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第三十一話 革命の開始

 ──────聞こえたのは耳が千切れそうな程の爆音とつんざくような悲鳴だった。


「んぁ……?」


 眠りを妨げられて俺の不機嫌度は高まりつつある。

 あんまり眠ってねぇような感じがすんぞ。

 寝不足でイライラする……


「よっ」


 ベッドから滑り落ち、着地。

 自分の部屋の窓から外を見る……


「……なんだ……こりゃ」


 逃げ惑う人々、耳を塞ぎたくなる叫び声。

 状況が呑み込めない。

 何が……起こった?

 今日が祭りなのか?

 でも。


「悲鳴をあげる祭りは楽しかぁなさそうだがなぁ」


 それにさっきの爆音……

 気になるな……


 ────革命軍……


 そんな単語が脳裏に過った。

 あの爆音が革命軍のだとしたら?

 ティナは……?


「ティナ……!」


 あんな別れ方をしたのに、何故こうもティナを気に掛けてしまうのだろうか。

 彼女の身を何故、案じてしまうのだろうか。

 わから……ねぇ。

 それでも俺は……


「今、行く……」


 本当……

 俺の体はなんで動くんだろうな……

 不思議、奇怪、理解不能。

 俺自身、なんでこうも動こうとするのか、分からない。

 本当はこの世界で楽しく生きていられればそれでいいのだが……

 そこまで考えた所でフッと答えが弾き出てきた。

 ティナと一緒がいい……

 何故……

 自分で自分に問い質そう。

 本嶋 命は何故、ティナと一緒にいたいと思っている?

 何が俺にそうさせる?

