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大迷宮の創造者  作者: POG
第3章

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エンシェント・トレント

《豊樹の深林》へ向かう為、外へ出る門へと着くとつい先ほどまで開いていた門は固く閉ざされており、向こう側からは魔物と対峙する音が聞こえていた。


 やっぱ閉じられてるか。


「ミカエル」


「ハッ」


 俺の一言と同時に外壁へと飛び乗った。


 そして見えたのは残った冒険者と騎士達が溢れる魔物を相手に前線を死守する光景だった。


 今の所はなんとか奮闘してるけど、時間の問題だな。


 まぁ強い奴が全員依頼に行った訳じゃないし、表情を見るに不測の事態に少し焦っているだけで実力事態は問題なさそうか。


 日頃から訓練してる冒険者と騎士達だからな。不測の事態に慣れては居なくても対処の方法は知っているのだろう。


 新人達が不安だが。


 いや、今はそんなことよりエンシェント・トレントだ。


「行くぞ。コイツらも心配だが、俺たちが早くボスを倒せば良いだけだ。

 ミカエル、ウォルター。ボスの元まで魔物の群れを突っ切るぞ。邪魔な魔物はぶっ飛ばせ」


「ハッ」


 俺は二人の返事を聞き鞄の中へ深く入った。飛ばないように。


 ミカエル、ウォルターが同時に門の上から前へ進む。

 踏み込む力が強いせいか足場が少し崩れている。

 二人にしたらかなりセーブしているのだが。

 俺が鞄に入っているのも影響している。


 二人はその一歩で魔物との前線を飛び越え奥へと着地し


 ミカエルが戦棍を一度振るう。


 その動作一つで前方にいた大半の魔物は吹き飛び、小さな魔物は形すら残らず消滅する。


「ウォルター、大型を倒せ」


「承知」


 ウォルターが踏み込み拳を出す。

 それだけで魔物は宙へと舞う。


 うわぁ。相変わらずだな、この二人は。

 鞄から覗く景色は二人の周囲だけ、魔物が一掃されていく光景だ。


 でも、襲ってくる魔物は減らないな。


 魔物達はエンシェント・トレントの花粉で興奮状態にある。

 普段ならば自分たちよりも格上の相手にこうも迫ることはない。

 魔物も生物。強い相手とは基本的に戦わないのだ。



 二人は押し寄せる魔物の中、速度を落とすことなくどんどんと奥へと進んでいった。


 奥に行くと大型の魔物が何かを守るように固まっている。

 魔物の中には最高位のエルダー・トレントも数体いる。


 この先がボスっぽいが。


 このトレントって最高位なんだよな。ミカエル達で突破できるのか?


 トレントは防御というよりHPが単純にバカ多いタイプだからな。


「ミカエル、ここなら本気でやっても問題ない。倒せるか?」


「お任せを。ウォルター、アヴィリル様を」


 ミカエルは鞄をウォルターに託した。

 現段階、俺のダンジョンで最も攻撃力、というより破壊力があるのがミカエルだからな。

 コイツで倒せなきゃ何か考えなきゃだが


「アヴィリル様の御前で恥をかくわけにはいくまい。〈金剛力〉〈破壊効率〉……〈聖域纏装〉」


 スキルを次々と発動させていく。

 一瞬光で視界が覆われ、次の瞬間にはミカエルはまさしく天使に相応しい姿をしていた。


「〈滅葬〉」


 ミカエルが戦棍を振るう。

 エルダー・トレントに当たり一瞬止まるが、当たった箇所からトレントの身体にヒビが入っていく。

 ミカエルはそのまま戦棍を振り抜き、数体のエルダー・トレントと周囲の魔物を一撃で一掃した


 おぉ…同じ最高位でも関係なしか。

 まさか一撃とは。

 本来なら倒すのが面倒なタイプの敵を力でゴリ押したな。

 まさしく脳筋。


 天使なのに。


 それにしてもミカエルがちゃんと?戦ってるのを見るのは二度目、いやアヴァロンの実験を含めると三度目だが前回は使わなかったスキルを使ってたな。

〈金剛力〉とか他にも色々。


 ルシフェルの時は本気じゃなかったのか?


