表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/131

第六十六話 負けてねぇ

「ゲホッ……袋……袋は……」


 右肩を抑えつつ、俺は道具袋を探す。

 ここら辺に出てくるような敵じゃねぇよアイツ……。

 自分のベッドの近くを探すも、ない。

 キョロキョロと周りを見るとテーブルの上に袋が三つあった。

 間違いなくこれだな。

 素材、道具、貴重品袋。

 その中から道具袋を見つけ、無造作に袋の中身を漁る。

 出血止め用の薬草を強引に傷口に塗りつけ、HP回復用の薬草を噛み、飲む。

 傷口に沁みるし、めっちゃ苦い。

 HPは少しずつ回復し、どうにか100を越えた。

 よし、これで一発くらい……運が良ければ助かるな。

 俺は薬草を服用しつつ、ドラゴンのもとに向かう。


 体のダルさを我慢しながら、俺は跳躍で屋根の上へと飛び乗った。

 ……コメットが苦戦しているのが分かるな。

 いつもなら相手の攻撃を避けて、飛び掛かるハズなのに、ドラゴンの攻撃は止むことがなく、攻撃出来ずにいる。


「……苦戦……じゃなく、誘導してるのか?」


 思えばこの建物からも、餓鬼どものいる家からも離れていた。

 頭が回るなコメットは。


「ゲホッ……」


 だりぃ……重い……それでも。


「なんで動くんだろうか」


 自分自身に飽きれ、自分自身を笑う。

 こんな痛い思いしながらなんで……。

 体が動くんだ?


「ったく……ケホッ……よぉ」


 俺は足を踏み出し、コメットのもとへ急ぐ。

 全力で……とはいかないものの、腕を、足を振り俺は走る。

 ドラゴンを……倒す。


 コメットのもとへと行くと、忙しそうに回避行動を行っていた。

 ドラゴンの攻撃は止まず、足を踏み鳴らし、尻尾を振るい、ツメで引っ掻いてきている。

 それをコメットは危なげに、しかしどれも紙一重で避けていっている。


「よし……コメット! 行くぞッ!」


「ギャアッ!」


 俺の考えが分かっているかのように、コメットが高らかに鳴いた。

 ナイフを抜き、即座にドラゴンに乗り移る。

 ターゲットは未だにコメットに向いているので、今のうちにありったけのダウンガードを掛ける。

 どのくらい下げられるのかは分からないが、俺の攻撃が入るくらいには下がったんだ。

 それ以上下がる可能性もあるかもしれない。


「ゲホッ……はぁッ!」


 ナイフでドラゴンの背を横に切り裂く。

 更に突き、斬り、また突きを繰り返す。

 そんなことをやっていたからだろう。

 ドラゴンが俺の事に気づいたようで、暴れ始める。

 跳躍でドラゴンから待避し、息を整える。

 本調子じゃないぶん、やはり体が重い。


「まだ浅い……か?」


 まだ十数発しか当てて無いからな。

 仕方ないだろ。

 ナイフを握り締め、俺はドラゴンが暴れなくなるのを待つ。

 しばらくすると、ドラゴンは疲れたように息を吐いたようで、それを見た俺とコメットはドラゴンに向かって攻撃を仕掛ける。


「ギャォオオオオオオオッ!!」


 攻撃を仕掛けようと思った直後、鼓膜が破れそうな程の雄叫びがドラゴンから発せられ、耳を咄嗟に塞いでしまう。

 コメットは驚いたように、後ろへと仰け反ってしまう。

 直後、俺の体に衝撃が走った。

 それは重く、鈍く、それでいて、痛みを伴うものだった。

 吹き飛ばされ、更に衝撃が俺を襲う。


「ガホォッ!」


 口から血反吐を吐き、体から力が抜ける。

 ククリナイフは手から抜け落ち、体のありとあらゆる所の感覚がない。

 何が起こった……俺は……どうした……。


「ゲホッ……ゲボッ……ガハッ……」


 口から出てくる熱いものを吐き出し、荒い息を整えようと心掛ける。

 しかし、それでも息は乱れたまま、元の呼吸になんかならない。


「ゲホッ……ぁ……ぁ……」


 視界にHP15/185と表示されている……。


「へっ……へへ……カッコ……悪ぃ……ゲボッゲホッ!」


 咳をするたびに血反吐が喉の奥から競り上がってくる。

 なんで笑ってられるんだ……?

 俺は……なんで逃げないんだ……?

 今こそ逃げる時だろうよ……。

 こんな敵にかないっこない。

 だから、逃げろよ……!


「……まだ……だ……」


 思っていることと違う言葉を口にして、何故と思う。

 だってそうだろう。

 逃げようとしたいのに、なんで諦めない。


「俺はまだ……負けてねぇ……ゲホッ……」


 負けなんだよ。

 こんなにやられて、こんなに傷だらけになって、血反吐をこんな吐いて、何が負けてないなんだ。

 勝てるワケねぇんだよ。


「俺が……負けねぇ……限り……ッ! 勝ちはまだ……あんだろ……!」


 ……こんな啖呵を俺は切る。

 全く、不思議だよ。

 諦めようと思ってんのに、なんで戦うか分かってねぇのに。

 こんなことを勢いに乗って口に出すとは。

 足は動く。

 ガクガクと、震えながらも、立つのが精一杯であろうと、足は動く。

 拳を握り、ナイフを手に取る。

 一度は力を無くしたハズの手には再度、力が込められている。


「すぅ……ふぅ……ッ!」


 目を閉じ、集中する。

 音を聞き、精神を集中し、覚悟を……決める。


「行くぜ……! ゲホッ……」


 ガタのきている足を動かし、俺は必死に走り出した。


「うぉおおおッ!!」


 雄叫びを腹から出し、跳躍し、ドラゴンの背を駆け回る。

 斬りつけ、凪ぎ払い、突き刺し、傷をつけ、俺は攻撃をする。

 それにまた反応したような、ドラゴンは直ぐ様に暴れだす。

 必死にへばりつき、俺は振り落とされないようにする。

 ここで手を離せば死ぬ!

 ここで落ちたら死ぬ!

 攻撃を受けたら死ぬ!

 滑るな、転ぶな、落ちるな、踏ん張れ!


「ッらぁッ!」


 ナイフで突き刺し、それを支えにへばりつく。

 先程よりも固定されたような感覚になり、俺はそのままへばりついていた。

 しばらくして、揺れが収まり、それと同時に攻撃を開始。

 いつまでも守ってばかりと思うなよ!


「死に……晒せぇええッ!!」


 おもいっきりの一撃をドラゴンに叩き込んだ。

 ……ブシュッと小さいながらも何かが漏れだしたような音がする。

 と同時に俺の体に液体が付着する。

 ……やっと……HPの半分切ったかッ!


「まだ……まだ!」


 拳に力が入り、俺は睨み付ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