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第二十八話 つ か れ た

「…やっぱ異端なんだよな…俺…というよりボッチか」


思いやりがない。

他人を考えず自分勝手。

そして決めたら頑として他人の意見を聞き入れない。

…自覚している事だ。

これらを直そうとは思わない。

直すだけ無駄なのが分かっているからだ。

他人を考えて、自分だけが損をするような接し方…俺は嫌いだ。

元からこんな考えだったワケじゃない。

こんな考えにさせられたのは全部…

人間という生き物のせいだ。

人間は他人の甘い汁を飲み生きてゆく生き物だ。

異端な者を集団でよってたかり、吸い尽くす。

そんなのが嫌だから、そんなのが大嫌いだから。

俺は他人との関わりあいを無くした。

友好的なヤツも拒絶した。

心から信頼出来るヤツなんかいなかった。

全員が悪どい…

両親、クラスメイト、先公、ネットの者…

拒絶、拒絶、拒絶、拒絶、拒絶、拒絶…

そんなことをしていけば話をする機会なんて殆どない。

そもそも不登校気味だったし、そんなの必要ない。

ただ、今を楽に過ごせれば、いい。

楽に過ごせれば…


本当は楽しく過ごしたかった。

本当は友人と一緒に駄弁りたかった。

本当は好きになった相手と一緒にいたかった。


そんなの…いらないと、なりたくないと俺から拒絶しておいてだ。

パソコンの画面越しに見る景色も、携帯の画面越しに見る景色も、漫画越しに見る景色も…

物足りない。

自分が見れなきゃ、物足りない。

行きたい…

行ってみたい…


夢は、叶った。

こんな自身の常識から外れた世界、ワクワクした。

この世界ならどんなことも楽しめると思った。

いつもの仮面を外して、人と話せる。

いつもの仮面を潰して、楽しく…

楽しく…

楽しく…



したかった…

そんな仮面はいつの間にか、外れなくなっていた。

他人を、信じようともがいていた。

結果は、出来なかった。

初めて優しく接してくれた少女…

ティナ…

本当は悪気なんてないのに、裏を、裏を、裏を…

探りすぎて頭が弾き出した、偽りの可能性。

ここに来てまで仮面は引っ付いてきていた。


俺は逃げ出した。

拒絶されるより前に、拒絶してやりたかった。

信頼出来ないと言われるより、信頼出来ないと言ってやりたかった。

半端な俺じゃあそんな事、しても無意味だったのに。

案の定、仮面の下の表情は、這い出てきた。

這い出て、這い出て、仮面が逸らした、表情を、言葉を、記憶から呼び覚ました。

…信じたい。

本心からそう思った。


ティナは俺を追い掛けてきてくれた。

それを見て、本当は嬉しかったんじゃないか?

助けたかったんじゃないか?

貸し借りとか関係なく、自分は利益のない事をしようとしたのではないのか?

信じたい。

それだけの為に動いていたんじゃないのか?


…そして、楽しかった。

うんざりするほどの会話が、時々見せてくれる表情が、ちょっかいを出してくる動作が、仮面をつけていれば、無視するような場面でも、仮面が潰れた…

いや、潰したその時は、とても楽しかった。


…でもこのままじゃ駄目だ。

俺についてきて得をするハズなんてない。

…早く、家を探してあげよう…

自分の為じゃなく、彼女の為に。

結果、貴族らしいヤツの条件に…乗った。

いつもなら、馬鹿馬鹿しかったと思ったハズの提案は魅力的だった。

貴族の人柄など、気にも止めず、独断で決めた。

ティナの気持ちなんて考えず、自身で決めた。

結果…

俺はティナを危険にさらしただけだった。


自己中心的になった結果だ。

知らず知らずの内に仮面がまた貼り付いていたのだ。

謝った…

心の底から謝った。

でも…違った。

謝るのが正解ではなかった…

自身の失敗をしたときに謝るものだ。

失敗をしたからすぐに謝ったのに、ティナは違うと言った。

…心配してほしいと言った。

何故か、涙が溢れでた。

信用してくれていたと思ったから。

俺だけが信用していたと思っていたから。


…決断した。

仲間として接しようと。

大切な…信頼出来る人物として接しようと。

そうしたハズだった。


なのに…


何故戻る…


何故裏切る…


何故裏切った…


違う…


違う違う…


違う違う違う…


こんなの俺じゃねぇ…


こんなの俺じゃ…


こんなの…


こんな…








楽しかった…なぁ…

また…ティナに会いたい…な…

また…会えるかな…










「…あのッ!?用がないなら早く出ていって下さいッ!」


いきなり怒鳴られた…

ここは…討伐ギルドの…

そうだ…素材を売ろうとして…


「…売りたい」


そう言って昨日得た素材を売った…

一人で得た収入じゃあないのに。

とことん自己中だ…


「……」


ボーッとすることが多くなった。

まだティナと別れて一日も経ってないのに…

ボーッとしているときに浮かんでくるのは決まってティナと過ごした所だった。


『ごめんなさい…遅くて…その…やっぱり足手まといでしたか…?』


『そうですか!期待に応えられるように、頑張りますね!』


『ちょっと見ないうちに焦がしちゃいました…その…ごめんなさい…』


『メイさん、ありがとう。私、少しだけ気が楽になったよ』


『美味しい…メイさんに今度この味を作るね!目指せ!コックマスター!』


『それ、とっても良さそう!やろう?一緒に!』


『怪我くらいどうってことないよ。ほら…治った!でも…心配してくれたんだ?』


『私…メイさんと一緒に過ごせて、今が一番楽しい…!』





「おい!ボーッとすんなよ!前見て歩けッ!人間風情が…」


「…すまん」


脳裏に焼き付いている。

あのやり取りが、あの楽しさが。

脳裏に焼き付いている。

二人でいる光景が。

考えられない…

これから一人で進む場所が…


なんて駄目さだこりゃあ…

自立できないとかなんだよ…

おかしいだろ…

なんだよ…

これ…

頭がおかしいだろ…



「…カッコわりぃ」


何が裏切るだよ。

何が仲間じゃないだよ。

そんなことになってパッ壊れてる屑は誰だ?

今、その仲間を考えてるヤツは…誰だ?


「…苦しい」


胸が苦しい。


「…痛い」


頭が痛い。


「…動かない」


体が動かない。


「…死にてぇ」


…死にたい。

無性に死にたい。

何故…

と問われても分からない。

分からないけど…

死にたい。


「…」


ああ…

今日はもう…


つ か れ た

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