『いえ、ミカエルは以前マスターの力によりメインクラス《大神官》が《枢機卿》へと昇格しました。クラスの昇格に伴い既存のスキルの進化、および新たなスキルの獲得をしたのでしょう』


 あぁ。そういえばあったな。

【眷属強化】のスキルをあれ以来使っていないからすっかり忘れていた。


 流石に素の力だけじゃ最高位は倒せないよな。


「よし行くぞ。ボスは目の前だ」



 倒したトレントを避けて進むと開けた空間へ出た。

 そしてその中央には、見上げるほどに巨大な大木。エンシェント・トレントが聳え立っている。


 エンシェント・トレントの周囲一体は草も生えておらず

 根は脈打ち、大地から力を吸い取っているようだった。


 その巨木のどこにも総騎士団長と対峙した痕跡は残っていない。


「傷一つない…つまり完全復活しているわけか」


 でも、なんかおかしくないか?

 なんであんなに脈うってるんだよ。魔物とはいえ植物だろ?

 なんか赤黒いし


 冒険者ギルドにあった情報では見た目はまんまでっかい木だったらずだけど。


『倒された数時間後に完全復活している事を見るに、何者かの干渉があったことは確実です』


 だよなぁ。見た目も普通じゃないし


 と、呑気に思っているとミカエルとウォルターが後ろへと飛んだ。


 次の瞬間、先ほどいた場所には巨大な枝が鞭のようにしなり打ち付けられ、地面が抉れていた。


 へ?


 マジか。ミカエル達がいなきゃ一発アウトだったな。

 演算機は反応できたか?


『いえ、マスターの反応速度、知覚速度を超えた攻撃のため私では反応は不可能です』


 うそん…俺だって最高位、位階でいえばミカエル達と同等なのに。


 と、考える間にも次々と枝の鞭が飛ぶ。

 ミカエル達は全てを避けて移動している。


 ウォルターが俺が入っている鞄を持っている為か、ミカエルが前に出て避けきれないものを戦棍で弾いている。


 しかし、いつものように軽々しく弾かれず枝にも少し傷がついた程度だった。


 ヤバいな、完全に俺が足を引っ張ってる。

 今は保っているがミカエルいつまで避けられるかわからないからな。


「ウォルター。俺を置いて、ミカエルの元に向かへ」


「しかし」


「いいから行け、命令だ。俺は大丈夫だ。魔法だって使えるしな。援護は任せとけ」


 それに万が一でも俺はダンジョンに戻されるだけで死なないし


 伝えると、ウォルターは一瞬の思考の元納得し、ミカエルの元へと駆け寄った。


 さて、俺でもできる事を考えようか。

 ミカエルとウォルターが現在奮闘しているが、正直ダメージが入ってるか謎だな。


 枝が邪魔して本体まで近づけていないのも大きい。


 …よし、やれる事を見つけたぞ。


 その時、枝の猛襲を受けていたミカエルの背後にもう一本、攻撃が飛ぶ。


 ミカエルは気づいていない。

 が、俺は気づいた。


「ミカエル!」


 声をかけると同時にミカエルの背に土の壁を生成する。

 これまでダンジョン作り以外でほとんど出番のなかった俺の【大地魔法】だ。


 枝は壁にぶつかり一瞬抵抗するがすぐに砕かれる。


 しかし、その一瞬さえあれば十分


「感謝致します!アヴィリル様」


 ミカエルが枝を弾き返す。


「よし!なんとか間に合ったな」


 だが俺ですら認識できた枝をミカエルが見落とした。

 余裕がなくなっている証拠だ。


 その隙間は俺が埋めよう。


「ミカエル、ウォルター。援護は任せとけ。俺なんか気にせずあのエンシェント・トレントをぶっ倒せ!」


「「ハッ!」」


 さて、行くぞ演算機。

 俺たち二人で全力で【大地魔法】を使う。

 まぁ、自分のダンジョンほど自由には使えないし抵抗も大きいが


 それでも、俺の魔力は結構多いからな。援護ぐらい余裕だ。


 演算機は二人の足場を作ってくれて。

 俺は壁を作る。


『了解しました。マイマスター』


 まず俺は自分の周りにシェルターを使った。

 俺がやられちゃ援護なんてできないしな。


 ウォルターが迫り来る枝をよけ演算機が作り出した足場を登り、エンシェント・トレント本体へ迫る。


 ウォルターから溢れる【竜霊覇気】が白銀の竜の姿を模る。

「——〈竜聖覇道・白銀竜〉」


 ドゴォーン!!!


