技術階層
ミラの研究所を出る前に研究所内の倉庫に寄った。
中にはミラが作ったガラクタ、もとい研究の成果があるため四一階層の環境について何かヒントがないか探しに来たのだ。
ミラの案内の元、倉庫に入ったが中には様々なものがあった。
予想はしてたが物が多いなぁ。
なんかバズーカ砲みたいな物があるが
「なぁ、ミラ。これはなんだ?武器?」
「ああ、それは我が開発した雲生成機だ。マスターはスキルにより階層の天候を変更できるが、いちいちマスターに頼むわけにもいくまい。曇りがいいなぁと思った時に空に向けて放てば雲が生成されるのだ」
それはすごいのか?
というか階層の天候はランダムにしてあるから、待てばそのうち曇りにもなるのだが。
まぁ、吸血鬼だからな暗いところが好きなのかもしれない。
偏見だが。
「ちなみに雨雲、雷雲にも変更可能だ」
技術力の高い無駄な技術だな。
雨が降らない砂漠でなら一儲けできそうだが。
他にも、どこまでも長く伸びる棒やジェット推進が付いたベルトなど様々な装置があったが
俺が今回目を付け、次の階層に使えそうだと判断したのはこの二つだ。
植物を急速に成長させる薬。ただの木に使うと大きくなりすぎて自重に耐えられず曲がりくねるらしい。
溶岩を投げた箇所に発生させるボール。
ミラが魔法で出した溶岩を丸めて固めたそうだ。投擲武器になると思い作ったらしいが、魔法を直接投げた方が早いと没になった代物らしい。
「この二つをくれ」
「喜んで差し出そう」
「どうも。後でルシフェルの所に持って行ってくれ」
俺は残念ながら物を持てないし収納できるようなスキルもないからな。
誰かに預けるかもって行ってもらうしかない。
【魔力制御】で念力まがいのことはできるが。
ミラに荷物を頼み研究所を後にした。
せっかくこの技術が集まる階層、略して技術階層に来たし
他のところの様子も見てこよう。
と思い至ったタイミングで脳内に知らせが来る。
『熟練度が一定に達しました』
『スキルを獲得します』
『以下の能力スキルを獲得しました。
【高速思考】』
久々にスキルを獲得した気がするな。
【高速思考】か。
確かに、俺は誰かと話すより思考してる時間のほうが長いからな。
今後戦闘やダンジョン作りにこのスキルは役に立つだろう。
試しに使ってみるか。
【高速思考】発動
……使ってみたがわからないな。
思考が速くなるってだけで、頭が良くなるわけでもないしな。
若干雲の動きがさっきよりも遅くなってる気がするが…
何倍なんだ?
『倍率は二倍です』
二倍か。意外と大した事ないな。
『現在は二倍ですが、使用し熟練度が上がれば倍率も自ずと上がっていきます』
なるほど。今後に期待だな。
スキルはいいとして、最初に様子を見に行ったのはアマクニの工房だ。
この工房も最初と比べたら大きくなったな。
初めはアマクニ一人の作業スペースしかなかったが、現在は生産系のスキルやクラスに目覚めた魔物達が集まる総合的な工房となっている。
工房の中へ入ると作業音が響いている。
奥へと進んでいきアマクニ専用の工房へと辿り着いた。
一応ここのリーダーなため、一番広い工房となっている。
工房の中には雑用用のミラ製ゴーレムがそうじをしていた。
「よう、アマクニ」
「あ、旦那。さっきはすみません。俺だけ先に帰っちまって」
「いや、いいんだ。ミラの相手は疲れるしな」
アマクニは真面目だから、ミラの設定を本当に信じかねないし
適当に受け流すぐらいがちょうどいいのだ。
「そうですね。で、何か御用で?」
「いや、せっかく来たし様子でも見ようと思ってな」
