第三十話 名前をつけるときは慎重に
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何を
考えていれば
良いのだろう
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何を
すれば
良いのだろう
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天井
赤い
光
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「俺…なにしてんだろ」
今は宿屋の一室…
今日泊まる場所だ。
背中をさわり心地がいいとも悪いとも言えないベッドに預けている。
ごわごわ…ふかふか…その中間といったところの寝心地だ。
「…外は…もう暗いな…」
いつの間に夜になったんだ?
ここに入ったのは…
あらぁ?
いつだったか?
「んー…!体がなんかかてぇ…」
…そう言って背を伸ばす。
それだけで少しは体が軽くなったような気がした。
気分までスッキリだ。
さっきとは雲泥の差だな。
「さて…と。今日は一人だからっつってハメ外しすぎたからな」
ロクにアクションしてねぇからな俺…
明日は…
そうだな、結構稼いだし、そろそろ旅立つか?
そう思ったところでティナの事が脳裏に過り、顔をしかめた。
もう関係ねぇだろ。
それに、ここにくれば少なからず会えるだろう。
うっし…
気が楽になった!
「なまったなー…少し魔物でも狩るか」
それに運動すればもやもやした気分も吹っ飛ばせるだろ。
ようし…!
やってやんよ!
「そうと決まれば!行くぞッ!」
鍵をかけ、宿屋を出る。
…今頃、ティナはどうしてるだろうな…
宿屋を出ると、何やらせっせと働いてる人が多い…
何か照明というかなんというか…
そういうものが飾られていってる。
そういえば城下町の入り口らへんにもあった気がすんな。
「祭りか…何年ぶりだろうな」
明日に起きれば屋台あらしでもするか?
てか、いっそのこと祭りを楽しむのもいいよな。
「うっし!荒らすか!屋台!」
…一人で
寂しい気もするけどな…
そんなことを頭に浮かべた瞬間、頭をぶんぶんと振る。
考えを振り払い、明日の事でワクワクする。
…まるで子供だな…
自分で自分に苦笑した。
「…さてと」
ともかく、今はあれだ。
魔物狩りだ。
俺は門をくぐり、城下町の外へと出た。
辺りは月が照らし、星も夜空に散りばめられた宝石のように輝きを放つ。
夜に狩りに出るのは二度目か。
あの時は明日の宿代が払えるかどうか…だったのだ。
「そういえばティナの事、聞いたんだったな」
あれで辛い過去を送ったみたいだからな…
俺とは全然違う生き方をしたんだ。
…そもそも住む世界が違うんだから。
何が一緒に背負うだ。
口先だけで…
「あー…また馬鹿考えてんなぁ…思いやりが大事って知ったろうに…」
それだけあれば、どんだけ苦しませずに済んだことか。
…そうか…
そうだよな…
ティナには思いやりがあった。
その思いやりをあのいけすかねぇ連中に向けてやったんだよな…
わーってた事だろ…
「…俺と…また会ってくれる…か?」
…
「いやいやいや!ないない!つかくそ気持ちわりぃな!俺はッ!」
何がまた会うだ!
「…でもまた会えますよねって言ってたから会うのがあれなんじゃあ…」
首をぶんぶんと振り回す!
