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涙の上に  作者: ぬるま湯
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 陸斗がまりと初めて会ったのは、彼が11才のころだった。

 誰なのかは忘れたが知らない親戚が亡くなって、当時はまだ潰れていなかったこの寺で葬式が開かれた。会ったこともない親戚の葬式、涙を流す人々。奔放な子供だった陸斗はその場の空気が嫌で抜け出し、庭で砂をいじっていた。

 そこで会ったのがまりだ。

 陸斗が砂山にトンネルを開通させたとき、嬉しそうに駆け寄ってきた。

 なんだこのチビ? と思った。自分とは七才離れているから、彼女は幼稚園の年少組あたりだっただろう。トンネルを壊されたくなくて、ついにらんでしまった。まりは少しびくっとしたが、ひるまずにあるものを差し出した。それを見て陸斗はびっくりした。母の口紅。この間母とケンカしたとき、勢いで池に投げ捨てたものだった。


「拾ったの? 池に手突っ込んで?」


「うん、きらきらしたのみえたから」


 それから口紅は母に返し、それまでギクシャクしていた母との関係は元どおりになった。


 無邪気に笑って口紅を差し出した幼い子どもは、魔法使いのように思えた。


 しばらくしてその子の名前がまりということはわかったが、その後は何もなく、最近になって彼女が今どうなっているかを知った。 彼女が置かれている状況は壮絶なものだった。冷たい親戚たちに腹が立ったが、それ以上に自分が彼女を守らないと、と強く思った。




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