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第六十三話 信じてもらえるように

「ゲホッゲホッ……」


 自分の咳で朝は目が覚めた……。

 まだダルさは残ってるし、熱っぽくもある。

 一朝一夕には治らないと言うワケか。


「ま……しゃあねぇな……ゲホッ……もう少し……寝たいな」


 せめて時間ギリギリまで休んでおきたい。

 そうしなければ、戦いに出ても足を引っ張るだけだ。


「……あと少し……ほんの少しだ……」


 寝返りをうつと、銀色の髪が目に入る。

 椅子に座って居眠りをしている、ティナの姿があった。

 俺を看病してくれてたのか?

 思えば頭には水袋がある。

 ……ぬるくなってるけどな。


「……すまんな」


 聞こえないだろうが、謝罪する。

 俺のせいで、ティナはゆっくりなんか休めて無いんじゃないかと思うと、とても申し訳ない気分になる。

 なんでこのタイミングで風邪なんざ引くんだ……。


「……」


 どうしたら……いいんだ……。

 俺は分からなくなっている。



 ・



 ・



 ・


 ・


 ・

 ・

 ・


「ゲホッゲホッ! ……はぁ……ぁ?」


 息が荒くなってるのが分かる……。

 さっき以上に悪くなってないか?


「ざけ……ろよ……ゲホッ……」


「メイさん、起きたの?」


「ゲホッ……ゲホッ……」


 咳き込みながら俺は縦に頷く。

 辛い……話すのも。

 こうしてるのも暇だが、仕方ない。

 治らねぇんだから。


「すま……ねぇ……治らなかった……ゲホッ」


「謝ってばっかり。大丈夫なのに。私は……」


「何がだよ……俺のゲホッ……せいで休めて無いだろうが……」


「大丈夫だよ。だからゆっくり休んで? リューナちゃんも居させてくれるみたいだから」


「……ゲホッ……?」


 仮面女が居させる……?

 つうことはまだ休んでいいのか?


「メイさんのお話、とても面白かったって子供たちが言ってたの、リューナちゃんが聞いてね」


「ゲホッ……なるほどな……」


 餓鬼に救われたって事かよ。

 まさかな……。


「さて、朝御飯作らなきゃ。メイさんのは後で持ってくるね」


「いらねぇってのに……」


「駄目だよ。治らないよー」


「……ゲホッ……」


 あー……またフラフラしてきた。

 無理しないで休んどこう……。

 熱いし寒い……。


「あ、ごめんね……ゆっくり休んで……」


「……悪ぃ」


「メイさんらしくないね、なんか」


 笑いながら言ってきやがる。

 仕方ないだろ……本当に悪いと思ってんだから……。


「……ゲホッ……少し……寝るな」


「うん、ゆっくり寝ててね?」


「ああ……」


 ゆっくりと目を瞑っていく。

 しかし、仮面女がねぇ……。

 なんか裏でもあるんじゃねぇかって思っちまうのは悪い癖か?


「ゲホッ……」


 あークソッ……。

 風邪になっとロクなことねぇ……。



 ・



 ・



 ・


 ・


 ・

 ・

 ・


「…………」


「……やっぱり可愛いんじゃない」


 私は皆の料理を作り終え、メイさんの様子を見に来た。

 静かな寝息を聞きながら、私はメイさんの隣の椅子に座る。


「……信じられるようにならなきゃ」


 初めての仲間、一番大切な友達。

 それでも信頼されていないのがとても辛かった。

 目を合わせても、逸らされて、私の目を見てくれない。


「どうすればいいのかな……私、どうすれば……」


 私なりにメイさんの力になろうとしてるんだけど……。

 これだけじゃまだ足りないのかな……。


「……ううん、今はメイさんを治すのに全力を注がなきゃ」


 馬鹿だ私は。

 今、苦しんでるメイさんを放ってなんで信じてもらえるっていうの?

 だから……。


「早く治さなきゃ……」


 その為には私が……私が頑張らなきゃ……。


「……作ってくるね……メイさん」


 信じてもらう為に、私は行動を起こす。

 信じてもらう為に……。



 ・



 ・



 ・


 ・


 ・

 ・

 ・


「メイさん……起きて?」


「……ゲホッ……うぅ……?」


 ティナに起こされて俺は目を覚ます。

 見ると、ティナが朝飯を持ってきてくれたようだ。

 食欲はまだ無いんだがな……。


「はい、あーん」


「……自分で食えるよ……ゲホッ……」


「病人は無理に動かないで下さーい?」


「無理じゃ……! ゲホッゲホッ……ゲホッ……」


 あークソ……。

 ツッコミもままならん。


「とに……かく、自分で食えっから……」


「……そう」


 ……なんか、ティナが凄い寂しそうな顔をしてる。

 そんなにしたかったのか?

 そうじゃないだろ……。

 じゃあ何だ?


「……ゲホッ……どうした?」


「う……ううん、もっと頑張らないとって」


「……はぁ?」


 頑張るって何をだ?

 戦闘か?

 最近じゃ動きはいいし、問題ないだろ?


「充分頑張ってんじゃねぇか?」


「……まだ……足りないの」


「……ゲホッ……そうか?」


 そんなに戦いでの向上心高まったのか。

 知らなかった……。

 だからといって無理をさせるワケにもいかねぇしな。


「無理しない……ゲホッゲホッ……程度に、頑張れ……」


 咳をしながら、ティナにいう。

 元気が無さそうにうんと言って頷いていた。

 ……なんか、いつものティナじゃないようで少し心配だな……。

 何か出来ることは無いだろうか……いや、今やろうとしても空回りする可能性高いな。

 まずは風邪を治さねぇと。


「風邪が治ったら……ゲホッ……相談に乗るぜ」


「……うん」


 それでも元気を取り戻さないので、更に心配になった。

 ……無理をしないで貰いたいが。

 俺が飯を食い終わると、食器を片付けると言って、出ていってしまった。

 俺は目を瞑り、睡眠を取る。

 早く治さなきゃな……ティナを手助けする為にも。

 今日は、昼も夜もまぁ、風邪が良くならなかった。

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