「会わないって決めたのは俺の方だぞあんとき!未来永劫とか言ってたろ!?」
でも…なぁ…
「ギャウッ」
「くそー…どうすっかな…会うか会わざるべきか」
「ギャウ…?」
「迷うよな…」
「ギャウッギャウッ」
「…で、お前なんだ!?」
普通に俺の隣を歩いていたギャウッと言っていた野郎…
【ハイウルフ】
「ギャウッ?」
「………」
足を止めてジッと見つめた。
それを見たハイウルフも足を止め、俺を見つめる。
「…ギャア?」
「………」
「ギャウ」
「なんなんだお前…」
灰色のオオカミ…
なんで俺についてくる…
「ギャウッ」
「…見逃してやっからさっさとどっかいけ」
ティナが逃がしたヤツと同じ種類だからだろうか…
俺はコイツを狩ることはしなかった。
そのまま俺は歩いていくが、隣に引っ付いてきている。
「…」
ソイツを横目に俺は魔物が出現するまで歩いた。
【ワイルドベア】
見つけると、俺はククリナイフを抜いて、構える。
タッと地面を蹴り、直ぐ様、切りかかる。
ワイルドベアは今、俺に気づいたようで、俺はワイルドベアの後ろへと跳躍。
ヘイト…注意を俺に向けさせる。
「ティナッ!今──────」
叫びかけて、ハッとなる。
…俺は一人だ。
「っちぃ!」
舌打ち…
何忘れてんだ俺は…
「ギャアッ!」
自分にイラついてる時、ワイルドベアの背後から何かが…
狼が食らい付いている。
「グルルッ」
ワイルドベアの腕に噛み付き、そこからは赤いものが噴き出している。
…手伝ってくれんのか?
コイツ。
ワイルドベアは痛みでだろう、暴れだし、腕を振り回す。
それに耐えきれなくなったハイウルフは足から綺麗に着地し、ギャアッ!と威嚇しているような鳴き声を発している。
「…手伝ってくれんならありがてぇが…」
俺はパラライズを唱え、左の掌に麻痺属性を流した。
ワイルドベアはハイウルフに注意がいっている。
…麻痺にするのは容易いものだ。
素早くワイルドベアの懐に潜り込み、左手で触れる。
すると、ふらっとした足取りになり、動きが鈍くなった。
それを見逃さなかったハイウルフはワイルドベアに飛び掛かり、牙で、ツメで切り裂いていった。
そして…
絶命していった…
「…おー…って…んぁ…?」
ワイルドベアの死骸を確認。
見たことのある切り傷…いや引っ掻き傷だ…
そういえば、城下町に向かう途中、こんな形の傷がついた死骸を見掛けたな…
「…まさかお前がやってたのか?」
「ギャウッ」
うん、分からん。
てか異世界人補正で魔物語覚えさせてくれよ…
…断末魔を聞くのは嫌なんでやっぱ遠慮するわ…
ん…
メニューに何か通知というか…
何かが来てる。
ハイウルフを仲間にしますか?
…お、おう?
あれか?
魔物を仲間にする…魔物使いというか…
そういうヤツか?
「ギャアッ」
長い尻尾をふりふりと振ってまるで誘ってくれみたいな仕草だ。
…なるほど…
俺は拒否った。
「ギャウッ!」
「痛ッ!?」
噛まれた。
いや、本気じゃないとは思うが。
それでもHPが1減った。
そして…
ハイウルフを仲間にしますか?
うぜぇー…
「ギャウッ」
「…なんでだよ…」
「ギャウ?」
首を傾げて何が?と言ってるかのようだ。
地味にムカつくな…
…でもな。
戦力的な問題がある。
それに魔物なら能力とかの違いがあるだろうし。
「…よし、飯は朝だけな」
ハイウルフは仲間になりませんでした。
「ギャーアッ!」
「んだよ!毎朝食えるだけでありがたいと思えよな!」
俺だって朝だけで済ました覚えが…
…
ねぇな。
「わーったよ…朝昼晩な…」
「ギャウッ!」
尻尾をブンブン振り回し、また先程のメッセージが表示された。
…取りあえず承諾する。
すると、俺の名前の下にHPとMPが表示される。
名前がない…
つけろってか?
