第五十七話 得てしまう
皆様、突然ですがとあるRPGには魔物が仲間を呼ぶというものがあります。
例えば仲間を叫んで呼んだりや、手招きして呼ぶ方法等があります。
その中から俺は前者の方法で呼んでみたいと思います。
「さーてさて……仲間は現れるのでしょうか!」
誰も見ていない事を確認し、一人芝居を初めていた。
まぁ、このくらいしたって良いじゃねぇか。
パソコンの前でぶつぶつ喋ってるくらいしか、この前までしてなかったし。
「ではカウントダウンしましょうッ!」
「はーい」
「「3!」」
声がハモり、辺りに響き渡る。
「「2!」」
二人だとこんな響くのか。
「「1!」」
よし、呼ぶべき仲間たちを呼ぼう。
「ティナァアッ! コメットォオッ!」
……辺りが静寂に包まれる。
サァーと雨の降り注ぐ音しか聴こえない。
「こないね」
「クソー……上手くいくと思ったんだよな……コメットくらいは……ティナはまぁしゃあねぇけど」
「普通、聞こえないと思うよ?」
「だよな……やっぱゲームの技はゲームの世界でしか……」
……俺は誰と話してるんだ?
気づかなかったぞ?
増えたのに。
「もう……気づかなかったの? 私に」
「……アカン……死にたい……」
異性の前でヤバいことをやらかした。
穴があったら入ってそのまま窒息した方がマシだ……。
「ちょっ……見てんじゃねーよ……こんな醜態見やがったのに見てるなよ……」
「メイさんこういう一面もあるんだね? 私、笑っちゃうよ」
クスクスと俺の目の前でティナが笑い始める。
……あ、服がもうビショビショだ。
そんなことより、
「……あークソーッ! なんなんだよ今日はよォオッ!!」
俺の怒声が天に向かって放たれ、辺りに轟いたのだった。
未だ、雨は降る。
俺は数分間立ち直れなかった。
まだ、同性に見られればはぐらかして別の問題にすぐ移行出来ただろう。
しかし、異性に見られてしまった俺は頭の中がカオスパーティになっていた。
あーなんだよ畜生いるならいるでしゃんと言えよティナはよーしかもなんなんだよじっくり見てるとかよしかも入りやがってよなんなんだっつうんだよ更には結果まで普通に言いやがってそんな中で気づかない俺はなんなんだよあーこっ恥ずかしい……!
「いつまで暗い顔してるの?」
ティナが体育座りを行っていた俺を除きこんでくる。
「お前のせいだろ……ったく……まだ立ち直れてねぇよ……」
ぶつぶつと俺は言っているだろう。
この醜態は忘れることが出来ないと思う。
「ギャアッ」
「おわっと!?」
体育座りしている俺の後ろからいきなり鳴き声が聞こえ、それにビクつき、立ち上がって何かに掴まる。
「コメットかよ……つかお前来れたのな」
「ギャアッ!」
んだコイツ……なんか無償にムカつく顔してるぞ?
笑ってるような表情を向けるんじゃねぇ!
そんなに俺がビクッたのが面白いか?
「……メイさんはお姉ちゃんが守るよ。だから安心してね」
「……ん?」
両手で握っていたのは、ティナの右手だった。
……驚いた拍子に、俺はティナを掴んでしまったらしい。
ティナは優しく微笑み、俺のプライドを容赦なくズタズタにする。
ああ……この世に神なんていない……。
俺は十数分、立ち直れずに正座したままだった。
何故正座か。
悟りを開いて全てを冷静に対処したかった。
雨の中なにやってるのとティナに言われたが。
「……とにかく、メイさんが無事で良かった……くしゅッ!」
くしゃみをしながら、ティナは言ってくる。
「……また俺は自己中に……」
まずはコイツらの心配をするべきだった。
コメットはまだ大丈夫だろうが、ティナがな。
このままじゃ風邪ひいちまう。
「移動するぞ。あの仮面女に会わなきゃな」
「……仮面女? メイさんが襲われたっていう……」
俺の言葉に首を傾げてきたが、その説明はせずに俺はティナとコメットについてくるように言う。
それに拒否はしないで一人と一匹は俺の後へとついてきたのだった。
「来たぞ仮面女」
と言いながら乱暴に家の扉を開けると、扉が取れる。
「あっ」
「あっ」
「えっ」
俺とティナと仮面女が一斉に声を漏らした。
「……ドアシールド」
「メイさん、謝って」
「さーせんっしたーッ!」
俺は謝ると取れた扉を立て掛けて、仮面女の近くへいく。
「……応急処置じゃ足りなかったか……」
「ごめんなさい、この扉は責任取ってメイさんが直しますから」