 何故、何故、何故……


『私たち、友達だよね?』


「……友達……か……そうだな」


 俺はそう呟いてフッと小さく笑っていた。

 ああ……こん畜生……

 まったく、似合わない。


「俺はそんなの毛ほども興味ねぇハズだったのによ」


 荷物をちゃんと引っ提げて、短剣を腰にさす。

 これだけで、準備完了。

 これだけで、どこにだって行ける……


「国取りに乗ってやるよ」


 口元を歪ませている事を自覚しながら、俺は自室を出た。

 不思議と体は……軽い。


 ・

 ・

 ・


 ・


 ・



 ・



 ・



 時は少しだけさかのぼり……

 時刻はメイが起きる少し前になる。

 裏路地にある、やや……いや、かなり大きめの建造物にティナはいた……




「皆……俺のワガママに付き合って貰って……わりぃな」


 カートさんの態度に私は少なからず驚いた。

 やはり、いつもおちゃらけている人ほど、真剣みを帯びた態度をとると何か……違う。

 こう……力というか……言葉では上手く表現出来ないモノを持っている気がする。


「この恩は、目的を果たした時、必ず返すわ」


 表情を改めて見て、これがカートさんなのだと実感する。

 いつもの場を明るくするカートさんではない。

 今は、目的の為に意を尽くす『戦士』なのだ。

 辛く……憎む顔は……

 その目は……眼は何を見ているのか。

 私では皆目検討もつかなかった。


「レイジ頼むな」


「必ず、やり遂げます」


 レイジさんはただ、それだけを言い放ち、私たちより先に外へと出ていってしまう。

 彼は町の外壁へと上るのだ。

 それも、今回の作戦に必要な事だから。


「んじゃあ……俺たちも行くぜ」


 私たちは寸分違わずに頷き、カートさんの後へと続く。

 ついていくと、辺りはお祭り騒ぎだった。

 早朝なのに……と思いつつも、通りを抜けていく。

 通りを抜けると一本の大きな通り……町の外へと繋がる扉から、お城の正門までが繋がっている通りに来た。

 メイさんといるときはあまり来なかった場所だ。

 この通りには出店が多く出店していて、私たち以外にも多くの人が行き交っている。

 数年前にたまに見かけた風景だ。

 あの頃は学校の友達と一緒に行っていたっけ……

 でも今は……

 会いたくないなぁ……

 この頭も見られたら何か言われそうだし……


「セレスティナちゃん、気を引き締めてですよ」


「うん……分かってる」


 シュルちゃんに言われて、気を引き締める。

 私たちは、このお祭りを……

 壊すのだ。



 しばらく歩いていくと、何十…何百の城の兵士の軍団が、ゆっくりと足並みを揃えて城下町の方から歩いてくる。

 そうだ、この光景は……

 兵士が王様を護衛しているときの行進だ。

 何百の兵士の軍団は前後にあって、その間に挟まって王様とその大臣が歩いてくるのだ。

 この兵士の群れが一度途切れたら、私達の仕事だ……

 私達は大通りの端っこで立ち止まる。

 兵士達が過ぎ去るまで……

 あと少し……


 もうそろそろ……


 ふと、カートさんが右手を空に伸ばした。

 次の瞬間、爆音と共に、王様がいるであろう場所から大きな爆発が起きる。

 煙が立ち上がるも、まだ爆発は続き、主に兵士たちに被弾していく。


「皆ッ! 頼むなッ!」


 カートさんは王様のいる所へと走っていき、私たちは王様の所に兵士を行かせないのが目的だ。

 いける……私たちなら……

 シュルちゃんは私と一緒に前の軍勢を。

 リドルグさんは後ろの軍勢を相手取る。

 並の兵士より、二人は強い。

 私なんかが足下にも及ばないくらいに……

 レイジさんも遠くからの援護をしてくれるし、最悪の事態にはならないようにしたい。

 シュルちゃんは腰から杖を取り出して、魔法の詠唱をする。

 私はシュルちゃんに攻撃が向かないように前で剣を構える。


「天に、地に吹く清き風よ……」


 兵士は未だ、何が起こっているか分からないようで、私たちの方には注意を向けていない。


「我が声に傾け、空へと続く大気の刃と成れッ!」


 シュルちゃんは右手で握る杖を前に出し、兵士の軍団を見ている。

 風が頬を伝わる。

 しかし、温かいとも冷たいともいえない奇妙な風だ。

 どんどんと流れる風の量は多くなり、私とシュルちゃんの髪も乱れ始める。

 そこで……見た。

 緑色……いや、口でいうよりも綺麗な緑を瞳に輝かせながら、その眼で兵士達を睨み付けているのを。

 とても強気なその瞳は何者にも屈しないような意志の込もった眼……

 彼女が、シュルちゃん……

 右手の杖を凪ぎ払って彼女は唱える。


「トルネイドッ!」


 兵士の軍勢が勢いよく吹き出してきた風に堪える。

 私にも風の影響が加わって飛ばされそう……

 それをシュルちゃんが手を繋いで守ってくれる。

 トルネイドが出ている間は私は警戒しなくても大丈夫なハズ……

 これが終わった後……

 シュルちゃんがまた風を呼ぶ、その時は私が頑張らなきゃならない。


「私も……やらなきゃ……」


 グッと右手に構えている剣に力が入る……



 ・



 ・



 ・


 ・


 ・

 ・

 ・


「な……んだありゃ?」


「ギャウッ!」


 俺は爆音がなった場所へと目を向けていたのだ。

 その時、目に見える風……

 淡い青に染色された風がくるくると螺旋状に連なって天へと伸びていくのが見えた。

 あんな魔法、公共の場で使うような魔法じゃねぇよ。

 爆発といい、竜巻といいよ……

 だが、目的地はほぼハッキリした。


「よし、コメット。行くぞ」


「ギャアッ!」


 高らかにコメットが鳴いて肯定する。

 その時だった……

 地鳴りが耳に伝わったのは。

 その音はどんどん……どんどん大きくなる……

 何が……起こったんだ?

 疑問はすぐに解消される事になる。


「……ん? ……んぁ!?」


 まるで、雪山で起こるの雪崩のように何人、何十、何百、何千の人々か此方へと押し寄せてくる。


「今の騒ぎで逃げてきやがったのか!?」


「グルルッ……」


「どうすりゃ……そうか……」


 俺はチラッと別方向を見て閃き、コメットと共に行動する。

 ……裏路地。

 幸い、逃げてくる人々は殆ど表通りを使っていてくれた。

 それだけパニックに陥っているということだろうか。

 ……そういや、裏路地を使って竜巻が伸びていた場所へと向かえないか?

 小さな道をせっせと歩き、俺は試しに歩いていく。


「ここどこだぁ……?」


 結果は駄目だった。

 数分して既に迷子。

 不思議な体験をしている気がする。

 こんなに素早く迷子になったのは逆に新鮮だ。


「新鮮だとか思ってる場合じゃねぇんだよ! クソッ……どこいきゃあ……」


「ギャウッ」


 急にコメットが鳴いた。

 俺の前へと出て来て、顔を俺の方に向けてくる。

 まるでついてこいと言わんばかりに。


「……わーった。頼むな」


「ギャウッ!」


 コメットはそうやって鳴くと勢いよく飛び出した。

 走り出すその背中に俺はついていく。

 元の世界では到底追い付けなかっただろう。

 しかし、この世界に来て案外高いステータスを授かったのだ。

 素早さだけは。

 飛び抜けて。

 だから、いくら人間とは違う骨格だとしても、ステータスに依存したこの世界で俺が追いつけないものは殆ど……

 今は見たことがない。

 故にコメットのその背中も例外ではないのだ。


「ギャアッ!」


 何度も角を曲がるうちに大きくコメットが鳴く。

 そろそろ着くか!?

 そして、次の角を曲がった時……


 ティナとシュルネイルが共闘している場面へと遭遇したのだった。

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