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第七十二話 少しでも手伝う為に

「セレスティナ……行くぞ」


 リューナちゃんから諭され、私はメイさんの隣から離れた。

 剣を携え、自分用の袋を持ち、リューナちゃんの方に向く。


「はい」


 私達はこの家から出ようとする。

 その矢先に、ふと気がついたようにして、リューナちゃんがテーブルに寄っていく。


「こんな所に……」


「それって、一昨日鳴ってた鈴?」


 その答えにリューナちゃんはコクッと頷いて振り返る。

 金色の鈴……それは、対になる鈴が近くにあれば、とても綺麗な音色を奏でる鈴。

 錆び付いてもいなくて、丁寧に扱われているような印象だった。


「さぁ、行こう」


「いいの? 首に提げなくて……」


「いいんだ。私には……提げる資格はない」


 悲しげな表情をして、リューナちゃんが言う。

 何があったんだろう……私はそんな事を思ったけれど、その考えを捨てる。

 ……聞いちゃいけないこともあるから。

 それが、私には分かってるから……。

 私は扉の前で一度、スヤスヤと眠っているメイさんの方を向いた。


「……いってきます」


 私の声は届いて無いだろうけれど、でも、これでスッキリした。

 ……子供達の面倒見てくれるよね。

 扉を開け、私達は外へと出る。



「……ここから北東の沼地……だっけ?」


「ああ、そこにいるハズだ」


 リューナちゃんの握っていた槍がふるふると震えてる。

 無意識に力が入ってるみたいだった。

 そうだよね……私でもこうなると思う。


「急ごう。また村が襲われないうちに」


「うん……!」


 私達は急ぎで北東へと走り出す。

 踏み出した足は少しだけ重く感じる。

 メイさんは大丈夫かと、考えてしまう。

 とっても大切な弟だから……でも、今は信じよう。

 私なんかより、頼りになる弟なんだから。



 何度も戦闘が起こって、その度にリューナちゃんの槍が振るわれる。

 一瞬で終わってしまい、私が剣を抜いた時にはもう終わってしまっていた。

 ……私なんかが、手伝えるのだろうか。

 ううん、手伝うんだ。

 どんな小さな事でも。

 力になるんだ。


「リューナちゃんってやっぱり強いね!」


 私は思った事を口にする。

 その言葉に小さく笑ったリューナちゃんは首を横に振る。


「そうでもない。まだまださ」


「そんなことないよ!」


 私なんか、足下に及ばないくらい強い。

 どんなに努力しても、こんな高見に届くなんて思えない。


「……そうか」


 槍を握りながら、その先端を見ている。

 その顔は何かを思い出しているかのようだった。


「あの時……こんな力があれば……」


「……?」


「すまん、なんでもない」


 首を横に振って、リューナちゃんは前へと歩き出す。

 私も少し首を傾げて、その後をついていった。



 少しだけ長い時間を私達は歩いた。

 朝早くから移動を開始して、今、日は高くなってきている。

 もう少しでお昼になるだろう。

 そんな時間帯で、私達は目的の場所へとついた。


「……ついた」


 そう呟いたリューナちゃんは、ゴソゴソと金色の鈴を取り出して、振る。

 すると、りんりん……と綺麗で透き通るような音色が辺りに響き渡った。


「この近くに……」


「ああ……いる」


 どんな……敵なのか。

 そう思って周囲の警戒をしていると、小さな揺れを感じる。


「……来る」


 揺れは少しずつ大きくなっていき、少しだけフラついてくる。

 更に、大きくなって私は倒れこんでしまった。

 リューナちゃんはこの揺れの中でも普通に立っている。

 やっぱり凄い……。


「グォオオオオッ!!」


 耳が破れそうな大きな雄叫びに私は耳を塞いで、目も閉じる。

 何が来たの……?

 少しずつ雄叫びは小さくなり、身を固めるようにしていた体勢を少しずつ解いていく。

 ……すると、そこにいたのは、黒の鱗に身を包ませ、ギラッと威圧感を感じるような横目で私達を見ている、巨大な何か……。

 一見、ドラゴンにも見えるそれは、ドラゴンと似ているものの、顔や体の作りが少し違う気がする。


【ボグアリゲイタ】


 相手の姿を捉えると、そう目の前に浮かぶ。


「コイツだ……! コイツが……! セレスティナ! 行くぞ!!」


「は、はい!」


 私はリューナちゃんの後に続いて、攻撃を仕掛ける事にする。

 これが、リューナちゃんの行う敵討ち……。

 絶対に成功させる!!



 ・



 ・



 ・


 ・


 ・

 ・

 ・


「……んぅ……」


 目にかかる、陽射しが俺の目覚まし代わりになった。

 俺は目を開き、辺りを確認する。


「……お? おお? まさかこれは……」


 咳が出ない……。

 熱っぽくも、体が重くもない。

 つまり……これは……もしかして!


「治ったか!? やっと!」


 俺は握り拳を作り、両手を空に掲げる。


「そうだ! ティナは……」


 ……そう言えば今日は出掛けるとか言ってたか。

 HPの値を無意識に見てみると、何ともないようだ。

 少なくとも危ないことはしていない。

 ……と願いたいな。

 そう考えていると、腹の虫が盛大に鳴る。

 あー……腹減ったな。

 そんな事を思っていると、ギィィッと家の扉が開く。


「ギャアッ」


「メイお兄さん、ご飯ですよ」


 そう言って入ってきたのが、拉致されていたハズのコメットとヒュウナだった。

 ヒュウナは器を持ってきて俺のもとへと来る。


「食べられますか?」


「ああ」


 そう言って器を受け取り、いただきますと飯を食べ始める。


「……そういや、仮面女……リューナはどうした?」


「リューナお姉さんは、セレスティナお姉さんと一緒に食材調達って言ってました」


「ふーん……」


「……けど」


 そこまで何とも思っていなかったが、ヒュウナの接続詞に耳を傾ける。


「本当に食材調達なのでしょうか……」


「どういうことだ?」


「……リューナお姉さん、怖い顔してたから」


 俯きながら、ヒュウナは言う。

 その言葉に俺はうーんと唸ってみる。

 ……食材調達は確かに怪しいとは俺も思う。

 先日の会話から察するに、俺にはさせたくないような事だったみたいだが。


「ごちそうさん」


「は、早い!?」


「そうでもねぇよ」


 いつの間にか飯を平らげていたので、器を返す。

 そして、少しだけ考えることにする。


「……様子見なら……いいか?」


 そのくらい、しても良いだろう。

 気になるだけだ。

 本当に食材調達だったら戻ればいい。


「……ヒュウナ、俺、リューナとティナの所にちっと行ってくるわ」


「へ?」


 俺の言葉にヒュウナがキョトンとする。


「何、すぐ帰ってくるさ。だから、その間、皆の事を頼む。何かあったらいつもの場所に隠れてろ」


「め、メイお兄さん!」


 返事を待たず、俺は隣にいたコメットと共にティナの向かったであろう方角へ進むことにする。


「頼む、コメット」


「ギャウッ!」


 また俺を導いてくれよ……!

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