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大迷宮の創造者  作者: POG
第3章

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策謀

 騎士団が門を出て、ダンジョンのボスの元へと向かっていった。


 監視がついてるとなると迂闊な行動はできないよな……

 結構遠くかららしいから会話は聞かれないだろうけど

 別に敵対するつもりはないけども。


 一国の騎士にあれだけ強い覚醒者がいるんだよな。

 なら、世界を股に掛ける冒険者のトップはどれぐらい強いのだろうか。


 ミカエルとウォルターが強いと認めたライルが特一級だったからな。

 最低でもそれ以上だろ?


 調べた方が良さそうだな。この国のこととか、他のこと、ダンジョンとかも。


 …正直、祭りが始まるまでの二日間はほぼ観光だったからな。

 この王都の簡単な地理はわかったがそれだけだ


「ミカエル達は特級についてなんか知ってる事はあるか?」


「私が知っているのは冒険者であれば誰でも知ることができる情報のみで御座います。詳細を確認する事は出来ませんでした」


 特級って言うぐらいだからな、機密も多いのかもしれない。


「それでもいいから、教えてくれ」


「かしこまりました」


 ミカエルから特級についての情報が語られた。

 特級冒険者は十六人おり、その全員が本名不明で二つ名のみが公開されているという。


 そして、特級の面々は長年変わっていないらしい。

 最も新しい特級冒険者でも、特級になったのは七十年程前のようだ。


 つまり、全員覚醒者って事だよな…


「現在活動が確認されている特級は〈不死〉〈桜花〉〈大賢者〉の三名で、その他十三名は所在も生死も不明のようです」


 不明って。

 本当は死んでて、権威の為に生きている事にしている、という噂が冒険者の間では広がっているらしいが


 覚醒者なんて存在を知らなきゃ、俺もそう思っただろう。


 覚醒者と言う存在自体は一般はともかく、冒険者など戦う者達の間では知られている事だ。

 しかし、人類の進化先で強いと言われても見たことがなければ実感は湧かないだろう。

 だから特級が実はいないなんて噂が広がるんだ


「強さとかの噂はないのか?」


「強さ直結するかは分かりませんが、噂はございます」


 ミカエルから様々な噂が語られる


『神話の時代から生きている』『殺しても死なない』『目の前にあった山が消えた』『年老いた老人』『スケルトンだった』『神父様だった』『酒場で酔い潰れてた』


 などなど

 これは確かに分からない。

 分からないことが増えただけだな。


「アヴィリル様、私からも噂に関して報告が」


 ウォルターが何かを思い出したかのように告げた


「ホーセロルス大山脈には魔女が住んでいる。と言う噂があるのです」


 あのでっかい山に魔女か。まぁ、山とかは昔から神格化されたり、恐れられたりするからなそう言う噂が広がっても不思議じゃない。


「それがどうかしたのか?」


「いえ、王都に来るまでの道中ヒュー殿と話していた中でこの話がでてきまして。ヒュー殿によれば、この山の魔女とは特級冒険者の〈魔女〉の可能性があるそうです」


「マジか!」


 そんな近くに特級がいたのか。

 だが、今のところダンジョンにそんな強い奴は来ていないから存在はバレていないのか?

 運が良かったな。


 いや、近くにそんなのが住んでるかもなんて全然良くはないな


「その噂、貴様は確認は取ったのか?あの小僧は随分とおしゃべりだったからな」


「いえ、事実確認はまだで御座います。確かに彼は、そういった噂話が好きなようで他にも語ってくれましたが、少なくとも彼が嘘を言ったとは思えません」


 まぁ、ミカエルが疑う気持ちもわかる。いきなり近くにバケモンがいますよなんて言われたら疑いたくもなる。


 ヒューが嘘を言っていなくても元の噂が嘘の可能性もあるが、

 正直、噂だと断定して簡単に切る事は出来ないな。


 そこら辺も調査していくか…



 ——————



 総騎士団長ローラン率いる第一騎士団の面々は現在森の中を

 否、ダンジョン《豊樹の深林》の中を進行していた。


 侵入してからまださほど時間は経っておらずダンジョンもまだ普通の森と変わらない静かさを誇っていた。


 いや現在はダンジョンの魔物の殆どが外へと出ているためさらに静かだ。


 王都からの道中に隊列を変更したのか、ローランは現在は最前列におり、道を切り開いている。


 騎士達は慣れているようで森の中をスムーズに進んでいた。


 そんな中ローランは任務中だというのに、珍しく考え込んでいた。


(先程の魔物…魔人三人がジェイクが言っていた者達だろう。一応監視はつけたが…)


