王都ルミエル
俺たちの王都への旅路は辛く苦しい旅だった…
なんて事はなく順調に進んでいた。
最初の頃は魔物がでたら『風の旅団』と協力して一緒に倒していたが、面倒になったのか途中からミカエルが全部吹き飛ばしていた。
まぁ、長引かせるよりはいいけど…一応、実力隠してたんじゃないのか?
と、疑問に思ったりしたが、特にトラブルもなく、出発した頃に商人に言われた通り三週間ほどで王都へと辿り着いた。
入り口の門へと着き順番待ちの列に並んでいると
「やっと辿り着きましたね」
「だな」
「いやぁ毎度のことながら王都遠いな」
『風の旅団』の三人は慣れているからか特に疲れた様子もなく感想を言っていた。
て言うか気になっていたんだが森近くないか?
近くにダンジョンがある影響かな…
王都へと近づくほどに道の端には木々が多くなって行った。
そうこうしているうちに列は前へと進み、俺たちの番となった。
「止まれ。身分証を見せろ。お前は積荷を確認してこい」
「はっ」
偉そうでムカつく野郎だな。
と、俺がそんな感想を抱いているうちに、どうやら色々と確認は終わったようで
「通っていいぞ」
俺たちはとうとう王都の中へと辿り着いた。
依頼はグランツの商店までなので、そこまではまだ降りられない。
王都の観察でもしていよう。
王都の中は、あれだけ賑わっていたはホルウルカゼ村が少なく感じるほどのに人々で溢れていた。
人が多いなぁ。
まぁ祭りが近いらしいし、いろんなところから来ているんだろけど。
「ここは人類が多いな」
ミカエルも思ったのか同じ事を呟いていた。
「人類って……でも、そうですね。ここ王都ルミエルは近隣の国々と比べても人口が多いです。この国は昔は帝国、教国と並び三大国家の一つとして数えられていたぐらいですから。今は帝国と教国の二強ですが」
「流石は賢者殿。博識でございますね」
「おう。コイツはパーティの頭脳だからな」
ウォルターが褒め、ガイオが同調してきた。
その顔は自分の事のように自慢げだ。
「いえ。これくらいはたいした事ないです」
ヒューの言う通り王都は人口が多い。
と言うか密度が高い。
人はもちろんのことエルフにドワーフ、獣人、様々な種族の人々がいる。
王都を引き続き観察しているとその中に気になる人物を見つけた。
額に立派な一本の角を持つ男性である。
…あれって鬼人だよな。オボロやシュラと同じ。
王都に魔物がいていいのか?
確かに鬼人は知性がある魔物だけど。
『いえ、あの者は魔物ではありません』
魔物じゃない?…じゃあ、角をつけているコスプレ男性という事になるが。この世界にもいるんだな。
——お?他にもコスプレが来たぞ。肌に鱗がある女の子だ。
竜人とかかな?
『あの角、鱗は本物です。彼らは魔族と呼ばれる人類種の一つです。魔族は人間、エルフ、ドワーフ、獣人が魔人と言われる知性の高い魔物と交わった事で生まれた種族です。一部地域、国、宗教などでは迫害の対象となっております』
おおう…迫害とは、中々に重いワードじゃないか。
と、それもだが初出しな情報もあったぞ。
人類種とか魔人だ。
…ちょっと設定細かくしすぎじゃないか?…
『言っている意味がよくわかりませんが、まず人類種とは人間、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族の五つの種族の総称です。
次に魔人ですが、こちらは魔族とは異なり純粋な魔物。知性が高く、比較的人に近しい姿をする者達を指します。
マスターのダンジョン内で言うのであれば大天使、大悪魔、人竜、鬼人、鋼人などが魔人に分類されます』
ワァオ、うちは魔人がいっぱいだ。
て言うか大天使も魔人なのか?
確かに今のミカエルは人化してるから見た目人間だけど、あいつ元巨大な目玉だぞ。
それにしてもその魔人の定義だと普通の人からしたら魔族と区別つかなくないか?
『そこが、迫害の要因の一つになっています』
だよなぁ。
まぁ少なくともこの国じゃ迫害はないようだし、それは良かった。
そんなことを考えていると依頼主である商人グランツの店へと辿り着いた。
「護衛、お疲れさん。これで依頼は終わりだ。そしてこいつが報酬だ。祭りで俺も出店を出す。機会があれば来てくれ。祭り頑張れよ」
「おう!おっさんも頑張れよ」
グランツがガイオへと報酬を渡し、握手を交わした後さっさと店の中へ入って行った。
その後、俺たちは王都の冒険者ギルドへと向かい、依頼達成の報告をした。
これでやっと依頼は終わりだ。
…長かった。
「こいつがお前ら『天竜』の分の報酬だ」
「では私が…これは、いささか多い様に思えますが」
見ると、確かにガイオ達『風の旅団』報酬より、俺たちの分の報酬が多かった。
「いいんだよそれで。最初はまだしも途中から魔物やら盗賊やらとの戦闘はほとんどそこのミカがやってたからな。妥当な分配だ」
「ですが」
「それに同じ三級パーティと言ってもお前らはまだ新人だ。こいつは先輩からの気持ちだとでも思ってくれ」
後ろにいるヒューとベックの二人も頷いていた。
中々いい奴らの様だ。
「分かりました。先輩方からの激励、しかと受け取らさせて頂きます」
「前から思っていたがあんたかたっ苦しいな。…まぁこれからも頑張ってくれや」
そう言い残し『風の旅団』の三人は冒険者ギルドから去って行った。
「いい奴らだったな。この縁は大事にしろよ」
「そうですね。確かに人間にしてはやる様でした」
「気前のいい御仁ございましたな」
なんだかんだでミカエルも認めている様だ。
さて次はどうするか。
王都の散策もいいが、せっかく冒険者ギルドに居るんだしここで調べられることは調べようか。
「とりあえず、依頼でも見てみないか?ホルウルカゼ村では見れない様な依頼もあるだろう」
依頼掲示板の前に行くと鞄の隙間からでも分かるほどに大量に依頼が出されていた。
依頼の種類も多いな。討伐から採取、護衛、戦闘訓練…地下水路の清掃や庭掃除なんてのもあるぞ。
流石に種類が豊富すぎないか?