 巨木が揺れ、拳が当たった箇所には大きく凹みができている。



 その一撃は以前ウォルターがミノタウロスへと放った〈竜聖拳〉を遥かに超える物だ。


 ウォルターは普段は物腰柔らかな老紳士だが、その実ダンジョン内でミカエルに並ぶ肉体派の魔物だ。


 ウォルターは【肉体錬成】【魔躯】などの常時発動型のスキルにより戦闘に特化した身体となっている。


 伊達にミカエルの制御役には選ばれていないのだ。


 だが、そのウォルターによる大きな凹みもエンシェント・トレントにとってみれば浅い物だ。


 証拠に凹みは徐々に再生していき、枝は攻撃を続けている


 ウォルターが後方へと戻ろうと移動するが逃すまいと枝が迫る。

 ウォルターは身を翻し、ミカエルが間に入り枝を弾く。


 着地した瞬間に俺はウォルターを囲むように壁を作る。

 槍のように迫る枝を一瞬止め、逃げる時間を作った。


 それによりウォルターは難を逃れた


「——ハァハァ。クソ、頭が痛いな」


 呼吸も必要なく、痛みを感じる頭も無いはずなのに、息苦しくなり頭痛が思考を鈍らせる。


 初めてのちゃんとした戦闘で集中しているせいだろう。

 なんとかなれないとな。


 その後もミカエルが本体へダメージを与へ俺とウォルターが援護をこなし——の様に各々のタイミングで自身の攻撃を本体へと向けていた。


 まさしくヒットアンドアウェイだ。


 と、ふいに演算機からの警告が響く


『警告。エンシェント・トレントの枝の一部に異常な魔力の高まりを感知しました』


 周りを見ると数本の枝の束が数個あり、その先端には魔力が集中している。


 おいおい。ありゃなんだ?


『魔力砲です』


 魔力砲だと?

 つまり遠距離攻撃って事だよな。


 その枝の束それぞれが俺たち人一人に狙いを定めている。


 戦ってる二人だけでなく俺にもだ。


 マジかよ。


 そうこうしているうちにエンシェント・トレントの枝から魔力砲が飛んでくる。


 ウォルターは迫る魔力砲を避け

 ミカエルは防ごうと、戦棍を構えるが

「—くっ!破壊しきれない!仕方ない!」


 相殺できず、横へと流した。


「マジかよ⁉︎ミカエルでも止められないのか」


『エンシェント・トレントは伝説級の魔物です。耐久値が高く攻撃力には劣りますが、最低でも最高位以上の攻撃力はあります』


 劣っているうえで最低が最高位…ヤバいな。


 って、ヤバいこっちにも来るぞ!


 仕方ない、こうなりゃ力技だ。


 俺は迫り来る魔力砲を防ぐ為、何重にも分厚い土の壁を生成した。


 止まってくれよ。


 しかし、願いとは裏腹に魔力砲は壁を突き破って進み続けている。

 速度は徐々に落ちているが、貫通するかは一か八かの賭けとなる。


 そして、無慈悲にも魔力砲は貫通した。


「アヴィリル様!」


 ミカエルとウォルターがすぐ様駆け寄ろうと近づく


 が、その前に


「…俺は無事だ」


 二人の耳に主の声が聞こえてくる。


 その声は主がいた場所に掘られた深い穴の中から聞こえてきた。



 あと一歩穴を掘る判断が遅かったら危なかったな。


 だがなんとか防ぎ切った。


 そんな安心も束の間

 エンシェント・トレントの枝の束同士がくっつき更に束となり、その枝先に先程とは比較にならないほどに魔力が収縮されていく


「って!おいおい!ヤバいぞ。明らかにさっきのより強いのがくる」

 あんなのミカエルでも流すこともできないんじゃないか


「ウォルター!アヴィリル様をお守りしろ。私が止める」


「アヴィリル様!私の後ろへ」


 そう言い、二人は俺の前に出た


 演算機さん!なんかいい方法はないのか!?


『この場にアヴァロンを呼ぶ事を推奨します。彼ならばエンシェント・トレントの放ついかなる攻撃も防ぎ切ることが可能です』


 そりゃアイツは防御特化だからな!

 でも今はいないだろ!ここは俺のダンジョンじゃないんだ。


『マスターのスキル【眷属支配・眷属召喚】にて呼び出すことが可能です』


 え?


