第九十話 船に揺られて
めっちゃ久しぶりで結構忘れてる感パないw
「……」
「なーに海見てんだ? なんかいたのか?」
いや……そんなのじゃねぇ。荒れ狂う海上を目の前にして、俺が目にしているものはそんなものではない。これは自分自身との闘いである……。決して他人には分かることのない苦痛、そして、気分。
「……ぎぼぢ……わるッ……」
俺のその言葉にカートナードがギョッとする。そりゃそうだ。海見てるから何かあるのかと聞いてきたのに、返答が「気持ちわる」なのだから。いや、しかし、仕方無いだろう! 自分でも謎の船酔いが発生してるのだから! 船がまだ動いていない状態なら、何事もなく過ごせたのに、今は完全にグロッキー状態だ。俺は手で口を抑えながら、更に海の向こうへと見るのだが、残念ながら曇り空……いや、天候が荒れ模様で見てても気分解消には程遠い。それどころか船が揺れている状態だから酔いが回る回る。
「だ、大丈夫か?」
「笑いながらいってんじゃねぇよ! うぇ……!」
カートナードがニヤニヤしながら心配してきたので、俺は思わずツッコミを入れ、更に容態が悪化。既に吐きかけている。まじで駄目だこれ……今の俺はアニメみたいに目がバツになっているだろう。つーか、吐きたい。吐いてラクになりたい。いやでも、吐いたら吐いたでなんか悔しい。悔しすぎる。どこからか湧いてくる負けん気が俺をラクにはしてくれない。
「グゾッ……きぼぢわりぃ……ぁー……」
真面目に吐きそう……そんな俺を不憫に思ったのか、カートナードが……
背中を擦ってきた。しかも笑いながら。
「やべろっ!! うっ……ぷ……」
「はっはっは」
「んにゃろぉ……」
カートナードを見ると真面目にムカつく、爽やかな笑顔で笑ってやがる。それにイラッとくるも、残念ながら体が言うことをきかない。視線を海の方角へと戻し、俺は吐き気に打ち勝っていた。つうかこれから戦闘だというのに、これは酷い。
「しかし、その調子じゃあ、何もできそうにねぇな」
「うっせー……! やって……うぷっ……やるってーの……!」
「無理するとゲロ吐くぞ?」
そう言ってカートナードが笑ってきやがる。マジで嫌なヤツだなコイツ……!
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「うー……」
布団の上で、仰向けになって、船の揺れを感じつつ、天井を見ている。流石に限界と感じてしまい、笑うカートナードにイラッとしつつも、船内の一室に寝かせてもらう事が出来た。ぶっちゃけ、ギルドの奴らには笑われたが。だけどもなぁ……こればっかは仕方ないと思うんだ。何せ、初の船旅なのだから。普通は大丈夫だろと思って乗ったらこのザマだよ。
「カッコ……わりぃ……うぇ……」
未だに吐き気は襲って来る。落ち着くにはもはや、陸に降りるしか無いのではないかと思うくらい酷い。頭もガンガンと痛んできたし、クラクラとする。こんな中、戦う事すら困難な気がする。……というか無理ゲーだろ! こんな状態じゃ!
「……引き受けるんじゃなかったな……うっぷ……」
『さよなら……』
後悔した瞬間、ティナの言葉が脳裏を過ぎる。……なんでだろうか、物凄い罪悪感が自身の内側を侵食する。俺のやっていることは間違っていないハズだ。俺の考えていたものはティナに伝わったハズだ。そう思い、頭から浮かんでくるものに、俺は目を逸らしていた。
「おーい、無事かー?」
ガチャっと船室に入って来る者が一名。……ニヤニヤとほくそ笑みながら俺を見る、カートナードがいやがった。扉を乱雑に閉めて、俺の傍へと来る。やめろその顔! ムカつく!
「……なんだよ……」
「いや? なんでもねーよ? ただ面白そうだから来ただけ」
「そのムカつく面を出すんじゃねぇ! うっぷ……」
面白そうだからとか言って来るんじゃねぇよ! 尋常じゃねぇんだぞ! 船酔いってヤツは! 本当に胃袋の調子というか、喉の調子というか……ともかくだ! 辛いんだからな!
「ま、半分それは冗談だとしてなー……そろそろだ。キツいだろうが、我慢して来てくれ」
「……わーったよ……」
きっと化け物との戦いになるのだろう。その前段階の説明や作戦を伝えるのだろうか。……ん? そもそもやる前に伝えられるんじゃないのか? ……まぁ、そこらへんはいいか。
「うぇ……」
未だに気持ち悪い気分が抜けないまま、俺は、カートナードの後ろについて行った。少しだけ、不安を抱えながら……。




