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大迷宮の創造者  作者: POG
第3章

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幕間 ———魔女———

 ある女性が街道を歩いている。

 薄紫の長い髪を軽くまとめた美しい女性だ。


「研究も行き詰まってきたし、たまには外を歩くのも悪くないわね」


 その女性は周りを眺めながらゆっくりと歩いていき一つの村にたどり着く


「あら?こんな所に街なんてあったかしら」


 女性は不思議そうに眺めている。


「昔は小さい村だった気がするけれど」


 いつまでも眺めているわけにはいかないと、女性は村へと入った。


「私の記憶違いかしら…いいえ、それはないようね」


 と、空を見つめ確信する。


「星の位置も昔とさほど変わってないし。籠ってた期間もせいぜい五十年ぐらい…まぁ、五十年も経てば村も街に成長するわよね」


 女性はまだ明るい空を見て確信したのではなかった。

 それより遥か先、星を見ていたのだ。


「私の魔法がうまく起動してればだけど」


(便利だと思って、〈星で位置を探知する魔法〉を作ったのだけど、実験してないのよね)


(スキルにもなってないし)

 と女性は少し落ち込みながら歩く


 女性がこの街を見つけたのは偶然だが、入った理由はある。


 一つはこれだけの街であれば冒険者ギルドがあるため、情報の確認。


 もう一つは

 ご飯のためだ。


「この串焼き、一本くださいな」


「はいよ!おっ、姉ちゃん綺麗だな。一本サービスしてやる」


「ありがとう」


 と、串を受け取り女性は代金として銅貨を差し出す


 が


「…?姉ちゃん、随分と古い金だな。ここ数十年は見てない、それこそ俺が子供だった時ぐらいだ」


 屋台の店主は珍しそうに女性から受け取った金を見ていた。


「…使えないかしら?」


「いや、一応換金はできる。それしか持ってないなら換金してからの方がいいぞ」


「そうなのね。で、この串焼きは売ってもらえるのかしら」


「あぁいいぞ。珍しいものを見せてもらった記念だ。タダでやるよ」


「あら、気前のいいことね。ありがとう」


 女性は串焼きを手に取り冒険者ギルドへ向けて歩き出した。


「ん〜、美味しいわね。久しぶりのまともな食事だわ」


 女性は串焼きを本当に美味しそうに味わって食べていた。

 ただの屋台の串焼きでこれなのだ。

 これまでの食生活がうかがえる。


「それにしても、この銅貨が古いとはね。もっと世情を知らないと駄目ね。

 世間からの孤立は精神が衰える」


 女性はその後も寄り道をして、冒険者ギルドへと辿り着いた。

 ほとんどの物は買えなかったが、眺めるだけでも十分楽しむことができた。


 冒険者ギルドの中は人で溢れて活気があった。

 特にダンジョンでの採取依頼が多い。


「相変わらずギルドは人が多いわね。……辺境の街にしては多すぎる様な気もするけれど」


 周りを見渡し、その中でも目立っていた二人組に目を向ける。


 金髪の青年と銀髪の老紳士の二人組だ。


 組み合わせが珍しく、二人とも美形だが

 女性が目を向けた理由はまた別にある。


(…魔人ね。天使とおそらくは竜系の魔物。まぁ、大人しくしてるみたいだし手を出すつもりはないけれど)


「不思議な街ね」


 女性はそのままカウンターへと向かった。


「こんにちは。この街は初めてなんだけど。依頼とか街のこととか教えてくれる?」


「そうなんですね。かしこまりました。まずこの街はホルウルカゼ村と言って正式にはまだ街ではありません」


「あら、そうなの?」


 それから受付嬢はこの村の経緯や依頼、ホーセロルス大山脈の麓で大規模な鉱床が見つかったこと、更に道中少し外れた場所にダンジョンが発見された事などを女性に説明した。


「鉱床にダンジョンね…」


(だから麓にあんなに人がいたのね。あの時聞けばよかったわ)


