第八十四話 嘘じゃないんだよね
薄暗い昼時……空模様は怪しくなっていた。先程までは晴れていたのだが、海から来る暗雲が、こちらに流れて来たのだろうか。灯台のある港へ進む度に雨でも降りそうなくらいの雲になっていっている。
「もうすぐ……かな?」
「だな」
俺はティナとコメットと共に、灯台を目印にして、歩いている。今の時間帯でも灯台は光を灯しておりここからでもよく見える。といっても、距離が近いからだろうが。ただ、その灯台がまるで塔のように高く、形も円柱ではなく、四角柱のような形の灯台のようだ。それだけハッキリ分かる位置に来たという事か。
「……あ、そういえば最近の私の料理、本当に美味しい?」
「ん? あ、おう。どうしてだ?」
ティナが世話話をしてきたので、それの対応をする。歩くだけではきっと退屈なのだろう。俺も考えることは今は無かったのでそれに乗る。
「……いつも美味しいって言ってくれるから……その……本当かなって」
もじもじとティナが言いづらそうに言ってくるので、俺が手を小さく広げて言う。
「本当だが……」
「そっか……良かった……」
ホッと息を吐いて、ティナは安堵の表情を浮かべた。……そんなに自身の料理の腕を心配していたのだろうか? 確かに高級料理並に美味しいとは言えないが、普通に料理としての腕は確かだと、俺は思っている。自信を持っていいはずだが……。
「そんなに自信ないのか? 料理に」
「ううん……違うの。……うん……違うの……」
「すげぇ気になるような言い方してんな……」
ティナが首を振りながら、俺の方を見ないようにとしてくる。誤魔化すのがヘタ過ぎて、俺はため息混じりに指摘する。それを聞いたティナが、ピタッた動きを止めて、シュンとしたような表情で言ってくる。
「……ごめんね……少し、メイさんを……」
「……俺が……?」
「ほ、本当かなぁって! ホント、それだけなの!」
「……はぁ……?」
言ってる意味は、まぁ分かるのだが、それよりもティナの反応に目がいってしまう。やはり、何かあるのだろうか。遠慮せずに言ってほしいのだが、それで、また倒れるような事があったら、再度後悔をしてしまうだろうから。
「……本当か? なんでも言っていいんだぞ?」
「ホントなの!」
「また倒れられたら困るんだがなぁ……?」
「そんなのじゃないから! 大丈夫だよ! ……うん、大丈夫なの!」
手をあわただしく振って、なんでもないアピールを行っている。……強引に聞くのも良くないだろうか。いや、ティナを信じてみるか。
「……わーった。お前を信じてみる」
「……うん」
俺がそう言うと、ティナはいつもと変わらずに頷いた。杞憂だったみたいだな。とそう思い、俺は港町の方へと向いた。……もうそろそろで着きそうな距離だな。着いたら武器、新調できるだろうか。そんな考えをしながら、ティナの事を考えないようにしていた。いや、考えていなかった。
「……嘘じゃないんだよ……ね?」
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「着いたな」
「やっとだね」
「ギャウッ!」
たどり着いたのは、大きめの港町だった。石造りの家々に、並べられた屋台。通路の奥には階段などがあり、上に行くにつれて、灯台のある場所へと行ける仕組みになっているようだ。逆に大通りから下へ下りる階段へと行くと、港へといけるらしいので、準備を整えてから向かおうと、頭では思っていた。
「旅の人か……船に乗りに来たのか?」
「ん……?」
「はい。私達はそのつもりです」
多分、港町の兵士であろう、人が俺らに話し掛けてきた。その出された質問に、ティナが礼儀正しく答える。すると、それは残念だなと言った後に、
「今、海が荒れに荒れてるから、船が出るのはまだ未定なんだよ」
という言葉が返ってきた。それに驚きはしないが、それでも本当に残念な情報だとは思った。仕方無いとは思うのだが、それでも、少しは期待していたのに。
「どうしよう……メイさん」
「しゃあねぇだろ。ま、少しこの町、探索しようぜ」
俺がそう言って、一足先に俺は屋台の方へと歩き出す。剣のようなマークの店が気になったからである。そこへ近づいてみると、武器が、台の上に並べられていたので物色する。……そこで目についたのは、やはり短剣だった。ハイダガーというものらしく、値段も、ブロンズククリなんかよりも余裕で高い。それに、頑丈そうだ。
「メイさん! はぁ……はぁ……置いてくなんて、酷いよ……」
息を乱れさせて、ティナが追いついてくる。それにコメットも一緒のようだ。俺は武器を買い、ティナの方へと向く。
「ちょっと武器を新調してな。ティナも、買い換えたらどうだ?」
「私の……かぁ……うん……そうしようかな」
そう言って、ティナはブロンズソードからロングソードという、リーチが少し延びた刀身に変えていた。それにきっと威力も上がっているだろうか。また頼もしくなったなと心の中で思っていた。
「もう少し回って、港へ行くか」
「港に行っても船に乗れないんじゃ……」
「物は試しだ」
俺はそう言い切り、色んな店を覗く。それにティナは否定の意見を出さずに俺についてきてくれた。