掃除系とかは新人用なんだろうが
ほんと、多いなぁ…って随分と古い依頼書があるな。
掲示板のてっぺん。わざわざ専用の掲示板を用意して、一番目立つ場所に何故か他の依頼書とは明らかに違う、年季の入った依頼書が張り出されている。
その数は七枚。
しかし、鞄からでは内容までは確認できない。
「なぁミカエル。掲示板の一番上の依頼書はどんな内容なんだ?あの、古そうなやつだ」
「…七大迷宮と書かれています。どうやらこれは依頼ではなく、ダンジョンの情報の様ですね」
ほぅ。七大迷宮とな。
厨二心をくすぐるワードじゃないか。
異世界系でメジャーなのは七つの大罪や七つの美徳なんかだよな。
かっけえな。
妄想をしているとミカエルがダンジョンの名前と情報を読み上げていた。
ここより遥遠くの海の底に沈み、辿り着くことさえ困難なダンジョン。
深海の迷宮、名称:壊滅深海
天空に浮かぶ島に存在し、その巨大な浮島ごと世界を周回するダンジョン。
天空の迷宮、名称:侵空領域
火山地帯に存在し、ダンジョンに入る前から焼死する、侵入さえ許さないダンジョン。
火山の迷宮、名称:深炎滅火
大海に浮かぶ絶海の孤島に存在し、常に島の周囲は霧で覆われ遠距離からの観測は不可能なダンジョン。
孤島の迷宮、名称:正体不明
神話よりもさらに古い古の時代、世界を統べたとされる王が築いた都に聳えるダンジョン。
聖都の迷宮、名称:聖天竜都
かつての賢王が狂った末に己の国の民達を殺し尽くした呪われた地のダンジョン。
冥府の迷宮、名称:人冥崩壊
稀代の大錬金術師が作り出し、最奥には四大最高傑作が遺されていると噂される世界で唯一の人工ダンジョン。
地底の迷宮、名称:地底国家
以上が七大迷宮らしい。
全てのダンジョンが大層な名前がつけられてる。
他にもボスの情報や場所など、様々な事が記されていた。
そして、七大迷宮のダンジョン名を聞いた時一つ大事なことに気づいてしまった。
俺のダンジョン…名前、無くね?
そう。とうとう気づいてしまった。今までうちのダンジョンだとか適当に呼んできたが正式な名前を決めていなかった。
どうせ人間たちから勝手に名前をつけられてはいるのだろうが、それはそれとしてだ。
名前を付けよう。
……
………しかし、いざ付けようと言っても全く思いつかないな。
よし、帰るまでに考えておこう。
新たな課題を見つけた俺はミカエルに言いギルドを出て街の探索へと出た。
本当に人が多いな。
まぁ、その分いろんなものが売っているが。
「ダンジョンの皆にお土産でも買っていくか」
「いえ、奴らにアヴィリル様の御慈悲など不要です。アヴィリル様が無事に御帰還されるだけで、感涙することでしょう」
えぇ。相変わらず過激派な意見だな。
無視して土産でも探そう。
そうだ、ついでに《豊樹の深林》についても調べてみるか。場所とか。
まぁ、冒険者ギルドに聞くのが一番早いとは思うが。
別に急いでないしな。
と、王都を散策していると露店の前に見知っている顔を見つけた。
ライアーだ。
「おや?こんな所で奇遇ですね。貴方方も鎮森祭に参加されるので?」
「久しぶり振りだなライアー」
俺は鞄から顔を覗かせ挨拶した。
「ええ。お久しぶりです。まさかダンジョンの外でお会いするとは……【憑依】ですか。中々考えましたね」
まさかあって早々に仕組みがバレるとは。
情報屋は伊達じゃないな。
「そんなことはいい。所でライアーは祭りの会場を知ってるか?《豊樹の深林》って言うダンジョンらしいんだけど」
「…?王都にする道中で見ませんでしたか?」
「周りを見てたけど、洞窟なんかは無かったぞ。ちょっと遠くに森林が広がってたぐらいだな。まさか森の中にダンジョンがあるのか?」
「……なるほど。そういうことですか」
なんだ?一人で納得した様な顔をしやがってからに
「では、ご案内します。着いてきてください」
ライアーについていき俺たちは高台にたどり着いた。
「何処にあるんだ?」
高台から見下ろしても王都の外は相変わらず森ばかりでダンジョンらしきものがない。
「所でダンジョンには様々な種類があることをご存知ですか?」
「なんだ急に?種類?」
「ええ。大まかに二つあります。まずは一般的な洞窟や放棄された建物の内部などに発生するダンジョン。そしてもう一つはダンジョン・コアを中心に地上にダンジョンを広げる領域型のダンジョンです。ちなみに《豊樹の深林》は領域型に分類されます」
「なるほど。領域型ね…って、まさか!」
その言葉をライアーは面白そうに告げた。
「はい。貴方方のお探しのダンジョン《豊樹の深林》とは、目の前に見える森林一帯の事を指します」
前方に広がる森は端が見えないほどに広大に広がっていた。
「広すぎだろ…」
大変長らくお待たせしました。
次回の更新もいつになるかは未定ですが、なるべく早く書きたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。




