第2話「幻想へようこそ」(2)
「マ……マイネームイズマシロ……」
最悪のファーストコンタクトの後、なんとかエルフの少女とコミュニケーションを図ろうとあたしは頑張っていた。
エルフって言うのは北欧の小民族だ。だから英語なら通じるかと思ったけれど、やはり言葉が通じないのか目の前の少女は依然おびえた様子でこちらを見続けている。
(くそ、北欧なんだからドイツ語かフランス語が話せればよかったんだけど……)
あいにくドイツ語はアイン、ツヴァイ、タンジェントしか知らない。(しかも最後の違うし)
フランス語にいたってはジュテームしか知らない。初対面でいきなり「愛しています」なんて意味の言葉を使ったら相手もドン引きだろう。
だから万国共通後っぽい感じの英語で頑張っているのだが・・・
(駄目か……)
少女からの反応は無い。
というかそもそもここは異世界だ。あたしのいた世界の言葉が通用するかどうかも怪しい。
前途は多難だ……
「ああ、お腹すいた……」
と、ここに来て空腹感が襲ってきた。
そういえば夕御飯前にここに飛ばされたんだよなあ……ちん○こうでも食べようかなーと、お腹を押さえていると。
「アノ、おなかすいてるデスカ?」
「日本語じゃーーーーん!?」
「ド……ドウゾ。」
「ありがとう。」
エルフの少女が木の実を差し出してくれた。あたしはそれを一つ手に取ってかじりながら
「さっきはゴメンね。なんだか怖がらせちゃって。」
「イエイエ、ワタシのほうこそずっとビクビクしていてすいまセン。」
そう言ってエルフの少女はにこやかに笑った。
少女の名はリネット。この近くの村の住民なのだという。金髪碧眼の美少女で、近くで見てはじめて分かったのだがこの子、相当胸がでかい。そんなリネットが何故ここに来たのかというと
「空から光ガ降ってクルのが見えてデスネ。それで様子を見に来たデスヨ。」
「空から……」
うはー、あたしはそんな登場の仕方をしたのか。よく生きてたなー。
「それでアナタを見つけたデスケド……耳ガ……」
「ゴメン。アレは忘れて頂戴。」
一時の気の迷いです。黒歴史です。あたしのログにはなにもない。
「あ、耳と言えば……」
ふと思いついた。
「?」
と首を傾げるリネットにそのままでいて、と伝えるとあたしは立ち上がってリネットの後ろに周る。そして……
「えい。」
「ひヤアアアアアッ!?」
リネットの耳をつまんでみた。一度触ってみたかったんだよね、エルフの耳。感想としては見た目はとんがっていて硬そうだったけれど、思ったより柔らかい。
「ナ……ナニするデスカーーーッ!?」
「あ、ごめん・・・。」
しまった。思った以上に嫌がられてしまったか?
「本当にゴメン!もしかしてすごい嫌だった?」
「その……イヤというわけでは無いデスケド……。」
心の準備が……と小声で何かを言いながらリネットの顔が真っ赤に染まる。リネットは腕を組み、内股になると、その場でもじもじしだした。腕を組んだおかげでその豊満な胸がさらに強調されているのは黙っておく。
「ア……アノ……」
しばらくもじもじした後、相変わらず真っ赤な顔でリネットが話しかけてきた。
「アナタは……これからどうするんデスカ?」
「いやー実はあたしもどうして良いか分からなくて……」
たはー、と頭をかきながら言うあたし。うん我ながらテキトーだ。そんなあたしに向かって
「だったらワタシの村に来ませんカ?」
リネットがうれしいお誘いの言葉をかけてくれた。
「え……いいの!?」
「ハイ、ワタシは一人暮らしデスので余裕もありマスシ……。」
「やったあ! ありがとうリネット!」
あたしはリネットの手を取りブンブンと振った。
これで夜の森で野宿するという最悪パターンは回避できた。それにエルフの生活がこの目で見れるなんて最高じゃないか!
「こっちの世界に来てよかったー。」
世界が変わっても何とかなるもんだ。順風満帆。順調すぎて怖いくらい。
「それではドウゾこちらニ……。」
そういって村に向かって歩き始めたリネットの横をあたしは歩き続ける。
「本当、リネットに会えてよかったよ。あのままじゃあたしこれからどうして良いか分からなかったからさ。」
「い……いえソンナ……」
またも顔を赤くするリネット。照れ屋なんだろうなー。
「あ、でも……」
一抹の不安があたしを襲う。
「リネットはあたしの事歓迎してくれているけど……村の人たちは大丈夫?」
人種といい、着ているものといい明らかにあたしはこの世界にとっての不審者だ。そんな不安げに見つめるあたしに向かってリネットは
「大丈夫デスヨ。心配しないでくだサイ。だって……」
その名を、口にする。
「アナタは……ソラビト様デスカラ。」
ヒロインその1ようやく登場です。
ここから少しずつ真白の天然ジゴロっぷりが発揮されていく予定です。
ちなみに第2話も後2回続きます。ここらで話の雰囲気がしだいに変わって行く予定です。




