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第二十話 少しずつ

それなりの魔物が出る草原…

平均レベル7の6人パーティで挑めば楽々と倒せる場所だ。

今の俺らはここで資金稼ぎをしている。

しかし、毎日毎日狩りをしているというのに、未だ大した金額は稼げていない。

…昨日も一昨日も、ティナの様子は変だった。

それで一度にかかる、戦闘時間がかかりすぎたり、酷いときには撤退にまで追い込まれてしまうのだ。

…火力のない、自分のせいも、まぁあるが…

でも…だ。

パーティを組んでいる以上、戦闘中にボーッとされては効率は元より危険度も上がってしまう。

それでも、宿屋代と食事代をギリギリ稼げたのは奇跡としか言い様がない。

…ただ、それも今日までだろうか。


ティナが…倒れた。

ワイルドベアという、熊みたいな魔物との戦いの途中だった…

俺がパラライズとダウンガードを行って相手を行動不能に陥れた時、何の予兆もなく…

いや、あったのかもしれない。

見逃したのかもしれない。

フラッとティナが倒れたのだ…



「おい…!大丈夫か!?」


パラライズの時間が切れそうだ…

言葉を投げ掛けてもティナはピクリとも動かない。

…助けないといけねぇ…

こんなとこで、倒れるとか…

目ぇ覚めたらガミガミ説教してやっからな…!

俺はティナをおぶって、その場を離れる…

幸いまだ、城下町が見える程度の位置だったから、そんなに時間はかからねぇはずだ…

俺はティナをおぶり、その場を後にした…










…この世界でいう、病院と言えばいいのか。

俺はそんな場所へと来ている。

こんなところへ来たのは、無論、ティナの様子を診てもらう為だ。

因みに門兵さんが病院……だよな。

そこの場所を教えてくれた。

やはり担がれているのが魔人だからだろう。

連れていくのを急かしたぐらいだ。

…でだ。

金がすっからかんになった…!

診断だから100シルドで済んだと言えばいいのか…


さて、今は病院の診察室というところだろうか。

ティナはベッドに乗せられて、医者…のような人が診察をしてくれている。

俺は付き添いだ。

…診察と言ってもティナを見たのち、何かを呟いただけだった。

それだけで100シルドも取られんのかよって思ったくらいだ。


「…外傷なし。内臓も問題なし。病にかかっているわけでもない…か」

「…ティナは…治るのか?」

「…こんなことは…言いたくないが…私たちには治せない…この子の心の問題だろう」


魔人の医者が言った。

優しげに言っていてそれでいて冷たい感じ…

つか治せないって…!


「じゃあ…どうすればいいんだ」

「心の問題だと言っただろう。時間の経過か、その問題を解決するか…いや、解決するまでいかなくても聞いてみるだけで楽になるかもしれない」

「…」


ティナの内情を聞けというのか?

…俺が聞くと余計なお世話とか言われそうなんだが。

誰か宛になる人は…

駄目だいねぇ…!

思えばティナ以外ロクなヤツと会ってねぇ!


「分かった…」

「…医者として情けない…申し訳ない」

「…いや…助かった」


心の…問題か…

…聞かなきゃ…ならないのか…

ティナの悩みを。

俺に…そんな権利はあるのか?


「…せめて、最後に医者らしくしよう。この子は衰弱している。もし、その問題が緩和されたなら温かい、スープか何かを食べさせて安静にさせてあげるといい。」

「…衰弱…してるのか…コイツ」


…言えよ…この尼…

変な意地ばっか張りやがって…

俺はティナを宿屋まで担ぎ、目を覚ますまで見守る事にした。



…ティナは何を抱え込んでいるのだろう。

知りたい…けど知りたくない。

知ったらきっと、ティナはもっと具合が悪くなる。

俺が知ってしまったら多分…

…そう思うとティナの悩みを聞くのは本当にやってもいい行為なのか?

いくら信頼関係がある…といったってまだ他人なんだ。

ティナの事をなにも知らない。

……

ん…

俺は…

一度でも俺は、ティナの事を知ろうと思ったか?

記憶を失った時は知ろうとか…まぁ、下心で思っていた。

知ろうと思った事…

一度だけステータスを聞いてそれだけだった気がする。

ティナがどこ出身で、どんな経緯で俺の事を助けてくれて…なんて、話して…いや、聞こうとしなかった。

つかさ…

俺は信頼どうのこうの言ってる割に、相手を知らないってどうよ…?

確かにズバズバと入り込み過ぎるのもいけない。

しかし何も知ろうともしないのはおかしな話だ。


自分のベッドに座りながら、未だ目覚めぬ少女を見る。

…そうだよな…

分からないことだらけだわ…

俺は…

ティナを全く知らない。


「…説教とか思ってた割には、言う資格すらねぇな」


ティナは溜め込み過ぎてこうなったんだ。

心の問題ってヤツを自分だけでなんとかしようとして。

…ったく…頼れよコイツは…

いや、頼られるほど強い訳でもないか…俺は…


「…聞くだけ…聞くさ…それで楽になるならな」


本当なら聞きたくねぇよ…

でも聞かなきゃこうなるなら…聞くさ。

…聞いても尚…いや悪化したら…

ったく!

らしくねぇ!

やる前からなんつー後ろ向きな考えだ!

やめだやめ!

あんな洞窟に入ってて心まで腐ったか!


「起きろよ…!早く…!なんでも聞いてやっから…!」


聞くだけなら何度でも聞いてやる。

どんな言葉でも受け止めてやる。

それで…

それで、ティナを少しずつ知っていこう。

少しずつ…

少しずつだ。

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