第八十九話 おもわぬ再会
「……」
なんだろうか……この、胸につっかえる何かは……。
俺はそんな違和感を感じながらも、港の方へと来ていた。そこには、約三隻の船が波に抵抗しつつ、乗員を待っていた。この船のどれかに乗り、俺は魔物討伐に行かなければならない。
「誰かの代わりにってキャラじゃねぇんだけどな……」
そう呟くと、何故かふと、ティナの事に頭がいった。別れ際に言った、あの言葉……ティナはどのように捉えたのだろうか。ティナの事だから問題はないとは思うのだが、理由のない不安感に襲われている気がする。……なんでだ?
「……考えてたって埒あかねぇ……とりま、行くか……」
どの船に乗ればいいか教えてくれよ……いい加減だなトカゲ人も。
そんな風に考えながら、荒い波が侵食する桟橋を歩き始める。幸い、橋を呑み込むほど高い波はまだ来てなかったのでやや急ぎめに最寄りの船へと駆け寄る。ロープが垂れており、そこから船の甲板へと向かうようだ。俺はロープに掴まり、その後跳躍して船へと降り立った。
「……お? メイじゃねぇか!」
俺はすぐにロープに掴まり、降りようと試みた。
「奇遇だな! また会えるなんてな!」
「…………なんでてめぇがいるんだ?」
「そんな嫌そうな顔すんなよ! カート様傷ついちまうからよ!」
船の甲板にいたのは、レーヴァン城下町にいた革命軍のリーダー……カートナード・レーヴァンだった。特徴的な青髪を揺らし、甲板から下を除きこむような形で俺を見ていた。俺はため息をついた後、船の甲板にまた跳躍し、着地した。カートナードは馴れ馴れしく首に腕を巻きつけ、笑いかけてくる。
「しっかし、こんな早く会えるとは思って無かったぜ!」
「同感だ。こんなテンションたけぇヤツとこんな早くあっちまうとは……」
眉間に手を置き、ううんと唸る。まじで予想外だった。こんなヤツが討伐ギルドの依頼で釣られるとは……。
「あら? セレスティナはどうした? 一緒じゃないのか?」
「アイツはコメットの世話。……ここにはこねぇ」
「ほー……代わりにメイが……ね。ま、またよろしくな」
「……おう」
俺は軽く挨拶を行い、カートナードから少し離れる。嫌だからというワケではなく、単に人数の確認と今後の予定が分からないからだ。
「……殆どが討伐ギルドから来た奴等だぜ。俺と同等の奴等ばっかよ」
「化け物ばっかか。なら魔物討伐も楽勝か?」
「……いや」
俺の溢した言葉に、カートナードは否定してくる。
「相手が相手だ。……その上海の上と来た。こっちの方が武が悪ぃよ」
「珍しく弱気だな。カートなら楽勝とかいうと思ったが」
「そこんとこも分かっちゃうのがカート様よ。……被害が出るのは避けられない」
真剣なトーン。真面目に言葉を発している合図だ。
「……そうか……やっぱ」
被害が出るのか……。最大限、被害を出さないようにしていたとしても、此方は船。つまり、投げ出されたり、船本体がやられてしまっては海上に落ちてしまい、最悪、溺死や魔物にやられてしまうだろう。それに、水中戦を仕掛けるのは得策ではないだろうし、出来るヤツは絶対に少ない。俺は最悪、巨大な魔物を足場として行動するしかないな。
「ま! なんとかなるさ!」
「……そういや、他のヤツはどうしたんだ? いつも一緒なのに」
「ああ、シュルネイルもリドルグもレイジも、皆違う船なんだと。ったくよーやんなっちまうよなー……俺だけなんか仲間はずれみたいじゃねぇか」
グチグチと、文句を言うカートナードに俺は苦笑しつつ、内心不安でいっぱいだった。
……本当に倒せるのだろうか。
言い知れぬ不安感を胸に、黒い雲が浮かぶ、海を見ていたのだった。




