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涙の上に  作者: ぬるま湯
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 部活ですっかり遅くなった。陸斗さんはそろそろ着くだろう。はあ、とため息をつく。

 正直、無愛想なふりを続けるのはできそうにない。陸斗さんはかなり観察眼鋭そうだしあたしは嘘が下手だしで。


 途中まで後輩のくみちゃんと一緒に帰った。いろいろ考えなくて済むので助かる。

 十字路に差し掛かったところでくみちゃんと別れて、いつもの寂しい道を自転車をこいでゆく。寺に近づくにつれ速度がゆっくりになる。


 バカだな。ゆっくり行ったってあそこしか帰るところはないのに。


 今日何回目かわからないため息をついたとき。変なにおいを感じた。何かが焦げる匂い。何か、焼いてるの?

 疑問に思ってペダルをこぐ足をとめる。匂いのする方向をたどってみた。


 あたしはバカだった。見なければ良かったのに。


 空き家とタバコ屋の間の狭い路地。オレンジ色の炎がパチパチと音を立てて燃えている。その不気味な明かりが照らしている暗闇の先に、ライターを持った人。

 その人と目が合った。


「ひっ……」


 逃げろ、と全身が訴えている。なのにあたしの足は地面とペダルに接着されたように動かない。

 徐々に燃え広がっていく炎。その炎を挟んで放火犯と見つめ合うことしかできなかった。

 不意に放火犯は踵を返して逃げ出した。そのまま路地の奥へと走っていき、暗闇に消えて見えなくなった。

 そのときになってようやく足が動いた。呼吸が苦しい。めちゃくちゃに自転車をこいで寺に着くと鍵もかけずに放り出し、玄関に飛び込んだ。


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