士気が低下している者、そして無事な者を三隻均等になるくらいに分けたい」
「ってことは────!?」
突如、大きな地震が起きた様な感覚に襲われ、体勢を崩すことを余儀なくさせられる。……カートナードは少しフラついただけでなんとも無いようだ。
「な、なんだ……?」
「リドルグ!! 無事か!?」
緊迫したような声で、カートナードがリドルグに問いかける。しばらく沈黙が支配したが、しばらくして静寂を破る者が現れる。
「……正直、危なかった。……そろそろ厳しいかもな」
「ッ……時間がねぇか……」
カートナードが苦虫を噛み潰したような表情をして、少し考えた後、こう発言した。
「……治療船は強襲する船につけろ! 強襲する船は、遠距離攻撃をこの船と直線上になるように放てッ!! なるべく船に攻撃は当てるな!! 以上だ!!」
「……分かった! 行ってくる!」
焦ったような言動でカートナードが言うので、俺も、焦り始めてしまう。こんな所で死ぬかっつうの! 助走をつけながら、船から船へと跳躍。
「……ッとぉ……!!」
ダンッ! 木が軋む音を踏み鳴らして、俺は着地した。急いで伝えなければならない。そう思い、レイジを捜す。……すると、人々が規律正しく整列しているのが分かった。その一番前に、レイジがいる事が容易に分かる。
「……である! それまで待機してください!!」
丁度、命令をし終わった所に来てたんだな。俺は、素早くレイジの下へ駆けつける。俺に気付いたレイジは、こっちに見える様にして手を挙げている。
「カートさんはなんて言ってました?」
「あの船と直線上になるように遠距離攻撃を行え、ただし、あまり船には当てるな……らしい。後は、この船に治療船をつけるから、用意をしておく様にだと」
「治療船……分かりました。あっちから橋を掛けてください。舵はこっちで操作します」
「わーった。んじゃあ、行くな」
俺はそう言って、この船を後にしようとした。
「待ってですよ!」
「……ん?」
待てと言われて、俺は振り返る。……見ると、シュルネイルが慌ててこちらに来ていた。
「……こんな時でごめんなさいですよ……でも、カートに伝えて欲しくて……」
「……何を?」
「……無理しないでって……お願いですよ」
「んま、伝えるだけ伝えとく。んじゃ、行くぞ」
……こんな時って……こんな時だからこそ伝えるべき事だろう。リドルグが限界まで来たら、多分、カートナードが無理をする。そうならないように、彼女は伝えて欲しかったんだろう。……多分。
「ありがとうですよ……」
シュルネイルの感謝の言葉を聞き、俺はこの船から飛び立った。