『このスキルは新たな魔物を召喚するだけでなく既存の魔物をマスターの元に呼び出すことも可能です』


 超大事な情報じゃん!もっと早く教えてくれよ。


 いや、今はそんなことより


「来い、アヴァロン!【眷属支配・眷属召喚】」


 俺の目の前に現れた魔法陣から我らが守護者が出現する。


「アヴァロン。早速で悪いがあの魔力砲を防いでくれ」


 アヴァロンは何も言わずに前へと進んでいった。


「二人とも、アヴァロンの後ろに来い!」


「「ハッ!」」


 二人が俺の元へ辿り着いた瞬間。


 エンシェント・トレントから魔力砲が放たれる。


 その魔力砲の光は俺たちを包むかの如く巨大だった。

 視界は潰れ、死を待つばかりに思える


 ——しかし


「【守護者ノ誓イ】」


 視界が元に戻るとそこには無傷のアヴァロンとその周りの抉れた地形だけだった。


 あの魔力砲を我らが守護者、アヴァロンが防ぎ切ったのだ。


「流石アヴァロン!防いでくれると思ったぜ」


 それにしてもアヴァロンがいなかったら不味かったな。

 地面どころか周りの木々も抉れてるぞ


「よし、これから巻き返しだ。どんどん攻めるぞ」


 と、意気込んだが


 ——数十分後


 アヴァロンが来たことにより安定して攻撃、防御をこなせる様になったが、与えたダメージもエンシェント・トレントは時間をかけて回復してしまう。

 今の俺たちには単純に回復を超える突破力がなかった。


 クソ、決定打が足りない。

 いっそのことルシフェルも召喚して魔法で燃やしてもらうか?


 いやダメだ。

 ただでさえ守りの要のアヴァロンがここに居るんだ。

 ルシフェルまで呼んだらダンジョンの守りが薄くなる。


 ルシフェルのいない間にダンジョンが攻略されちゃあもともこもない。


『マスター。解析が終了しました』


 解析?


『エンシェント・トレントの魔力源です。エンシェント・トレントは大地から根を通じて魔力を回復しています。

 その為、自身の回復や魔力砲を何度も放てているのです』


 大地から魔力を…


 なら、俺が全部貰っちまおう。

 どうよ。この考え


『可能です。ですが、この土地はダンジョン。支配権は彼方側にあります。ですので吸い出す事はできますが全部ではなくごく少量に留まります。そしてあくまでも回復を妨害する程度で完全に阻止する事はできません』


 それで十分だ。


【大地魔法】で俺の身体と地面を繋げた。

 繋げた箇所を【迷宮支配】で強引に俺の領域として設定、そのまま【魔力制御】により近場から魔力を吸い出すことに成功した。


 支配権があっちにあるなら一時的にでも強引に奪う。


 これで全部とは行かなくても、ごく少量ではなく吸い取ることができる。


 俺はダンジョンマスター、アイツはボスと違いはあるが

 同じダンジョンの主として勝負しようじゃ無いか。


『魔力吸収に成功。現在の支配権の割合は九対一です』


 九対一?

 なら一割も勝ってるってことだろ。上等だ。


 人知れず続いた攻防により

 変化は戦っているミカエル達も築くほどになっていた。


 エンシェント・トレントの傷の再生速度が目に見えてわかるほどに落ち始めている。


 だが、いくら再生速度が落ちたとはいえ相手は巨大。

 小さな虫が人間に戦いを挑む様なものだ。


 時間を掛ければ倒せる可能性が見えたとはいえ、結局決め手となる技は欠けたままだ。


 クソ、せっかく光明が見えてきたのに


「俺が手伝おう」


 え?


 そこにいたのはライル。

 特一級冒険者〈凡夫〉ライル=バーナーだった。


「アンタらは天竜のミカとルターだろう?話は聞いている。そこの騎士様と丸っこいのは知らないが」


 ライルは依頼に行かなかったのか

 って

 丸っこいって俺のことか?

 ていうか完全に俺認識されちゃってるよね?

 特一級がどれくらいか正直わからないがこれだけ近くにいたら俺たちが魔物だってバレるじゃ無いか?