話していると、壁に掛けられている一振りの刀が目に入る。
美しい模様の入った鞘が特徴的な刀だ。
そして何故か鎖で繋がれている。
「あの刀は何なんだ?内に使う奴は居なかったと思うが。それに鎖も」
「あれは旦那が以前話してたんで作ってみたんですよ」
ほう。やるな
「ただ、完成して数日したら一人でに動き出しまして、今は鎖で封印中ですぜ」
一人でに動き出すとは
この刀の詳細を鑑定してみよう。
鑑定して、表示されたものは刀の詳細ではなくステータスだった。
——ステータス——
名前:———
種族:妖刀
称号:———
メインクラス:傀儡師
スキル
・刀術 ・念動 ・傀儡術
—————————
ステータス…種族が妖刀って、コイツ魔物になってんじゃねぇか。
「コイツ魔物化してる。だから勝手に動いたんだ。【念動】のスキルもあるしな」
「魔物ですかい⁉︎」
「あぁ。コイツが動き出したのはいつ頃だ?」
何となく魔物になった原因がわかる気がするが
「旦那が外から戻ってきたあたりですぜ」
俺が戻ってきた頃って事はやっぱり
「世界樹が原因だな」
「世界樹ですかい?」
「あぁ。植えたら急成長してダンジョン内の魔力が一気に増えたんだ。その影響でこの刀も魔物になったんだろう。他にも進化してる奴がいたし」
それにしても|《傀儡師》か。
まさに妖刀らしく、持ったら操られるのか?
そもそも敵なのかもわからないが。
「アマクニ、鎖を外してくれ」
「危ないですぜ?」
「大丈夫だ」
アマクニが鎖を外すと、刀が宙に浮く。
すると剣先を雑用ゴーレムの方へと向け、勢いよく飛んでいく。
俺たちが止める暇もなく、刀はゴーレムの元へ行き、握らせる。
おいおい。暴れたりしないだろうな。
ここには戦闘できる奴がいないぞ。
オボロならすぐ来れるだろうが。
警戒する俺たちを前に刀を持ったゴーレムは正座をする。
俺が何かを言う前に正座は土下座の姿勢へと変わっていた。
その向きはアマクニに向かっている。
「アマクニ、戦わずして勝ったのか。やるな」
「いやいや、なんですかいこの状況は」
とりあえず、敵対はしてなさそうだし良かったな。
「アマクニが親みたいなものだし、敬意を持ってるのかもな」
「そうですかね…」
「よし。子供ができた記念に俺が名づけ親となってやろう。マサムネだ。いい名前だろう」
鍛治師の名前ではあるが。まぁ妖刀だし。
「マサムネ。お前は今日からアマクニの護衛だ。自分の親を守れよ」
「護衛ですかい?」
「あぁ。いつお前の腕を悪の組織が狙うかわからないからな」
「何です?悪の組織って」
「ミラに聞け。ついでにミラにマサムネ用の戦闘ゴーレムでも作ってもらえ。雑用ゴーレムのままだとうまく戦えないだろう」
マサムネは立ち上がり、お辞儀をしていた。
名前は気に入ったようだ。
「じゃあ、俺はもういく。他に話す事はあるか?」
「そうですね、特に…いや、一つありやした。最近倉庫の物がいくつかなくなってるんですよ」
「ふむ。倉庫って、あの共有倉庫だろ?誰かが持って行ったんじゃないのか?」
「そうですかねぇ」
「きっとそうだ」
まぁ、物がなくなる程度なら大した問題ない
「そうだ、オリヒメはどうだ?服を作れてるか?」
オリヒメはウォルターの手袋を作るのに使用した蜘蛛の糸を生成した魔物だ。
以前進化してアラクネになっていた。
「ええ。オリヒメは機織り機が気に入ったのか、部屋から出てきてないですぜ。音は聞こえるんで、問題はないと思いますが」
「そうか。よし、じゃあ俺は行く。またな」
次は訓練場を見学に行こう。
そういえば最近フェンを見ていないが、どこにいるのだろうか。




