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大迷宮の創造者  作者: POG
第3章

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鎮森祭


 でかいなぁ

 俺のダンジョンの何倍だ?

 いや、このダンジョンは地上に広がってるからな…

 面積だけならあんまり変わらないのかもしれない


「ちなみにあのダンジョン|《豊樹の深林》は、できてから大体百五十年ほどが経っています。貴方の大先輩と言うわけです」


「百五十年か…確かに大先輩だ」


 それだけの年月があればあれだけデカいのも頷ける。

 中にいる魔物もさぞかし強いのだろう。

 もしかしたら、ミカエル達最高位より上の魔物がいるかもな。


 ——いや、いないか。十年に一度、奥の魔物も含め表に出て冒険者達に倒されるからな。


「そういえばエンシェント・トレントはこの国の騎士団が相手をするんだよな?百五十年も生きたボスを相手に勝てるのか?」


 実際に倒せるから祭りができるのだろうが、ちょっと疑いたくなっちゃうね。


「ええ、それは問題ないでしょう。エンシェント・トレント自体は伝説級の魔物ですが十年に一度、機能停止にまで追い込まれるので、目覚めた後も完全回復している訳ではないですし」


 伝説級⁉︎

 ミカエル達よりも上の位階だよな…。

 もちろん、弱っているとは言えそんな奴を倒すなんてすごいな王国騎士団。


 でも、最初は弱った状態じゃないからな最初に倒した奴もすごいな。


 しかし

 人間が伝説級を倒す。

 それはつまりミカエル達も倒される可能性があるということだ。


 今までアイツらがやられる姿なんて想像できなかったが。


 …そりゃそうだよな。魔物がそんなに強かったら、今頃人類は絶滅している。


 そりゃあ人間側にも強い奴がいるよな。


「ライアー。最初にエンシェント・トレントを倒したのってどんな奴なんだ?」


「ワタシに情報をお求めで?」


 ぐっ、そうだった。コイツ情報屋だもんな。金…って、俺一文無しじゃん!

 持ってるとしたらミカエルかウォルターだが、配下からお金を取るなんて、まるで悪党じゃないか。

 …まぁ、アイツらなら喜んで渡してきそうだが


「そうですねぇ、本来ならお代を頂く所ですが…まぁこの程度は王都にいればいずれ知るでしょうし、無料でいいでしょう」


 ふぅ、何とか危機は免れたな


「よし、言ったな?後から払えとか言われても金なんて無いからな。俺」


「…」


 な、何だよ。

 ライアーは一瞬の沈黙の後、淡々と話し始める。


「…最初にエンシェント・トレントを倒した者はこの国、エルメエシア王国初代総騎士団長ローラン= ゼッフェルンです」


「そのローランとか言うのが伝説級の魔物を倒したのか…そいつは人間だったのか?」


 この世界には様々な種族がいるし、王都にも人間以外の種族が多く居た。

 それはつまりこの国では差別や偏見が少ないと言うことだ。


 ローランが人間以外でも不思議じゃ無い。


「いえ、彼は人間ですよ。と言っても、彼は覚醒者へと至っていますが」


「覚醒者?人間の進化先か何かか?」


 人間の進化といえば思いつくのはハイヒューマンとかだけど


「えぇ。その認識で問題ないです。それと覚醒者とは人間だけの進化先ではありません。正確に言えば人類種の進化先です」


 ほう、人類全部とは。


「因みに覚醒者は位階で言うと伝説級に位置します。つまり、最高位種族である大天使、人竜のお二人よりも単純な強さで言えば格上です」


 ライアーはミカエルとウォルターの二人を見て、笑いながら答える。


「伝説級…それならエンシェント・トレントも倒せるよな…最低でも互角だろうし」


 もちろん相性差だってあるだろうが。


「明後日には鎮森祭が始まります。今年はちょうどエルメエシア王国の建国六百年でして今回は建国際も兼ねられています。特別に、騎士団の出陣パレードも開催される様なので、ローラン総騎士団長に興味が湧いたなら直接本人を見学されるといいですよ」


 その言葉を最後にライアーは振り返り


「おう、またな」


 何処かへ消えていった。


 明後日、パレードがあるのか…直接本人を見学ねぇ…


 ん?本人?


『マスター、人類種の進化先である覚醒者は元となった種族の約十倍程の寿命を待ちます』


 はぁ?まじかよ初代まだ生きてんの?

