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涙の上に  作者: ぬるま湯
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 玄関に飛び込んだあたしは一瞬で鍵をかけ、どさっと倒れこんだ。普通でない音に驚いた陸斗さんがやってくる。


「まり!?」


 そのいつもと変わらない声に安心して、あたしは張り詰めた気が緩んで泣いてしまった。


「何かあった?」


「放火、してるの……みた……」


 なんとか声を絞り出す。


「どこで!?」


「タバコ屋のとこの路地……」


 ぺたんと座り込んでうつむいているあたしに合わせてしゃがみ込む。

 陸斗さんの手が背中をさすった。温かくて大きな手。身を任せているうちに呼吸が穏やかになり、涙も止まった。

 無意識に陸斗さんにしがみついていた。そうしないと不安だった。


「目が合って……十秒くらい……それから逃げてった…」


 フードから覗いていた両目が脳裏に焼き付いている。くっきりと思い出してしまいまた恐怖に震えた。

 遠くの方から消防車のサイレンが聴こえる。


「誰かが通報したんだ……まり、大丈夫?」


 こくりと頷く。だいぶ落ち着いてきた。


「何もなくて良かった」


 はあ、とため息をつく陸斗さん。


「でも当分気をつけた方がいい。今回は邪魔されたけど次は全部燃やし尽くしてやる、とか思ってるような奴だったら……」


 その先はあえて言わなかった。想像したくないが、口封じに来るかもしれないということだろう。背筋がぞっとする。


 なんであのとき通り過ぎなかったんだろう。気づいてなければこんな気持ち悪い思いしなくて済んだのに。


 背中の手は頭に移り、ふわっと撫でられる。その心地よさに酔っていると、不意に引き寄せられた。



 心臓が止まったかと思った。


「こうしてると、抱き合ってるみた……」


 陸斗さんが言い終わる前にあたしは全力で腕から抜け出した。


「な、何してんの!」


「何って……」


 今のはやばい。死ぬかと思った。


「まりが混乱してたから、ほぐそうとしただけだけど?」


 えっ? そうなの……?


 戸惑っていると、おいでおいでと犬か猫にするみたいに手招きをしてきた。


「っ誰が!!」













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