「俺かよ!? ……わーったよ! やるよ! やれば良いんだろ!」
ティナが見下すような目で見てきたので従わざるをえない。
俺の言葉を聞くと表情を変えて微笑んでくる。
「うん、いい子だね」
「餓鬼扱いすんじゃねぇよ……」
ったく……こんな会話を仮面女がボーッと見ている。
こんなの見ても退屈だろうに。
「本当に人間と仲が良いんだな……」
「貴女はさっきの……考え直してくれたんですね!」
ティナが嬉しそうな表情をして、喜んでいる。
オーバーなヤツ……。
「んで? 約束は?」
俺が話し掛けるとハッと我に帰ったようにして俺を見てくる。
「守る。必ずな。ではついてきてくれ」
そう言って玄関から出て、俺らは仮面女の後に続く。
二、三件越えた辺りの家の扉を開け、案内される。
「ここで良いだろうか。ベッドは三つあり、建物の損傷ももっとも少ない所だが……」
「ここ、誰も使ってないんだな?」
「私が使ってるだけだ」
「……」
その言葉を聞いて絶句する。
なんでこの家にしたんだよ……。
目で訴えかけると、察したようにして言ってくる。
「トイレはそっちだぞ」
「ちっげえよッ!!」
察してなかった。
「家に居させて貰えるんですか?」
「ああ、だがペットのベッドが……いや、私のベッドを……」
「いやいや! コメットは床で寝てもらうからな!」
「ギャアッ」
人間より動物優先ってどこの時代だ。
俺はコメットに指定した場所に寝てもらう。
よし、これなら良いだろう。
「……もうそろそろ昼時か……では、食事の用意をしてこよう。何……約束は守るさ」
「……それさえ守れば俺はなんも言わねぇよ」
警戒は勿論させて貰うがな。
いつでもナイフを抜けるように腰にさしたままにしている。
約束をいつ破ってくるか分かりゃあしねぇし。
「あっ、私も手伝っていいですか?」
ティナが挙手して、仮面女に向かって言う。
「い、良いのか? 人手が増えるのは助かる」
「はい! えーっと……お名前は……」
「そういえば、名乗って無かったな。私の名はリューナだ」
ティナに面向かって、リューナと名乗る仮面女は頭を下げる。
「先程は本当に申し訳なかった……」
「良いですよ! これから、仲良くなりましょうね!」
「あ、ありがとう……ええと……」
「……?」
仮面女は口をつぐみ、ティナはポンと手を叩く。
「あ、ごめんごめん。私はセレスティナっていうの。よろしくね」
「あ、ああ」
ティナが手を差し伸べると、おずおずと手を掴み、互いに握手を行う。
「そんなに堅くならないでよ。リューナちゃん」
「す、すまない……慣れてないもので」
ティナは笑い、仮面女が恐縮したようにしている。
その様子を見ながら俺は警戒をする。
……怖いのだ。
予測不可能な出来事が。
いつ何時、死んでもおかしくはないこの世界で、安全に休める場所の方が少ない。
ましてやここは宿のように金を払って安全を獲得する場所ですらない。
目の前のコイツは敵だ。
それは変わらない。
目を離している隙に、ティナに何かあったらその時は完全に交渉決裂、餓鬼どもを皆殺しだ。
「……どうしたの? メイさん、怖い顔してるよ?」
「ぁ……いや、なんでもねぇよ」
……死んだら、心配すらしてくれない。
話すら出来ない。
コロコロと変わる表情すら拝めない。
そう思うと何故か辛い……。
「そう……? ならいいけど」
「行くならさっさと行けよ」
「うん、そうだね。つれてって、リューナちゃん」
「ああ、こっちだセレスティナ」
仮面女に連れられて、ティナは扉を出ていった。
一人のが気がラクとはなぁ……。
これじゃ元いた世界とかわんねぇ……。
「はぁ」
……物凄い不安があったのでステータスの称号の欄に意識を集中させる。
あったら嫌だな……あったら最悪だ。
変態を獲得!
HP+5
MP+5
スケベを獲得!
HP+5
弱味を握る者を獲得!
攻撃力+5
魔法攻撃力+5
メイ モトシマ
レベル1
最大HP175
最大MP135
攻撃力45
防御力53
魔法攻撃力41
魔法防御力45
素早さ210
↓
メイ モトシマ
レベル1
最大HP185
最大MP140
攻撃力50
防御力53
魔法攻撃力46
魔法防御力45
素早さ210
「くそぉおおおおおおおおおおッ!!」
得てはならない称号を手に入れてしまい、俺は喉が枯れるほどに叫んだのだった。