 初代が現役って何だよ。


 そう言えば、建国六百年とか言ってたよな。

 つまり総騎士団長は最低でも六百歳超え…


『六百年生きる覚醒者相手にはミカエルやウォルターでは勝つ事は不可能です』


 困難じゃなくて不可能と来たか。


 それだと、今人間のふりしてることも近づいたらバレるんじゃないのか?


『可能性はあります。しかし、ミカエルとウォルターの二名は魔力を隠し、実力を隠しているだけなので、疑われる可能性は低いかと』


 なるほどな。

 念の為に気配を隠したりした方がいいかもな。


『いえ、それは得策とは言えません。姿や気配を隠すと言う事は、やましい事があると疑われ無駄な争いを引き起こす可能性が有ります』


 …そうだな。

 よし、明後日は堂々と民主に紛れよう。


 堂々と紛れるってなんか変だが…


「二人とも明後日はお前らより強いやつを見に行く。魔物だとバレない様に注意しておけ」


「かしこまりました。我が主よ」

「アヴィリル様の御迷惑とならぬ様、細心の注意を払いましょう」


「うん。よろしい」



 ——二日後

 予定通り、今日は建国祭を兼ねた〈鎮森祭〉が開始された。


 王都では朝から開始の合図代わりに花火が打ち上がり、道は人や出店で賑わっている。



 そんな中、俺たちは人混みを避ける為に民家の屋根の上にいる。

「おー。まさしく祭りって感じだな」


 来た時以上に人がいる気がする。


 街を眺めていると俺たち以外にも登ってくるものがいた。


 アイツらは…冒険者か?

 まさか魔物だとばれた⁉︎

 それとも俺たちみたいに眺めてるだけか?


 冒険者達は王都の門の方向へと走り去っていった。


 ?


『おそらく、あの者達は〈鎮森祭〉に参加する冒険者でしょう。道は人や出店で溢れている為、走ることが出来ず屋根まで上がり門を目指していると推察します』


 なるほどな。

 確かにもう魔物は少しずつ出てきてるし、なるべく多く狩った方が金になるしね。


「パレードは昼からだから、それまで冒険者の戦闘でも見学していようか」


「かしこまりました」


 ミカエルとウォルターが先行した冒険者を追いかける様に

 と言うか、抜かして門まで辿り着いた。



 門を次々と出ていく者と門の前に出来ている簡易的な冒険者ギルドに列をなす者とで分かれている。


 とりあえず出るか。


 門を抜けると、少し先には魔物と冒険者が戦っている姿が複数伺える。


 …思った以上に近いな。


 確かに冒険者も多いけど、もっと前線を森の近くまで持っていった方が良くないか?


 しかし見える魔物はどれも位階の低い弱い魔物ばかりだった。


 …?