「鉱床もそうですが特にダンジョンが発見されたおかげでこの街が中継地点となり潤っているのです」


「確かにダンジョンに関する依頼が多いわね」


「そうですね。最近、森の階層が発見された事で特に採取系の依頼が多いです」


 ダンジョン内で採取できるものはどれも魔力が豊富で通常のものよりも質が高い。

 その為人気なのだ。


 それに反し、人気が少ないのが調査系の依頼。

 ダンジョン内に生息する魔物の種類や数、ボスの特徴や弱点など

 知ることができれば今後多くの冒険者に役立つ情報の調査をする依頼だが

 単純思考が多い冒険者には時間がかかり、確実性のない依頼は人気がない。

 その為受けるものが少ないのだ。


「通常の依頼よりも報酬は上乗せされてるんですけどね」


 と、愚痴のように受付嬢がこぼす。


「そうなのね……なら私が受けようかしら。その依頼」


「ちょうどお金もないし」と受付嬢に提案する。


「受けてくださるのは嬉しいのですが、失礼ですが冒険者証はお持ちですか?」


 見た目はどう見ても冒険者には見えない女性だ。ダンジョン内での荒事に対処できるように見えない。

 受付嬢が疑問に思い確認するのは当然だった。


「あぁ、そうよね。…えぇと確か鞄の奥に」


 女性は持っていた鞄を漁っていた。

 物を溢しながら。


 中が見た目よりも大きいのか、紙の束や見たことのない道具など、様々なものが出てくる。


「あ!あったわ」


 数分後やっと冒険者証を発見した女性は受付嬢に手渡す。

 女性の周りは鞄から飛び出た荷物で散らかっていた。


 受付嬢が渡された冒険者証は薄汚れており、とても古そうに見えた。


 そして何より、冒険者にとって大事な等級が渡された冒険者証には記載されていなかった。


 本来等級が書かれている場所には謎の紋章の様なものが描かれている。


 冒険者証は魔道具で作られ、特有の魔力が含まれており複製や偽造は不可能な代物だ。


 慌てて確認するが、等級以外におかしな所はなく偽造でない事が分かる。


「それで、依頼は受けられるかしら」


「えっと、はい。確認なんですが貴女様の等級は何でしょうか?」


「等級?そんなものもあったわね。確か一番上だった気がするけど」


「一番上…特級⁉︎」


 冒険者ギルドにおいて一番上の等級は特級。

 しかし、特級は全員で十六人

 その下の特一級ですら世界で数十人しか居ない。


 普通に生活をしていたらまず会わない人間だ。


「えぇ、少々お待ちください。確認してまいります」


 受付嬢は冒険者証を持って裏へと小走りで向かっていった。


 受付嬢が向かったのはギルドマスターの所だった。

 扉の前に着くとノックし、


「入れ」


 部屋へと入る。


「何だ?忙しいんだ早くしてくれ」


 ギルドマスターの席に居たのは厳つい男だ。

 先ほど言った言葉通り、机には書類の山があり本当に忙しい様子だ。

 本来なら受付嬢も行きたくはなかった。

 しかし、道中に質問した先輩達が全員この冒険者証について知らなかったため仕方なく、顔の怖い上司の元に来たのだ。


 …顔が怖いだけなのだが


「あの、特級冒険者の方がいらっしゃっているのですが」


「等級?どうせ見栄を張ったバカだろう。適当にあしらえ」


「ですが、受け取った冒険者証は本物の様で」


 ギルドマスターへ冒険者証を渡す


「———!」


 ギルドマスターは机の引き出しから一つのファイルを取り出し、中を見る


 と、納得した様に返事を返した。


「こいつは本物だ」


「やっぱり本物なんですか」


「あぁ、等級が載ってないのも正しい。俺も初めて見たけどな」


 特級冒険者は唯一無二の存在。

 他の冒険者とは訳が違う。


 その為、特級冒険者の冒険者証には等級の代わりにそれぞれを模した紋章が刻まれている。


 今回渡された冒険者証に刻まれていたのは杖とフラスコの紋章


 その事を知っていたギルドマスターは就任して以来一度も開かなかった特級に関するファイルを開いて確認したのだ。


「これに刻まれた紋章の持ち主は

 特級冒険者〈魔女〉」




 その頃


「早く戻ってこないかしら」


 件の〈魔女〉は冒険者ギルドに併設された食堂でお茶を飲んでいた。

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