第五十五話 なんで襲われてんだ
「よっとぉ」
俺に向かって槍が振るわれる。
その槍をステップでかわし、斬り込む。
右腕に感触が加わる。
槍で防がれたな。
回り込み、また斬り込み。
それもまた防がれる。
「本格的に俺の攻撃だけ警戒してんなぁ」
「黙れ変態ッ! お前のせいで動きやすい服装を着れなくなったんだぞ!」
「知るかッ! お前なんか問題ない的な事言ってただろ!!」
服を切ったときにそんな事言っていただろう!
「それとも何か!? 本当は恥ずかしかったと? えぇ? あんな啖呵切っといて今更恥ずかしい?」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、その女に言葉を吐き捨てる。
その言葉にイラついて仮面女の攻撃は激しくなる。
「五月雨槍ッ!」
仮面女の槍が俺の速度以上に素早く、そして何度も貫いてこようとする。
その攻撃を後ろへと避け、当たらないようにする。
「突波ッ!」
さらに、俺に追撃を加えてくる。
残念、あと少し飛距離が足らな……、
「イッ!?」
腹部を何か貫くような感触を味わう。
ついでにきた激痛に顔をしかめ、腹を抑えつつ倒れないように踏ん張る。
いってぇ……!
なんなんだっつうの……!
「黙れ変態ッ!!」
「ソイツを……定着させんじゃあねぇッ!」
痛みに我慢してバックステップをし、距離を取る。
先程までいた場所に槍が振るわれ、避けていた事が正解だと知る。
ふざけんなよ……。
こんな面倒な事なんでしなきゃなんねぇかな……!
「お前、自分で言ってただろうがッ!」
「うるさいッ! うるさいッ!!」
顔を赤くしながら、仮面女が突っ込んでくる。
俺は道具袋から薬草を取りだし、それを口に含みHPを回復させる。
……やっぱ徐々に回復していくのか。
一気に回復して欲しかったが仕方ないか。
ヒールとかも接触し続けて回復するし。
ともかくクソ苦い。
「メイさんに手を出すな……!」
ティナの剣が仮面女の槍を弾いた。
……今度のティナは迷いも躊躇もない、剣を仮面女に向けている。
仮面女は驚いたように目を見開き、弾かれた槍を構え直す。
「何故、邪魔をする」
「私の友達を……仲間を傷つけた貴女は……許さない」
キッと、仮面女に睨みを効かせて剣を構えている。
静かな怒りに身を包んでいるようで、俺でさえ少しだけ恐怖を感じる。
「……加減してたけど、その必要はないな……では、人間と共に沈め……愚かな魔人ッ!」
巧みな槍さばきに、ティナは翻弄される。
突きは紙一重で避け、凪ぎは主に剣で受け、そして受けきれない攻撃がどうしても出てきてしまい、HPが少しずつ削れていく。
「っく……メイさん! 前には絶対に出ちゃ駄目だよッ!」
「過保護健在かよお前はよッ!」
ティナの言うことを無視し、俺は仮面女の後ろへと回り込む。
ナイフを抜き、首もとへとかっ切ろうとする。
その攻撃を避けられるも、
「メイさんッ!!」
「お前はお前で、戦えよッ!」
俺は人の事を心配し過ぎるティナに向かって怒鳴る。
その言葉に驚いたティナが、真剣身を取り戻し目の前の敵を見据える。
「二体一か……流石、変態はやることが違うな」
「変態じゃねぇっつうの。それに、二体一じゃねぇ」
仮面女の側面から、狼の遠吠えと共に尻尾が凪ぎ払われる。
それに気づいた仮面女が槍で防ぎ、攻撃を弾く。
「三体一だこのアマ……」
俺は右手の親指を下へ向け、仮面女に向けて不敵な笑いを見せる。
その様子に明らかに不機嫌になったソイツが口を開く。
「……成る程……では、本気で行くッ!」
「さっきまでは手加減だったとか言うつもりかコイツ……」
額に手を当てて、俺は嘆くように言う。
そもそも何故にコイツに襲われなきゃならんのだ。
……いやまじでそうだ。
こんなヤツになんで襲われてんだよ。
「そうだ……そうだ……別に戦うなんざしなくて良いじゃんかよ……」
「何をボソボソと言っているッ!」
仮面女はコメットとティナに攻撃を加えながら、俺へ攻撃をする。
「ティナッ! コメットッ! 逃げるぞッ! こんなヤツ相手にしたってロクな事がねぇッ!」
「わ、分かったッ!」
「ギャウッ!」
俺の言葉にティナもコメットも賛同する。
ここまでやられておいて……とも思うが、逆にもうやられる義理もねぇし、この村からトンズラすれば良いだけだ。
「出来るだけ村から離れろッ! コイツに追い付かれないようにッ!」
「逃げるのかッ! 変態ッ!」
「逃げるわッ! んな戦いしたってなんも得がねぇしよッ! さぁ、逃げゲーの始まりだッ!」
俺とティナとコメット、バラバラになりつつも逃げ出す事になる。
俺は村を突っ切って逃げる。
ティナはすぐに村とは反対側へ逃げる。
コメットはそのどちらとも言えない方角へと逃げる。
この中で追い掛けてくる可能性が高いのは……。
「待て人間ッ!」
「こっちくんな仮面女ァッ!」
もちろん俺だ。
人間を敵視しつつ、目的は俺の命と声高に叫んだコイツだ。
俺を狙う確率は高かった。
素早さ極振り舐めんな!
「追いついてこいよォッ!」
「待て変態ッ! スケベッ!」
「やめてッ! 称号増やさないでッ!!」
目を真っ白にして怒りながら俺は逃げる。
まじで増えてたら嫌だわ……。
……こちらへ逃げるのは少しだけ村の事を探りたいだけだしな。




