第四十二話 再会
サブタイミスりました……
申し訳ございません。
……ティナが扉を叩いた後、しばらくして、中から物音がした。
両親はいるらしい……
「……大丈夫……大丈夫……」
自分に言い聞かせるようにして、ティナは扉の前で待機している。
未だに怖いか……
いや、会うときこそ怖いんだもんな。
「どちら様でしょうか……?」
そう言って扉が開かれる。
現れたのは、エプロンみたいな……
ああ、メイド服か。
異世界物のテンプレの一つ。
この世界でも適用されていたか。
そんな服を着ている女だ。
結構若い感じ……だな。
「えっ……ええと……こちらは……エルローゼ家のお宅ででしょうか!?」
ティナがテンパっている。
動きが落ち着いていないし……
何より噛んでいる。
「……? はい……そうですが……どちら様でしょうか?」
「……私、セレスティナと申します。こちらはメイさん。こっちはコメットです」
決心したかのように、ティナは話し始める。
「本日お伺いいたしましたのは……ええと……」
「……?」
「旦那様と奥様に会いたいのだが」
ティナが言えずにいるので、俺が言う。
「そうですか。ですが、今、旦那様と奥様は外出なさっています。屋敷でお待ちしますか?」
「はい」
ティナが肯定し、俺らは……
コメット以外招かれた。
その事にコメットは怒る素振りすら見せず、ただただ敷地の前で待っている。
屋敷に入ると、入ってすぐの玄関の所で待てと言われたので、テーブルの近くの椅子に腰を掛ける。
ティナも同じように俺の隣に座る。
「……さっきはありがと」
「ん?」
「私の代わりに用件、言ってくれて……」
「別にいい。それに貴族の屋敷とか興味もあったし」
こうして見ると、成金みてぇな悪趣味な像もあったりして気持ち悪いんだな。
壁画とかそういう類いも。
まず、絵があるのか。
「にしてもいつまで待てばいいんだ?」
「あの女の子が昼過ぎには帰って来るって」
「遅すぎんだろ!!」
こんなんなら一旦出直した方が楽だったわ!
今更な気もするけども!
「仕方ないよ。ただでさえ、予約も無しに入れて貰えたんだし、それだけでも幸運なんだから……」
本当は訪ねるのに連絡が必要なのか?
なら仕方ないかとも思うが……
「そういや、ティナの部屋ってどこだ?」
「無くなってなければ二階……」
「二階か」
「……うん」
寂しそうな顔をしながら、答えてくれる。
こんな話はするんじゃなかったか。
「そういえば、メイさんってどんな家の出なの? さっきの反応からすると、貴族ではなさそうだし……」
「別に、どこでも良いだろ……」
そもそもなんで俺の事になったし。
何の家の出とか、気にしないで貰いたい。
日本の家でっていうと平民だろうし。
「むぅ……」
「膨れるなよ……破裂すんぞ」
「しないよ!」
何を当たり前の事を……
談笑をしたりして、時間を潰している間に、使用人がお茶みたいな物を運んできた。
色が青いんだけど、飲めるのか?
アルカリ性の液体じゃないよな?
ティナは口をつけていたので、俺も飲む……
にっげぇッ!
にっがッ!?
お茶を覚悟していたのに全く違う味だし!
それでもティナは美味しそうに飲んでいる。
味覚の違いなんだろうな……
この城下町じゃ、あまり肉類や魚類見ねぇし。
あるのはサラダに入ってるハム的なヤツくらい……
「どうしたの? 変な顔して」
「よく飲めるな……かなり苦いぞ?」
「メイさん、駄目なんだ? やっぱり子供だねー!」
ケラケラと笑うようにして、俺を馬鹿にしてくる。
イラッてくるぞ……!
俺は一気に飲み干し、味を感じる前にカップを戻す。
やっぱ苦ッ。
「どうだ……こんちくしょう……」
そう言うと、使用人がそそくさとティーポットを持ってきて、青いそれを注ぐ。
「……」
なんとも言えない顔になりながらも、今度は味わいながら飲む……
苦い……
「ぷ……ふふ」
「笑うな……虚しくなんだろうが……!」
現実を受け入れつつ、俺はちびちびと青いお茶を飲むことになった。
……しばらくして。
ギィィと鳴る玄関の扉に俺は警戒をする。
ティナはビクッと音のなった方向に身を向ける。
「……お帰りなさいませ……旦那様……奥様……お客様がお越しになっています」
使用人は開いた扉に向かって深々とお辞儀をする。
そこに、ティナの両親が……
いるのか?
