小悪魔
ん、世界樹はどうなった?
『ルシフェルにより無事回収されました』
それは良かった。
まさかあそこまで成長するとは。
完全な予想外だ。
で、ここはどこだ?
建物の中だと思うが…神殿?教会?
ルシフェルが運んでくれたのだろうか。
ていうか、今のロボットボディに慣れて忘れていたけど俺の本体はどこにあるんだ?
まさか、世界樹に飲み込まれたんじゃないだろうな。
『マスターが不在中はミカエルが強制労働で建設させた神殿の中にありました。現在も神殿の中にあります』
そういえば、前にミカエルがなんか作らせてたな。
あれの中か。
…ここも、神殿だよな。
改めて自分の身体を確認してみる。
俺、本体に戻ってんじゃん!
え、何でだ?まさかあの丹精込めて作ったロボットボディが壊れたのか?
『いえ、マスターが新たな階層を作製する際に全ての魔力を消費したため【憑依】を維持する事が出来なくなりました。その為マスターの身体とのリンクが切れ本体に戻ってきたのです』
ならよかったが。
そして今気づいたがアヴァロンいるじゃん。
まぁ俺の護衛として作ったから本体を護ってたんだろうけど
『アヴァロンだけでなくこの神殿には幾重にも魔法が掛けられており、神殿の建材も現在ダンジョン内で扱える最も丈夫な物が使用されています。
この神殿はダンジョン内で最も安全な場所になっております』
確かに魔法がかかってる。
多分ルシフェルがかけたんだろう。
でも、あれこれ説明されてもすごい事は分かるが実感は湧かないな。
『神殿の外へ出れば神殿の護りの強度がいかほどか実感できるでしょう』
そう?
なら出るか。
俺は乗っていた台座の様な場所から扉へと向かった。
コアで移動するのも久しぶりだな。やっぱり楽だな。
そういえばこの神殿って元々三三階層に建ってたよな。
階層を追加した今は五二階層。
……なんだか、意味がわかった気がするぞ。
扉を開け、外を見ると
そこには大きく抉れた地面と建物の残骸が転がっていた。
マジか。
…確かにこの有様を見ると俺がいた神殿がどれだけ丈夫だったかは分かる。
世界樹の被害がこれほどになるとは。
初めから新しく階層を作ってればよかったな。
いやそれよりもこの階層にいた住人の魔物達は?
この階層にいるのは高位や知性が高い個体が大半だからな
そう大きな被害はないと思うが。
『住人はルシフェルの指示のもとオボロやシュラなどが避難させた為被害はありません』
デメテルも無事か?
デメテルは初めてダンジョンに侵入者が現れた時に侵入者の一人を倒したスライムだ。
ご褒美にあの時名前をつけたんだが。
アイツは知性も何もないただのスライムだからな。
『無事です。現在はこの神殿内に居ます』
無事なのはいいが、ここに居たのか。
気づかなかった。
もう一度神殿内を見るがぱっと見はどこにもデメテルの姿は見えない。
普通に見ても居ない。
ということは残るは上だ!
と、上を見ると神殿の天井に大量にスライムが張り付いていた。
うぇ!?
なにあれ?
何であんなにスライムが居るんだ?
軽くトラウマになりそうな絵面だ。
この階層にいるスライムはデメテルだけだったはずだが。
デメテルが定番の「仲間を呼ぶ」を使ったのか?
「デメテルー!」
デメテルを呼ぶと天井に張り付いていたスライムが一斉に飛びかかってきた。
何でぇ?!
俺の身体全体にスライムが張り付いている。
演算機、デメテルはどれだ?
『目の前におります』
目の前一面がスライムだらけでわからないから聞いてるんだよ!
『目の前にいるスライム全てがデメテルです』
え?
確認のため鑑定をすると、どのスライムも名前がデメテルになっている。
マジか。本当だ。
これはなんだ?分身?
『マスター、デメテルはもはや低位のスライムではありません。現在は高位のワーカースライムへと進化しております』
いつの間に
『デメテルはこの階層で出たゴミ掃除をしており、住民からの人気度は高いです』
確かに、いつも見かけてたけど。
俺よりも働いてるだろ。
だからワーカーなのか。
コイツそんな戦闘とかしてないよな?それなのにまさかいきなり高位に進化するなんて。
『いえ、デメテルは以前一度進化しております。中位のクリーンスライムへと。スライムは元々進化しやすい種族です。このダンジョンは魔力で溢れておりますので空中に漂う魔力を吸収して進化したのです』
スライムって進化しやすかったのか。
にしても凄いが。
『ちなみにデメテルがワーカースライムへと進化を果たしたのはつい先程です。世界樹が存在したことにより一時的に魔力が異常に溢れた事が原因です』
あの世界樹、俺から魔力を取るだけじゃなくて増やしてたのか。
まさに木だな。酸素の循環の如く魔力の循環。
『溢れた魔力はダンジョン全体に行き渡りました。その為一部の魔物がデメテルの様に進化を果たしております』
デメテルの他にもか。
ていうか、ダンジョン全体ってどんだけ魔力が溢れたんだ?
演算機と話し込んでいるとルシフェルが瓦礫を避け歩いてきた。
「主様、目が覚めましたか。ご無事で何よりでございます。
早速ですがご報告が」
報告か…
ルシフェルの足元には見た事ない三体の魔物がいる…
このことから予測できる報告は一つ。
「わかってる。魔物の進化の件だよな?」
「いえ」
いえ?
あれ?予想が外れたぞ
「進化の件もなのですが、本題は別でして」
と、ルシフェルは後ろの魔物を前に出す。
その三体の魔物は緊張した様な面持ちだ。
「この三体はこのダンジョンで生まれた悪魔で御座います」
「悪魔?俺はルシフェルしか召喚してないよな?」
自然発生か?
確かに今までも魔物は生まれてたけど。
「はい。どうやらこの者達は先程私が展開した〈暗黒領域〉が原因で発生した様です」
〈暗黒領域〉なんてこれまでも使ってた気がするが。
『おそらく積み重ねでしょう。これまでルシフェルが使ってきた〈暗黒領域〉により少しづつ条件が整えられていき、今回の完全展開で悪魔が生まれたのだと思われます』
なるほど、積み重ね。
まぁ悪魔が生まれても困る事はないからいいけどな。
戦力が増えるし。
それにこの悪魔達をよく見るとかわいい……
気がしなくもない。
うん。敵対もしてないし。
「そうだなぁ。新たに初めて生まれた悪魔としてお前たちに名前をやろう。ラプラス、ソロモン、マクスウェルだ。これからよろしくな」
猿がソロモン。
虫っぽいのがラプラス。
そして黒いモヤがマクスウェルだ。
俺の言った意味がわかったのか、三体はお辞儀をしていた。
ソロモン以外わからないが、多分しているはず。
「さて、他の確認といきたいところだが、まずは新しく作った階層に世界樹を植えに行くか」
いつまでもルシフェルが収納してるのは大変だろうしな。
「かしこまりました」
「いくぞ」