「…貴様、何をしにきた」


 ミカエルはエンシェント・トレントと戦いながらもライルを警戒する。


 アヴァロンも俺を守る様にライルとの間に移動していた。


「そんなに警戒しないでくれ。同じ冒険者だろう?」


 警戒するなって言われてもな。


「手伝ってくれるのか?」


 俺が声をかけるとライルは驚いた様に少し後ろへ後ずさった。


「うわ!玉が喋った。気配からわかっちゃいたがやっぱりアンタら…

 いや、今はそんな事はいいか。

 そう。さっきも言った様に俺は手伝いに来たんだ。あのエンシェント・トレントの討伐をな」


 本当に大丈夫なんだろうな?

 俺たちのことを気にしないのは有難いが…

 いや、非常時だからってだけかもな。

 エンシェント・トレントを倒したら一悶着あるかもしれない。


 それにしても依頼に行っていないこいつがこっちに来たって事は、森から出てた魔物は倒してきたって事だよな。


「まぁ信頼はしなくていいさ。だが、冒険者として仕事はキッチリやらせてもらう」


 仕方ない…今は緊急事態だ。


「ミカエル、ウォルター。コイツと一緒に戦ってくれ。ただし信用はするな、警戒しとけ」


「ハッ」


「ちょ、本人を前にそれは酷くないか?そして、やっぱ名前は偽名か」


 ライルは頭を掻き困った様な仕草をする。

 なんだコイツ?

 強者感がまるでない。


「行くか。ミカとルターは道を作ってくれ」


「何?」


「ミカエル、ウォルター。指示に従ってやれ」


 正直生まれた年齢でいうなら俺はみんな一歳未満の赤ちゃんだからな。

 冒険者として長年活躍してきたコイツの方が指揮には適してる。


「かしこまりました」


 ウォルターとミカエルは迫る枝を弾きライルが通る道を作る。


「アヴィリル様の寛大な御心に感謝するとこだな」


「あぁどうも。サンキュー」


 ライルは鞘に納まる剣へと手を伸ばし構えその状態で前へと進んでいく。


「さて、アンタらが弱らせてくれたおかげで俺も楽を出来そうだ」


 ライルは剣を抜いた。

 それはどこでも売られている様な量産型の剣だ。


 その剣を構え、横に一閃が走る。

 それに続いて突き、薙ぎの動作がまるで舞いの様に正確に同じ箇所に繰り出される。


 その動作からは無駄が省かれていた。

 正確に同じ動き、同じ角度、同じ速度の動作一つ一つの練度が高くまるで剣舞の様に他者を魅せる。


 それは、どこまでも基礎を磨き、毎日鍛錬を怠らず続けた結果の境地だった。


 初めに小さな亀裂ができた。


 それは徐々に広がっていった。

 広がりに連れエンシェント・トレントからの妨害も激しくなる。

 しかし、ライルは一瞬たりとも止まらない。


 会ったばかりのミカエルとウォルターが止めると信じているから。


 そして、とうとうエンシェント・トレントの回復力を超え幹に一気に亀裂が広がる。


 決して力が強かったわけではない。単純な腕力で言えばミカエルにも劣るだろう。


 しかし、技が、経験が、修練がそれを成した。


 エンシェント・トレントの両断という偉業を成したのだ。


 俺は最後の瞬間まで思わず見入ってしまった。

 この世界で初めて見る剣の頂、それに近い男の戦いを


「ふぅ。なんとか倒せたな」


 こうしてエンシェント・トレントは無事討伐された。


「じゃ、俺の仕事はここまでだな。機会があればまた会おう」


 と、それだけ俺たちに告げ去っていった。

 …一悶着はなかったな。

 不思議なやつだったな。


 ていうか、あれで特級じゃないのか。

 帰ったらダンジョンの強化しないとダメだな。近くに特級いるらしいし。



 その為にもこのエンシェント・トレントを持って帰ろう。

 伝説級の木材だ。色々と使い道があるはず。


 よし、素材採取だ!


 エンシェント・トレントの切り株に近づくと、その中央に何やら出っ張りがあるのを発見する。


 ん?なんだろうか


 更に近づくと切り株の中央にあったのは木の苗だった。


 苗…まさか実はコイツが本体でしたとか言わないよな?


 念の為アヴァロンを呼んでその後ろから鑑定をしてみる。


 —————————

 名称:世界樹の苗

 等級:伝説級《レジェンド》

 説明:エンシェント・トレントから生まれた苗。うまく育てれば世界樹となる。

 —————————


 おおぅ。

 マジか

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