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第四十一話 会わなきゃ

「……寝た気しねぇよ」


 宿屋の一室で俺は窓を見ながら欠伸をする。

 昨日の祭りの後、俺とティナとコメットは宿屋へと向かい、一日を終えた。

 ……だが、いつもの習慣に負けて、長い時間は眠れなかった。


「んっ……!」


 背伸びをし、取りあえずと外に出る準備をする。

 ティナはまだ寝ているか。


「……そういやコメットに飯をあげなきゃならないか」


 ペットの世話なんてしたことねぇけどな……

 つか、魔物って何食うんだ?

 ……それらしいもん買ってけばいいか。


「起こしちゃまずいか」


 ティナは気持ち良さそうに眠っている……

 流石に叩き起こすとなるとまずいな。

 機嫌を損ねてあーだこーだ言われるのは面倒だ。

 俺は自分の所持金を持ち、外へと出る。

 コメットは朝から自身の毛繕いをしていた。

 しかし、俺を見るや否や尻尾を振る。


「ギャウッ!」


「へいへい……飯ついでに散歩するか」


 ……どこで飯を買えばいいんだ?

 立ち食い出来そうな……

 持ち帰れるようなヤツが欲しいんだが。


「そういや、ティナは何が好きなんだろうな」


 細やかな疑問だが……

 ま、今はいいか。

 俺はコメットを連れて何処かへと向かう。

 昨日とは通行の量が雲泥の差だな。

 この通りも、普段通りの通行量だ。



「……あそこがいいか?」


 歩いて数分の場所で、少しばかり人だかりが出来ている店があった。

 ……食パンに何か挟んだ、サンドイッチみたいなものか。

 それを目的にしている人が並んでるみたいだ。


「お前は待ってろよ」


「ギャウッ」


 肯定と思えるような鳴き声を放ち、お座りする。

 ……本当、そんな教育をさせられたのかお前は?

 疑問に思いつつ、俺は並ぶ。

 一つ、80シルドと案外高めか……

 いや、安いのか?


「3つ頼む」


「はいー」


 ……ん?

 店員の態度に違和感を感じる……

 ああ、睨み付けられるような感じじゃなかったからか。

 いつもは疎ましく思われてるように顔を歪ませるからな……


「袋にお入れしますね。240シルドになります」


「おう」


 慣れるもんだな。

 異世界の金銭だというのに、素早く出せるのはこの世界に馴染んできた証拠か……


「ありがとうございました」


 営業スマイルで、袋を渡してくる。

 さて、宿に戻るか。


「行くぞ、コメット」


「ギャウッ!」


 長い尻尾をピンッと立てて、コメットは鳴く。

 そして、歩く俺の隣についてきて、袋の中身を凝視する。


「宿についてからな」


「ギャウッ!」


 コメットが彗星の如く走っていった。

 そこまでして食いたいか。


「俺は歩くけどな」


 意識しないで気配を消している為、たまにぶつかりそうになるけども。

 ハイドウォークが勝手に作動しているらしい。


「……そういや」


 一つだけ疑問があった。

 ……俺達の前に現れた暗殺者のことだ。

 あの存在だけが異質……

 いや、国王の件と全然関わりがなかったのだ。


「あの暗殺者どもは……なんだったんだ……?」


 あの暗殺者達は手強かった。

 辛うじて二人は倒せたものの、カートナードとリドルグの乱入が無かったら、逃げ出すしかなかった。

 それでも逃げ切れたか?