「お客様……?」
女性の声だったろうか。
ティナの母親のものと分かる。
「……そうか。して、お客様は?」
「こちらです」
男性の声だ……
ティナの父親か。
メイドが先行し、その後から……
銀髪の男性……
白の無精髭を生やし、厳つい顔をしている。
こちらをチラッと見るが、すぐにティナの方へと視線を戻す。
そして金髪の女性……
狐目で、人を利用しそうな……
俺の嫌いな雰囲気だ。
服装が二人とも、黒い服で、父親がスーツ。
母親がドレス……か。
ティナの父親は、ティナを軽蔑的な目で見ている。
対して母親は、ニヤニヤと良からぬ笑みを浮かべている。
……そんな表情を見せていたのも一瞬で変わる。
母親は今にも泣きそうな顔に、父親は暗い表情に。
「ああ……セレスティナ……! 私は貴女を心配しておりましたのよ……!」
ゆっくりとティナに近づいていき、抱き締める。
それに驚いた様子のティナは目が見開いている。
「あの時はすまなかった。私達は一番大切な宝物を手離してしまうとは……どうかしていたよ」
父親も、ティナに近づいていく。
……実際見ると、感動の再開ってか?
最初の表情さえなけりゃあ完璧だったろうよ……
俺はコイツら、信用出来ねぇ。
「おか……お母さ……」
「ごめんなさい……謝ってすむ問題ではないのですけれど……」
「ああ……セレスティナ……私達の娘よ……お帰り」
俺は睨み付けながら、ティナとその両親の絡みを見ている。
「あか……あさん……おとお……さん!」
ティナは涙を流し、心の底から嬉しいと思っているのだ。
……親が今、どんな顔をしてるのか分からずに。
俺がいるから、表面上を繕うとしている。
しかし、よく見るとニヤニヤと笑っている。
……コイツら、最低だ……
親の資格を乱用して、何するつもりだ……
「すまないが、私達だけにしてくれないか?」
「あ?」
なんだこの野郎……
ティナをこんな所に────
「メイ……さん、お願い……今日は、一日……ここにいさせて……」
「んぐ……」
ティナからお願いをされる。
……どうしたらいいんだこれ……
このままにするか?
だが、ティナはどうなる……
逆に助けようとして空回りする可能性も捨てきれない。
「……わーったよ」
ステータスでティナの状態は確認出来るんだ。
危なくなったらどんな手使っても救いだしてやる。
グッと拳を握りしめ、俺は屋敷を出る。
いつもなら自業自得とか言ってそうだが、今回はそうもいかない。
実の両親なのだから……
「ギャウ?」
「ティナは屋敷で一日過ごすんだと」
クルクルとその場で回っていたコメットが不思議そうに首を傾げていたので説明する。
「ギャウッ」
……これで理解するのだから、末恐ろしいな。
「さて……」
外に出たが、いつ、どのタイミングで動くか……
あの両親どもが何をするのかもまだ検討はついてないしな。
……聞き耳立てるか?
変態の発想か!?
もしくはストーカーッ!
人道外れてるっちゃあ外れてるけどよ、それは絵的に不味くなるって。
ティナのHPは今は満タンだ。
もしも状態異常等に陥ったら表示される事を祈るか。
本当、フレンドチャットとかあればいいのにな……
そうすれば離れて連絡とか出来るし。
……いくらゲームに酷似してるからってこの考えは危険か。
「んま、俺らは魔物狩りでも行ってくるか……」
「ギャウッ!」
取りあえず、昼間の内は連れ出されるとかいう心配はしなくていいか。
あるとしたら夜……
夜になる前にあの屋敷の近くに行って、本当に大丈夫か確認だな。
嫌な予感が杞憂であればいいのだが……
……そうもならないんだよな。
こりゃあ……