「そーだなぁ…イヌでいいか」
「ギャアッ!」
首をぶんぶん振る。
嫌なのか。
「じゃあ…オオカミで」
「ギャーアッ!」
またも首を振る。
嫌なのか…
「じゃあもうスライムでいいだろ」
「ギャウッ!」
「いってぇ!?」
おもっきし腕を噛まれた。
…今ので8くらい減ったぞ…
「ご主人様を噛むとかありえねぇだろぅが!」
「ギャーア?」
「知らねぇフリすんなゴラッ!」
首を傾げてなんのことー?と言っているようだった。
クソッ…コイツめ…
つうかなんで命名すんのこっちなのに断固拒否なんだよ!!
「…つっても名前…か」
ううーむ…
どうしたものか…
グレーはシンプル過ぎるし、ウルフも…怒られそうだな。
周りから見つけてみるか?
城下町とか…草とか木とか…
月とか星とか…
夜とか…
と、夜空を見上げていると一つの光が軌跡となって消えていくのを見た。
「へぇ…流れ星ってヤツか…初めて見たな…」
…流れ星…か
「…決めたぜ…!お前の名前」
「ギャウッ」
少しだけ溜めて、そして言いはなった。
「こめっ───────」
盛大に噛んだ。
「いってぇ……」
もとの世界なら口が切れて血が出ていただろう。
だが、ここは異世界ッ!
血は何かしらパターンを踏まないと出ない!
「気を取り直して…お前の名前はコメットだ」
流れ星だからシューティングスターにしようとしたが、ものっそい長いし、面倒だからやめた。
だから流れ星ではなく彗星にした。
だって似てるからどっちも同じでいいだろ。
「ギャウッ!」
今度は首を縦に振っている。
心なしか尻尾も嬉しそうなくらい振っている。
そして、俺の名前の下にコメットと表示された。
ステータスを見てみるとする…
コメット
レベル5
HP67/70
MP10/10
攻撃力35
防御力15
魔法攻撃力5
魔法防御力10
素早さ35
次のレベルまで327
スキル 魔法
…俺よりちょい低くね?
いや、レベルのせいか。
しゃあねぇよな、なら。
それと何故だろう。
ティナの時には見れなかった魔法やらスキル、それに次のレベルまでの数値が見れるようだ。
魔物だからか?
「ギャウッ!」
「なんで付いてくんのかしんねぇけど…ま、頼むわ」
「ギャアッ!」
任せろと言わんばかりに尻尾がピーンッと伸びる。
…俺の背の半分くらいあるんじゃないか?あの尻尾…
経験値割り振りはティナの時と同じにした。
10溝の壁は未だ立ちはだかるばかりだ。
あー…ふしぎな○メとかねぇかな。
「ギャウゥ…!」
コメットが威嚇している…
その方向にはまた地面から湧いてきた、ワイルドベアがいた。
やっぱ出現する時って気持ち悪いな…
「ギャアッ!」
コメットの先制攻撃。
ツメを振り下ろし、ワイルドベアを引っ掻く。
するとワイルドベアは矛先をコメットに向けて、威嚇行動。
その行動を見て、コメットはすかさず後ろへと下がる。
…アイツ…ヒットアンドアウェイしてる…
戦闘において大事なのはどれだけ自分等のデメリットがない内に相手を倒すか…
敵を一体倒すのに、一人犠牲になりましたーとか。
でもまだ数体いるから一人ずつ犠牲にしまーすとか。
そんなのやってたら遠からず全滅する。
ましてや今は一人と一匹。
さらに言おう。
俺もコメットも回復魔法が出来ない。
まずコメットはなんも覚えてねぇからな!
