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第六十四話 無くならない

「……昨日よりは……ラク……か?」


 自身の体を起こし、ボーッとしながら独り言を言う。

 体調は昨日より少し治った……というべきか。


「……毎度毎度……すまんな……ティナ」


 隣に座って眠っている少女に謝罪する。

 ティナは俺が寝ても尚、面倒を見てくれたのだ。

 少し前に水袋を取り換えたようで、頭の水袋にはまだ冷たさが残ってる。

 ……ふと何故、面倒を見てくれるのかを考える。


「こんなヤツなのに……な」


 あークソッ……本当、らしくねぇ……。

 気分が悪くなると気持ちまで滅入って仕方ねぇ。

 だが、こんな俺なのに何故……。


「ゲホッ……ゲホッ……」


 無理しなくていい……やりたくない事なんかやらなくていいだろ。

 そりゃ……まぁ、嬉しいが。

 それでも、やりたくないなら無理してやらなくていい……。

 俺なんかにこんなしなくていいんだ。


「自分を優先して考えてくれ……ティナ」


 これ以上、俺の事なんか考えないでいい。

 俺なんかにお人好しにならないでくれ。

 マジで……変な気持ちが出来てきちまう……。


「あー本当……ゲホッ……らしくねぇよぉ……」


 泣き言のように、変な声が出た。

 頼む、距離を置いてくれ……。

 本心では近くにいたい。

 でも……だ。

 こんなの、駄目だ。

 駄目なんだ……。


「……らしくねぇよ……」


 俺は小さく呟き、ティナから背を向ける。

 毛布にうずくまり、外界との境界を作る。

 見たいけど、見たくない。

 居たいけど、居たくない。

 知りたくない、教えたくない、裏切りたくない、裏切られたくない、大切にしたい、大切にされたくない、話したい、話したくない……。

 色々な思いが交錯し、考えが纏まらない。

 ……俺なんかじゃ無理なのに、何故……。

 こうも想いが募っていくんだ?


「ゲホッ……何、考えてんだ……気持ち悪ぃ……」


 ふと、自分が何を考えているのか自覚する。

 こんな感情いらねぇって言ったのは誰だ?

 勘違いだっつってんだよ……。

 別にティナはティナだ。

 だから俺の事なんか、他人と同じように考えてるんだろ。

 こんな簡単な事も気づかないとか、馬鹿じゃないのか?


「……」


 それでもこの感情は……何故……無くならないんだ……。



 ・



 ・



 ・


 ・


 ・

 ・

 ・


「変態起きろー!!」


「……寒ッ……」


 いきなり毛布を引っ剥がされ、寒さが体を包んだ。

 あーゾクゾクする……。

 毛布はどこいった?


「……起きたー! 兄ちゃん、また話聞かせてー!」


 この茶髪の餓鬼は……ヨータか!?

 コイツ、毛布を取りやがって!


「後でな……ゲホッゲホッ……毛布返せ……」


 ダル……頭がガンガンする。

 そんな俺に構わず、ヨータは毛布を抱えて離れていく。


「捕まえてみろー!」


「あ、クソ餓鬼! 待て……ゲホッ……」


 本調子じゃねぇっつうのに!

 こんな事されて悪化された日にゃ目も当てられん!


「あー……フラフラすんだけど……」


 額に腕を付けながら、俺は走り出した。

 まだ熱っぽいから無理は出来ねぇけど……。

 つうか、ティナと仮面女はどうした……?

 そんな事を考えつつ、俺はヨータの後を追い掛けた。


 結果を言うと、捕まえるのに十秒も掛からなかった。

 足が遅い遅い。

 ステータスの差なんだろうな。


「うわー……オイラ、七人の中じゃ二番目に速いのに……」


「さっさと返せ……ゲホッ……こちとら早く治さなきゃなんねーの」


 ヨータから毛布を引ったくり、俺は部屋へと戻ろうとする。


「話はー?」


「後でな……ゲホッゲホッゲホッ……風邪……治ったら」


「本当? 嘘じゃない?」


「本当だっつうの……ゲホッ……だから、休ませてくれ」


 全く……約束も果たせないんだからな……風邪のせいで。

 うつしたら嫌だし。

 面倒だしな。

 ……そういや、外は雨止んでたのな。

 一日外でないだけで、外の情報が全く分からないな。

 窓から見るとかもしなかったし。

 ただ、若干湿ってるな……。



「ギャォオオオッ!」


 いきなり、雄叫びが聴こえた。

 ……なんだ?

 誰の声だ?

 いや、魔物か。

 普通に考えて。


「な、何……?」


 ヨータが少しだけビクついてる。

 まぁ、子供だからな。

 やはり魔物とかは恐怖を感じるのだろう。


「俺の後ろにいろ……ゲホッ」


 ったく……面倒だな。

 村の中か、近くにいるくらいの距離だよなぁ……。

 さっきの鳴き声からすると。

 俺は意識を集中する。

 パッシブの集中時、音を拾う範囲が拡大する的なヤツを使う。

 目を閉じ、辺りの音に気を配る。


 ……前方の二件目くらいの影にありそうだ。

 全壊してるなら姿も見えるのだろうが、残念ながら半壊だ。

 ギリギリ見えねぇ。


「つうか……ゲホッ……ティナと仮面女はどうしたんだ?」


「リューナとお姉ちゃんは食材取りに行くって」


「ゲホッ……んな時にか……」


 まずなんで魔物がいるんだ?

 村が建てられているなら、魔物が入らないような場所だったんじゃ無いのか?


「……ヨータ。お前はここで待ってろ。ゲホッ……」


「兄ちゃんは?」


「俺はちーっと……ゲホッ……リハビリしてくる」


 体は鈍ったからな……。

 いや、風邪だったから仕方ねぇけど。

 それとコメットは……。


「コメットー……いるか? ゲホッ」


 小さな声でしか呼べないから、来なくても仕方ない。

 だが、もし来てくれんなら……。


「ギャウッ!」


 駆け足で俺の所まで駆けて来て、俺の隣に座る。


「これで、勝ち確だろ……ゲホッ……」


 一番のアタッカーである、コメットがいるんだ。

 俺はデバフに回ればコメットがやってくれる。


「頼んだぞ。コメット」


「ギャアッ!」


「兄ちゃん! オイラも、戦う!」


 そろそろ行こうと思っているところにヨータがそんな事を言って来やがった。


「駄目だ。お前は安全な所にいろ」


「オイラだって皆を守りたいんだ!」


 ……皆を守る……か。

 俺はそんな事するために動いてるワケじゃねぇよ。

 ……多分。

 いやでも、なんで俺は動くんだろうな……。

 隠れてやり過ごすのが確実では無いからか。


「じゃあ、お前はあいつらに知らせて地下に隠れてろ。ゲホッ……倒したら行ってやるから」


「なんで! オイラだって役に立ちたい!」


「それだけでゲホッ……充分に助かるんだよ」


 逆にお前がいたら邪魔だし、あいつらがいる方向に向かわれると為す術がないからな。

 全力疾走したら、今は確実に転ぶだろうし。

 熱でフラフラしてんだよ……。


「頼んだぜ? ゲホッ……役に立ちたいんだろ?」


「う……うん、分かった! 知らせてくるね!」


 よし、物分かりはいいな。

 ヨータは餓鬼どものいる場所へと向かっていく。

 幸い、魔物がいる方向とは反対方向だから安全に行けるだろう。

 さて……。


「行くか……コメット」


「ギャウ!」


 コメットを連れて、俺は魔物のいる場所へと向かう。

 俺らなら楽勝なハズだ……。

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