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第四十五話 聞かないことに

「……治るもんだな」


 接着された右手を見て、呟いた。


「本当……良かった……」


 ティナはそれに安堵の表情を浮かべている。

 今さっき、治療院にて腕の部位をつけ治したのだ。

 料金はかからなかったのは、レイトナイドがなんかしやがったからだろう。

 お陰で助かったけども。


 あれからコメットの後をついていくと、治療院の前の路地裏から出て、現在に至る。

 つまりそんなに時間が経ってない。


「しっかし妙な感じだったなー……腕が無かったっつうのは」


 あるのにないっつう、不思議な感覚。

 俺はそんな風に軽く考えていた。

 ……ティナと違って。


「おかしいよ……メイさん……! おかしいよッ!」


「あ?」


 何故かティナが声を大にしてほざいてくる。


「自分の……腕だったんだよ? なのに……なんでそんなに平気でいられるの……?」


「……」


 そういや、


「なんでだろうな」


「……なんでだろうって……」


「俺の事はいいだろ別に……」


「また……それ……?」


 俺の言葉にティナは表情を暗くする。

 何か不満なのか?


「それってどういう事だ?」


「……いい」


 俺にそっぽ向いて応える。

 何かいけなかったか?

 ティナに不満になるようなこと言ったか?


「……?」


 俺は頭をトントンと叩いて考えた。

 しかし、すぐに忘れてしまった。



 ・



 ・



 ・


 ・


 ・

 ・

 ・


「ふぅ……」


 コメットに飯をやった後、俺らは宿屋に来た。

 そしてティナと共に一息つく。


「……お父さん……お母さん……」


「……」


 どう話し掛ければ良いだろうか?

 人生経験を引っ張り出してきても答は出ないだろうか?

 気休めでなんか言うのもいいが……

 なんか言うか……?


「その……気にすんな……いや、すまねぇ」


 気にすんなってなんだよ?

 実の親に捨てられてんだぞ?

 馬鹿か……?


「いいの。私が勝手に悩んでるだけだから」


「なんか愚痴とか……吐き出して……迷惑じゃなかったらだが……」


「……それなら、一人にさせて……少し、ほんの少しでいいから……」


「……すまん」


 自分がなんも出来ないっつう歯痒さがあった。

 自分がいればなんでも解決できるような力があったら……

 そんな事を考えて、思い詰めるティナをチラッと見た後、扉を開け、外に出た。


「……」


「……ひっ……えっ……ぐ……」


 ティナが嗚咽を漏らし、泣くのが分かる。

 その様子を聞いているだけなのに、なんでこうも心が落ち着かないのか……

 胸がもやもやする。


「……コメットの様子を見に行くか」


 ティナのすすり泣くような泣き声を聞きながら……

 俺はコメットの元へと向かう。

 コメットは俺の姿を見ると、長い尻尾を伏せながらブンブンと振り回していた。


「凶器を振り回すなよ」


「ギャウッ」


 それでも尻尾は止まらず、思わず笑ってしまう。

 ったく……こいつは……

 俺はなんの気もなしに、コメットの頭を撫でる。

 それを気持ち良さそうにして、コメットは目を閉じていた。


「……ティナ」


 なんで呟いたか、ふと頭に浮かんだからだ。

 彼女の事を少しだけ気にかけているのが分かる。

 いや、本当はもっとかけているのかもしれない。

 よぉ分からん……

 だが、心配しているのは事実……だ。



「メイさん」


「うおっ!?」


 コメットの足裏をくすぐってちょっかいを出していた時、ティナが俺を呼んでいた。

 それにびっくりする。


「ビクッたな……」


「ごめんね。あと、ありがとう。もう心の整理はつけたから」


「……そか」


 強いな……

 こいつは……

 自分の問題だと割りきるのもつええと思うし、自分で整理をつけれるのもすげえと思う。


「寝る時間遅くなっちゃうから、早く」


「おう、じゃあな」


「ギャーウッ」


 コメットと別れ、ティナと共に先程の部屋へと戻る。

 俺はベッドに大の字にして倒れ、天井を見た。

 相変わらず、変な鉱石が光を放ってる。


「あ……あと、メイさん……ありがとう」


「ん?」


 ボーッとしていたら、ティナから話をかけてきた。


「何が?」


「私を助けてくれて……」


「あー……それな」


「うん……あのままだったら私、また角を……」


 ふと、ティナの方を見ると、自身の角を抑えながら言いにくそうにしてる。

 ……俺には価値が分からないな。


「私に出来ることならなんでもして良いんだよ? メイさん……」


「んな角……治しただけで……」


「でも、私達、魔人族には特別な物……誇りだから」


 その誇りってヤツが分からん。

 自分の命より大切なもんなのかねぇ……


「ま、ティナは仲間だから……その……だからだ」


「……仲間……かぁ」


 その言葉を聞いてティナはニコニコとしている。

 不思議なヤツ……


「そうだッ! メイさん!」


「なんだ?」


「学校行かない?」


「……学校……?」


 異世界の?

 勉強しろってか?

 嫌だわー……

 俺は勉強嫌いなんだよなぁ。

 それは異世界来てもかわんねぇよ……


「うん! 皆が集まって、お勉強して……私、多分だけどまだ学生だから、連れて行くことは出来そうだよ?」


「面倒くせぇ……」


「魔法も覚えられるかもだし……それに戦い方とか覚えられるかもだよ?」


「魔法……魔法か……」


 パラライズとダウンガードしかないからな……

 そろそろバリエーションが欲しいか。

 それにどんな相手でも効くジャマー系がほしい。

 相手の動きを拘束したり、鈍くしたり……

 パラライズはそうだが、もしも岩とかの魔物だったら効かない可能性が高いからな。


「……行ってみるか」


 勉強嫌いだけどな。

 主に書いて見直すって作業が嫌いだった。

 まず、書いたことねぇし。


「うん! 明日、行こう!」


 楽しげに喋るティナが言う。

 その姿を見ていると、少しだけ頬が熱くなる。

 ……なんでだ?


「おう、魔法覚えられんならいくっきゃねぇよな……」


 俺はこの後、ティナと談笑しながら、先に寝てしまったティナに苦笑しつつ、俺も眠りについたのだった。

 親の事については聞かないことにする。

 それは、俺が解決できるもんではないし。

 自分で話してくれるまで待つことにしよう。

 今度は壊れるまで溜め込むのはしないから。

 そう……思いたいから。

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