だが、自分をどれだけ傷つけず、ダメージを負わせるか。
それを覚えているのはなんというか驚きだ。
魔物も頭が良ければ人間のように悪知恵が…よく言えば賢いやり方が出来るのか。
…つうか俺も動こう。
パラライズを唱える。
すっかり詠唱も板につき、慣れてきた所だ。
「よっ…と」
左手で触れると同時に、首をかっ切る。
当然、吹っ飛ばないが、ダメージを与えられただろう。
かなり仰け反り、そのまま、倒れこむ。
畳み掛けるなら今だな…
そこにコメットが襲いかかり、腹を食い破る…
飛沫が上がり、うん、確実に殺っちゃったな。
「そこまで。素材まで食い破られたら目も当てられない…」
「…ギャァッ!」
俺の言葉で止まり、俺の方に振り向いて鳴いた。
そして普通に俺の隣にくる。
…のだが、結構間を空けるのな。
ま、これからか。
「剥ぎ取りっと…」
すっかり手慣れた感じでやっているな…
肉とか、ライトノベルで読んだ辺りだと腐るとか書いてあったので、埋めている。
埋めていいのかどうかは知らんが…
いつもなら焼いてティナが祈っているのだが、今回はいないからな。
「ギャウゥ…」
「…お前に食わせるのも手か」
つかなんでこんな、なついて…
いるのかこれ?
よぉ分からん位置にお前いるぞ?
「ギャアァ…ゥ」
「欠伸すんなよ…俺まで眠くなってきただろうが…」
かなりの高音を鳴らして、大きな欠伸をしたコメット。
それを見て俺まで眠気が移る。
…やべぇ…真面目に眠くなってきた…
「今日の所は帰るか…マジで寝みぃし…」
「ギャゥ…」
涙目になっているコメット。
オオカミでもそんな顔すんのな。
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「なぁ?頼む。俺らの仲だろ?」
「魔物を連れてくるとは…駄目だ駄目。それにお前と会うのは今日が初めてだ」
コメットを連れての町の出入りが駄目らしい。
当然っちゃ当然の反応だが…
「ギャウ…?」
トローンとした顔でコメットが兵士を見る。
それに兵士は疑問符を浮かべた。
「…しかし…大人しいな」
「だろ?だからコイツも入れてやってくれよ」
…外で寝て死んじゃいましたじゃあ戦力かなり削られるしな。
攻撃面では中々の活躍を見せてくれている。
レベルは6となって攻撃力と素早さが42に上がっており、かなり高くなっている。
レベルをもっと上げれば化けるぞ。
コイツ。
「うーーーーーーーーー……む」
かなり長い時間唸った。
そして、未だ唸ってる。
結果、まだ唸ってた。
「しかし…なぁ…」
「ギャァゥ…」
またも、コメットは大きな欠伸をした。
そんな姿を見て毒気を抜かれたのか、ため息をついた兵士は
「分かった…だが、ちゃんとしつけろよ」
と言った。
ぶっちゃけ、え?いいの?
って言いかけたくらいだ。
ま、ありがたく入らせて貰おうか…
…リードとかあれば本当はいいんだがなぁ…
すっかり暗くなったからだろうか。
作業する人が見当たらない。
いや、暗くなったからじゃなく、飾り付け終わったからだな。
物足りない平民層でもまずまずの見栄えになるように所々に飾りの木や置物があり、何処と無く賑やかになりそうな感じだな。
いいな!屋台!
その前に腹減ったな!俺!
「…こんな時間じゃ何処もやってなさそうだよな…はぁ」
結構深いため息を吐いて、宿屋に向かう。
コメットはもはや千鳥足でついてくるのがやっとらしい。
酔っ払いのおっさんだな。
宿屋に着くと、店の人がぎょっとしてコメットを見ていた。
…が、すぐに表情を元に戻し、魔物は外で寝かせろと言われる。
「すまん。ここで我慢してくれ」
「ギュゥゥ…」
俺が喋った途端、イビキをかきはじめ、更に倒れこんだ。
…警戒心ゼロかこのオオカミ。
「…変な…ふぁ…拾いもんしちまったな」
寝ているコメットを見ると眠気が襲ってくる。
こりゃまずいと思い、自分の部屋へと向かった。
ふわふわとごわごわのミックスベッドに座り、欠伸混じりに明日の事を考える。
…明日は祭りなのだろうか?
少しだけワクワクしながら深い眠りについたのだった。




