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第2話「幻想へようこそ」(3)

「ソラビト様バンザイー!!」

「「「バンザイー!」」」

「お・・おー!」

 なんだろうこの異常なまでに祭り上げられている状況は……

 今、あたしがいるのはリネットの住んでいるエルフの集落だ。集落には木や藁で作られた高床式の住居や倉庫が立ち並び、鶏を飼っているらしき小屋のようなものも見えた。

(これがエルフの生活か……)

 なんて感慨に浸っている余裕はあたしには無かった。

 なぜならあの後、リネットに案内されてここを訪れたあたしは着くや否やいきなり男勢に拉致られ、集落の中心部の広場に突然用意されたこのなんだかゴツイ感じの椅子に座らされ、エルフの村の住民全員に崇められてしまったのだ。

 え? 何この状況?

 そしてそのまま大宴会に突入、飲めや食えや踊れやの大騒ぎになってしまった。

「ヨウ! お譲ちゃんがソラビト様カ。イヤーべっぴんさんダア。」

「ど……どうも。」

「キャー、ソラビト様ーーっ。これも食べテー。」

「あ……ありがとう。」

「ふぉっふぉっふぉ……まさか生きてイルうちにソラビト様を拝めるとはノオ……」

「お……おめでとうございます。」

 髭面のおっさんに若い女の子に老人に……次々と住民達があたしに寄ってきては絡んでくる。

 確かに歓迎されないのは困るけどここまで歓迎されるのも逆に困りものだ。あたしは一体どうすれば……と途方にくれていると。

「ほらほらミナさん、ソラビト様がお困りデスヨ。」

「リネット~っ。」

 救いの手がやってきた。

「おっト、スマンスマン。」

「ジャアまた後でネ~。」

「ふぉっふぉっふぉ。」

 と、あたしを取り巻いていたエルフたちが去っていくと同時にリネットがあたしの横に腰掛けた。

「びっくりしまシタカ?」

「あはは……大分……。」

 呆けた感じのあたしの顔を見てリネットがくすくすと笑う。

「もともとエルフは騒ぎガ好きデスカラ。それにソラビト様が現れたとナレば大騒ぎにもなりマスヨ。」

「ねえリネット。そのソラビト様って何?」

 さっきからずっと疑問に思っていたことだ。どうやらあたしはそのソラビトという奴だからこんなに祭り上げられているようだが。

「ソラビト様はデスネ……」

 リネットが語り始める。

「空からやってキタ人のことデスヨ。昔からアル伝承なんデス。光と共に空からやってキタ人が世界を救ってくれるト……。」

「世界を救う……?」

「ハイ。」

 リネットは頷いた。

「このあたしが……?」

「ハイ。」

 リネットは大きく頷いた。

「マシロ様が……世界を救うんデス。」

 その言葉を聞いて、あたしは胸が熱くなった。

 この世界に来るときに不思議な少女は言った。

 あたしに、世界を救いに行けと。

 今、目の前でリネットは言った。

 あたしが、世界を救うのだと。

 あたしの望んだ世界。そこで綴られる物語。その主人公はあたしなんだ。

 ずっと、ずっと夢に見てきた展開だ。

「よし……。」

 震える胸を落ち着かせ、あたしは握りこぶしを作ると

「やってやるーーーっ!」

 立ち上がり、拳を大きく天へと突きかざした。

「「「オーーッ!!」」」

 とそれに呼応するようにエルフたちの歓声が響いた。

「マシロ様、頑張ってくだサイ。」

 リネットもうれしそうにあたしの左腕に腕を絡め、身を摺り寄せてきた。

 そんなあたし達を見て

「リネットー。やけにソラビト様にべったりダナ。何かあったカ?」

 髭面の男が冷やかしに来た。

「実はソノ……」

 と、リネットはもじもじしながら小さな声で

「マシロ様に私の耳を掴まれマシテ……」

 瞬間、辺りが凍りついたように動きを止めた。

 エルフたちの顔には一様に驚愕の表情が浮かんでいる。

「な……何?」

 あたしだけが理解できていない。

 そして、

「「「ウウウウオオオオオオオオッ!!!」」」

 先ほど以上の歓声が上がった。

「リネット! やったじゃねエカ!」「リネット、おめでトウ!」「ソラビト様! リネットのコト、よろしくナ!」「今日は二重に、メデタイゾ!」

 宴は最高潮に盛り上がっていく。

「ねえリネット、これどういうこと?」

 あたしには皆が何でこんなに騒いでいるのかは分からなかったが

「ふふ、秘密デス。」

 いたずらっぽくリネットが隣で笑うのでまあいっか、と流れに身を任せてあたしも盛り上がる事にした。

 宴は続く。

 喧騒に包まれて、夜は更けていく。

 心地よい眠気と共に、あたしの異世界での初めの日が終わっていく。

 やがて、宴が終焉を迎えると、周りのリネットや飲み疲れて寝てしまったエルフたち同様あたしも床にゴロンとなって目を閉じる。

 きっと明日も良いことあるだろう。そんな楽観的なことを考えながら。私はまどろみに落ちていった。

 だが、そんな何もかもがうまくいくはずはなかったのだ。次の日、轟音と共に目を覚ましたあたしは


 地獄を みる。


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