「おそらく、わざと弱い魔物を王都側へ近づけているのでしょう。初心者の冒険者では奥まで行けませんので、そう言った者達への配慮かと思われます。若者も多いですからな」


 俺の疑問を察したのかウォルターが解説してくれた。


 確かにすぐそこで戦って入りのは若い連中ばかりだ。

 攻撃もぎこちなく、連携も取れていない者達が多い。


 と言う事は、本当の最前線はもっと遠くか。


「もうちょっと前線に近づこうか。一国の騎士にお前らより強いのがいるんだ。なら世界を股にかける冒険者にだったらもっといるだろ」


 まぁそんな奴がわざわざ魔物を狩りにくるかはわからないが。



 最前線に行くと先程、俺が前線と称した場所はそんなものではなかったと、思い知らされる様な戦場だった。


 俺は戦いに関しては素人だ。

 強さで言ってもさっきの初心者連中よりも弱い。


 だからだろうか、ここで戦っている冒険者達はソロ、パーティ問わず役割分担をしっかりとこなし、無理なら他の者に助けを求めている。


 冒険者全体で連帯感が出ている気がした。

 剣で一刀の元切り伏せたり魔法で吹き飛ばすなど、強さもわかりやすい。


 まぁおそらくミカエルやウォルターの方が強いのだろうが

 コイツらは強すぎて何をしてるのか分からないからな。


 俺が感心しているとその冒険者達の中に見知った三人組を見つけた。


 俺達と共にホルウルカゼ村から王都まで旅をした『風の旅団』の三人だ


 アイツらももう参加してるのか。


 そうだ、アイツらに強い奴が居ないか聞いてみよう。


「久方ぶりだな『風の旅団』」


 ミカエルが上から目線で話しかけ、ウォルターは会釈する。


「その言い方は…やっぱミカか。久しぶりだな」

 上からのミカエルに怒る事なくガイオが笑いながら言葉を返す。


「お久しぶりですミカさん、ルターさん。と言っても二日振りぐらいですけどね」


 ヒューもこちらに気付き挨拶を交わす。

 戦闘をベックに押し付けて


「おい!挨拶なんて後にしろ!俺じゃ倒しきれないんだよ」


 ベックは魔物を相手に一人戦闘を繰り広げていた。

 魔物の攻撃は全てかわし、ベック自身は短剣で何度も切りつけてはいるが、いずれも決定打には至っていない。

 どうやら|《盗賊》一人では厳しい相手の様だ。


「チッ、情けねぇぞ。ベック」


「ふざけんな!」


「はいはい。僕が仕留めますよ」


 ヒューが魔物に魔法による一撃を放つ。

 元々ダメージは与えていた様でその一撃により簡単に倒れた。


「で、なんか用か?お前らは知り合いを見つけたから挨拶に来たなんて感じじゃないだろ」


「ふむ。貴様らは現在この王都に来ている中で強者を知っているか?無論冒険者以外でも構わない」


 随分とストレートだな。まぁ遠回しより楽だけど。


「強い奴か…」


「そうですね…なら、彼なんかはどうでしょう」


「…確かにこの中ならそうだな」


 ガイオとヒューの視線の先には一人の男が魔物と対峙している。


 革鎧を着込み一振りの剣を持つ、一見すると特徴のない何処にでもいそうな冒険者だ。


 とても強そうには見えないが。

 見た目で言えばガイオ達の方が冒険者らしい。


 ミカエル達も彼を見る。

 と、俺とは全く違う意見が出る。


「…なるほど」


「ほう…彼、ですか。確かに強者ですね」


 マジ?

 もう一度注視しても、全く分らない。

 さっきと違う点を挙げるなら、戦ってる魔物が変わってるぐらいだ。


 ——って、もう倒したのか?

 目を離してほんの数秒だぞ。

 見た目では分らない程の強い奴ってことか?


 確かに、創作だとモブみたいな地味系が実は最強とかあるけど、アイツら実際絵だとイケメンだし。

 現実にそんなの居るなんて思わないじゃん。


「それで、奴は何者だ?」

 よく聞いたぞ、ミカエル。


「アイツは特一級冒険者〈凡夫〉のライル=バーナーだ。ちなみにソロな」


 凡夫って、それ二つ名なのか?

 悪口だろ


「凡夫とは…いささか失礼では?」

 だよな。

 特一級だろ?確か冒険者の階級的には上から二番目だ。


「まぁな。その二つ名を聞いて、侮る奴も多い。特に冒険者になりたての奴はな。

 だが、俺たちぐらいのある程度実力をつけたやつらにはそんなバカはいない」


「ですね。彼は【空間魔法】のスキルも使えますし」


 すごいな。【空間魔法】はルシフェルも持ってないぞ


「…ですが使えるのは基礎だけらしいですけどね。〈空間把握〉と〈亜空間倉庫〉だけだそうで」




〈凡夫〉ライル=バーナー

 彼につけられた〈凡夫〉と言う二つ名は敬称であり、蔑称だ。


 しかし実力を持つ者ほど、彼を侮る者はいない。彼はユニークスキルを持たず、突出した才能もない。

 だが、彼は非才の身で特一級にまで上り詰めた。


 彼がいまだに〈凡夫〉と言われるのは本人が否定せず、むしろ肯定しているからだ。



「俺たちの間ではライルを〈凡夫〉なんて呼ぶ奴はいない。むしろアイツは〈万能〉って呼ばれたんだ。俺やベックとほとんど変わらねえ歳なんだが。

 すごい奴だよ」


 そう語るガイオの顔には同じ冒険者の仲間を自慢する、と言うより身近にいる憧れを語っていた。



 そう言われるとすごい冒険者って気がしてくるな。

 …まだ、見ただけじゃ分からないけど。


 もっと近くで観察したい気持ちもあるが…

 特一級なんて奴ならミカエル達の正体がバレる可能性がある。


 俺が悩んでいると


 ゴォーン—— ゴォーン——


 王都の中心から鐘が鳴り響く。

 正午を知らせる鐘だ。


 昼ってことは、そろそろパレードの時間だな。


 とりあえずライルのことは後だ。

 今は総騎士団長とやらを見に行こう。


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