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第二十九話 歓迎会

「また!…また…会えます…よね…」


私の質問にメイさんは黙ったままだった。

そして、扉は閉ざされて、メイさんは見えなくなった。


「必ず…また…会おう…?」


小さな声で私は呟いた。

こんなの、誰にも聞かれたくなかったから。

でも…少なからずメイさんに怯えてる自覚もあった…

…人殺し…

そんな感情が…私の中に深く刻まれていた。

私はカートさんたちに向かい合う。


「これから、お願いします」


私は深くお辞儀をして、挨拶をする。


「こちらこそ、よろしくですよ。セレスティナさん」


一番初めに口を開いたのはシュルネイルさんだった。

髪が長くて表情が見えないけれど、見えたらきっと可愛いんだろうなぁ…


「えーっと…シュルちゃん。よろしくね」


「しゅ…シュルちゃ…」


…?

口をパクパクしててお魚みたい。

何か変なこと言ったかな…

メイさんみたいにやってみたのだけれど…


「よろしくな。セレスティナ」


「リドルグさん、よろしくお願いします」


「おう」


肌が茶色く日焼けしてるリドルグさんに向けて言った。


「…よろしくお願いします。セレスティナさん」


「よろしくお願いします。レイジさん」


レイジさんは深々とお辞儀をしてきたので、私もお返しにしてみた。


「じゃあ!揃った所で!……作戦だ」


「へっ?」


突然、カートさんの声のトーンが変わった。

おちゃらけた様子ではなく、真剣そのものの声に…


「おっとぉ!ステータスを共有させてくれ!セレスティナちゃん!」


「あ、は、はい」


かと思ったらまたおちゃらけた感じになった。

不思議な人…

パーティの勧誘が飛んできて、私は承諾。

私以外に四人のHPとMPが表示された。

…た…高い…


「あの…私なんかがその…力になれるでしょうか?」


「なるってぇ!ほら!回復魔法とか唱えちゃう感じ?いいじゃんいーじゃん!」


「は、はぁ…」


と言ってもヒールだけなんだけど…

私の魔法攻撃力じゃ、回復して30~50位なのに…

攻撃魔法、回復魔法の威力は魔法攻撃力が高いと上がっていくのだけれど…


「いるだけで助かるってー!ほらほら?うち、全員回復魔法出来ないんだよねぇー!」


「そう…なんですか」


「だから心配すんなってー!じゃー作戦決めよー!」


備えてあったテーブルに私も含めて皆が集まり、カートさんは地図を広げた。


「えっ…もうするんですか?」


「と、いうよりやるしかないんだよ。明後日を逃すと城に入るのに後もう一年かかるから」


「そ、そうなんですか…」


「おう。明後日が城も一般公開される、王の誕生日だからな」


「…あっ」


そうだったんだ…

王様の誕生日にはいつもこの町はお祭りになる。

平民層、貴族層、王族の人達皆が入り乱れるくらいのお祭り騒ぎ。

屋台や、行商人等、一斉にその日に集まって王族の誕生日を祝う。

そして…

最後には王様とその大臣が姿を現すのだ。


「狙いは王と大臣。二人が現れた時だけだ」


「あのッ!」


心の内にもやもやしていた感覚の一つがハッキリ分かった。


「人は…殺さないですよ…ね…」


自身のない声で言った。

心配なのがそこだ。

…人を…

殺めたくない…


「…出来るだけ…殺さないようにしたい」


レイジさんが俯いて、そう言った。

殺さないようにって…!


「だ、駄目ですよ!ひ、人を…その…殺すなんて事ッ!」


「…分かってんだよそんなのは…」


睨み付けられる…

カートさんに…

その目からは何かが…

背筋から嫌な汗が出てきた…


「…めんご!すまねぇ…でも、理解してくれ。こうでもしねぇといけねぇ、理由があんだ。だから…頼む…力を貸してくんねぇか…?」


「…わ、分かりました…」


こんなに頭を下げられて、今更撤回なんて出来っこないよ…

でも…怖い…

人を殺す可能性が…

あの人と同じようになってしまうのかもしれない…

人の死を悔やむことも、恐れることも、罪悪感も感じないで…

普通に過ごしてしまうかもしれない。

…それが、嫌だ…


「…んじゃあ、話を続けるなー…俺、セレスティナちゃん、シュルネイル、リドルグが貴族層で待機。そこに王と大臣が通るからだ」


全員がコクッと頷いている。

私はおどおどしていているけど…


「大丈夫です?セレスティナさん?」


シュルちゃんが心配してくれている。

私は小さく縦に首を振った。


「一番の頼みはレイジ。やることは大体把握してるよな?」


「はい。王と大臣、そして皆さんが孤立できる状況を造ること」


「じゃー!頼むわ!それじゃあ新メンバーの歓迎会、開くかー!」


いきなりだった。

場の空気が先程とは変わり、軽い、陽気な雰囲気になった。


「セレスティナさん、こっち!」


「へっ?あっ!」


シュルちゃんに引っ張られて私はこの部屋とは違う場所へと移された。

そこには大きな長方形のテーブルと多くのイスが並べてあって私は長方形の端の方の席に連れていかれた。


「…えっと…」


「ちょっと待っててですよ」


座らせられて、何が起こるのかな…

そういえば歓迎会とか言ってたけれど…


「うーん…?」


私は首を傾げてそのまま、待っていた。



…結果。


「うわぁ……!」


目の前の風景に感動した。

大きな鳥と魚の丸焼き…彩りのいいサラダ…他にも色々な料理がテーブルに乗っていて、輝いてみえる。

鼻をくすぐる匂いは、私の食欲を掻き立てた。


「あ、あー!注目ーッ!」


私が多くの料理にみとれていると、突然、私の後ろで大きな声が鳴り響いた。

その声に既に席に座っていたカートさん以外の皆が私の方に目を向けた。

振り向くと、後ろにはカートさんがいた。


「よーし!今日はセレスティナちゃんの歓迎会だッ!朝までどんちゃん騒ぐぞぉー!の前にッ!セレスティナちゃんッ!」


「は、はい?」


いきなりカートさんに指を指されて、返答する。

今度は何なんだろう…


「主役のセレスティナちゃんにも一言戴ければとッ!」


「ひ、一言…ですか…?」


一言…

一言っというと…

ええと…何を言えばいいんだろう…


「えっ…と…その…よ、よろしくお願いします…?かな…?」


「はい!ありがとうございましたーッ!皆で仲良くやっていきましょー!そして…」


カートさんがまた真面目な声になる。


「力を貸してくれ」


「おう!」

「はい!」

「はいですよ!」

「は、はい!」


発した言葉は皆違うけれど、カートさんの言葉に皆肯定した。


「じゃあ!歓迎会を楽しもうかぁッ!」


静まり返った夜中…

その中に、一際賑やかな家が一件あった。

歌い、踊り、大声で笑い、叫び…

まるで中には大勢いるのではないかと思われるような5人の姿…

しかし、その中の一人は時々、寂しげな表情を見せるもそれを追いやるように隠し続ける…

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