 ……やっぱステータスは上げなきゃまずいか。

 称号を集めるのに集中した方がいいかもしれない。

 と、考えてる内に宿屋についた。


「ギャウッ」


「へいへい……」


 サンドイッチを袋から取りだし、コメットの前に差し出す。

 それを脇目も振らずに食べ始める。

 そこは全くもってペット同然だな。


「……」


 俺はそれを見たあと、寝ていた部屋へと戻る。

 そこには膨れっ面していたティナがいた。

 ……怒ってるな。


「むぅ……」


「……んだよ」


 怒られる筋合いは無いんだが……


「どこか行くなら言ってよ……」


「お前、寝てたろ……起こして機嫌悪くなるくらいなら一人で行動するわ」


 結果、そうしても機嫌悪くなったけどな。

 そんな事を言いつつ、俺はサンドイッチを取り出す。

 そして、ティナに手渡しする。


「これは?」


「買ってきた」


 俺も自分の分を取り出して、それを食べる。

 ……肉食いてぇ。

 これもサラダみたいなの挟んであるだけか。


「ん……美味しい」


「置いてかれた割に合うだろ?」


 ニヤニヤと馬鹿にするような笑みを俺は浮かべる。


「それとこれとは別」


「……っく」


 ティナが注意してきやがった……

 何も言えん。


「それで、今日はどうするの?」


 ティナがサンドイッチを頬張りながら尋ねてくる。

 そうだな……


「魔物討伐しかないんだが……ティナはどうしたい? この城下町を出たいか? それとも他にやりたい事とかあるか?」


 自分のやりたいこととかあるんじゃないのか?

 そう思って聞いてみた。


「やりたい……事……かぁ……はむ……」


 ティナは食べながら考えている。


「……うん、お父さんとお母さんに……会わなきゃ、かな」


「お?」


 意外や意外。

 もう会いたくないとか思ってるかと思った。


「な、何? 変?」


「いや、不思議に思ってな。ティナがそんなこと言うなんて」


「……運命は変えられるから。私、もう一度会うべきだと思ったの」


「変えられる……か」


 もしも仮に運命っつうのがあるのだとしたら、それすらも定められてたりな。

 柄にもねぇこと考えちまった。


「ついてきて……くれるかな……? 私、一人じゃまだその……怖いの」


「なるほどね」


 既に食べ終えていた俺は手をパンパンと叩き、汚れを落とす。


「んじゃ、いつ行くかとかはお前に任せる」


 言い終わった後、欠伸を噛み殺す。

 その様子をサンドイッチを未だ食べているティナに見られて、少しだけ笑われる。


「ふふ……んー……食べ終わったらかな」


「急だな」


「早いほうが、はむ……いいほほほっへ」


「口に入れたまま話すのやめれ!」


 何言ってるか一瞬わかんねぇから!


「……んじゃあ、待ってるわ」


 食事スピードが遅いのを指摘するのは野暮だし。

 ゆっくり待つとするか……

 しばらく、談笑した後、ティナが食べ終わる。

 ふぅ……とティナが一息つき、少しだけ戸惑う様子が見られる。


「……やっぱ嫌か?」


 俺の言葉に反応したようにピクッとティナの体が一瞬、震えた。


「心の準備がちょっと……すぅ……ん、大丈夫。行こう」


 深呼吸したティナは表情を真面目そのものに変える。

 親と会うのに心の準備が必要なのか……

 それもそうか……

 本人の話だとひでぇ親だったろうし。


「……おう」


 俺はティナの後ろについていく形となる。

 こういう時、どうすりゃいいか分からないからな……

 自分で思って情けねぇ……

 宿を出て、コメットを回収した後、ティナは迷いもせずに貴族層へと向かう。

 思えば初めてここにきたかもしれない。

 ……来たとしても祭りの時にチラッとだけだ。

 宝石とか高価な屋台が出てて思わず逆戻りしたっけ。


「……ここ……」


 小さな声で家の前に立ってそう言った。

 周りの貴族の屋敷よりも少し小さめだ。

 しかし、それでも大きいのは変わりない。

 庭もついていて、花が咲いていそうだ。

 しかし、見てみると緑だけが生えている。

 花を世話したりはしてないのか?


「……」


 無言のまま、ティナが扉の前に立つ。

 深呼吸をして、扉を叩く準備……


「……よし」


 ティナが呟き扉を……

 叩いた。

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