 ローランの心の内にはなんとも言えない不安感が広がっていた。


 ジェイクの話によれば王都にいる魔人は四人との事だ。


 ローランが直接見た二人の魔人は少なくともこちらに対し敵対の意思は見受けられなかった。

 もう一人は姿こそ見えなかったが、気配からして近くにいたのは間違いない



 問題は最後の一人に関してだ。

 ローランが王都を見た限り、発見できなかった。

 しかし、ジェイクの勘とライアーの情報によるものなので、魔人がいだという事実は間違いない。


 ローランにも感知できないほどの強者か、すでに王都からの出ているのか、祭りの最中に起こる問題と関係があるのか…


 思考を巡らせても確証は得られない。

 しかしス、これまでの経験で培われた勘が、無関係ではないと判断している。



 考えに浸りながらも騎士団は順調に進んでいき、ボスの前まで辿り着いた。


「総員、戦闘準備!」


 ローランは思考を即座に切り替え指示を出す。

 眼前に聳え立つ巨木、エンシェント・トレントとの戦闘だ。


 相手が弱っていても伝説級は伝説級。

 決してなめてかかっていい相手ではないのだ。


「大盾構え!」


 最前列にいる者達がそれぞれ盾を構える。


 そこへ枝がまるで鞭のようにしなり、騎士達へと伸びる。


 バァシン!


 と盾と当たり大きな音が鳴る。

 耐え切れず後ろへと転ぶものがいるが、他は少し後退したのみで耐えた。


 枝が一瞬停止した。

 そこへ他のもの達が攻撃を仕掛け、枝を押さえ付ける。


 そのような行為が数度行われた後。

 エンシェント・トレントが痺れを切らしたのか、数本の枝が前方へと集まり束になると先端が光だす。

 先端へと魔力が集まっていきその光はどんどんと大きくなっていく。

 その光の正体は魔力砲。

 単純に魔力を集めて放つと言うものだ。

 だが、その威力は馬鹿にできない。今集まっているものがもし放たれればローラン以外は耐えることができず死亡する事となるだろう。


 しかし、これは想定通り。


「総団長!エンシェント・トレントが魔力砲の準備を始めました」


「よし。お前たちは下がっていろ」


 そばにいる者達へと指示を出した後、ローランは大剣を構え前線へと進み前方で相手をしている騎士達へも声をかける。


「皆!どけ!」


 一斉に騎士達が引いていく。


 いかにローランといえどもエンシェント・トレントの防御を容易くは突破できない。

 しかし、

 魔力砲に魔力を集中している瞬間、防御力が大きく低下する。


「——〈大断刀〉!」


 ローランが大剣を横に薙ぎ、一閃を放つ。


 その一撃によりエンシェント・トレントは完全に両断された。


 長年エンシェント・トレントとの戦闘を繰り返してきたローランはより効率的に安全に倒す為にその作戦を立案し実行していた。


 両断されて切り株となったがそれでもまだ完全には死んでいない。


 しかし、瀕死状態へと陥った事により防御の態勢へと移り回復に専念していた。


 ローランはその様子を油断なく見つめ


「…防御態勢に移ったな」


 その事を確認し皆へ指示を出した。


「よし、お前たち切断した部分を解体し撤収するぞ」


 騎士達は解体班と警戒班に分かれ作業を開始した。


 解体されたエンシェント・トレントの材木はその大部分が王侯貴族へと納品され、椅子や机などの調度品へと加工される。


 残りは小分けにされ森鎮祭の最終日に行われるオークションへと出品されることとなる。


 両断から一時間ほどのち、解体の作業が終わり帰還の準備をしていた。


(一仕事終わったな。油断はできないが、今は帰還しよう)


「王都へと戻るぞ」


 ローランの指示とともに騎士達は隊列を組み、戦利品を持ち帰った。


 ——————


 騎士団が去り、エンシェント・トレントの切り株のみが残る空間に

 一つの怪しい影が現れる。


「キキキッ!ヨうやク行ったカ」


 それは酷く痩せ細り顔色の悪い男だった。

 その様相に反して服装は豪華だ。

 格好だけを見ればどこかの貴族のように見える。


 しかし、口の隙間から見える牙や爪その異様な空気感が彼が人間ではない事を物語っていた。


「こノ身体を失ウノはオしいが、シカたない」


 そう言うと男は切り株の上に乗り

 自身の胸に腕を突き刺した。


 痛みなどまるで関係ないかの如く男は体の中を弄り心臓を取り出した。


 その心臓は鼓動し怪しく輝き異様な雰囲気を醸し出している。


 男は血を吐きながら心臓を切り株の中央へと置いた。


 すると心臓を置いた手に罅が入る。


「この身体の魔力を全テ捧げタカラな…」


 そう言っている間も罅全身へと広がっていき


 最後には男の身体は完全に崩れ去った。









「キキキッ」

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