魔王に八つ当たり
「おはよう、マリース。どうした?」
朝、私を迎えに来たルーは、私を取り上げて、顔まで持ち上げ、様子が違う私を不審がった。
私の怒りは朝になると、さらに激しく、堪忍袋の緒が切れるなんてものよりももっとひどく、何億倍にまで広がっていた。
私が巾着で、堪忍袋の緒が切れるという、表現が奇跡を体現したかったのかという有様。上等じゃない。何してくれてんのよ。巾着なんで、どこが切れているのか、分からないけど。
その精悍で無邪気な可愛らしい顔も、見て喜んでいる心のゆとりなどなかった。
魔王を倒さねば、と、朝の光の中で、思った。
未来永劫、魔王の好き勝手にされてたまるか。
「え?」
「マリース、本気か?」
「そこは、一度も行けず、諦めた道だぞ」
私はずっと作戦会議で八方塞がりとなっていた魔王城への進行について、一番の難攻不落である岩場の中を抜ける道を提案した。
敵がうようよいて、一歩も進めないが、直線で行けて、もっとも近道だ。
「ここは確かに一番の近道だが、それゆえ最も魔物たちが多いんだぞ」
とガタック。
「私について来て。私が最大の攻撃と防御法であんたらを、前へ進めてみせるから」
私は野獣みたいに言った。
「なぜ、急にやる気に?」
と勇者。
「私、巾着主のオーティカンと会ったの。それで、十の秘法を聞いた。神代の神器の力を発揮できる力、私今こそ、使えると思う」
「どうして、今頃、巾着主が?」
と勇者。
「この危機に、目覚めたみたい」
まさか、私が巾着を脱ごうとしてとは言えない。
私という金の薄汚れた巾着の言うことを、勇者、召喚士ガタック、聖女アデルは真剣に聞いて、協議をした。
「どうする?」
と勇者。
「もう、ぐずぐずしていられない、今すぐ魔王城へ攻め込まねばならない。エリーレッドもやられてしまった。俺も召喚術が抜けなくて、カエルになりかけている。このままでは、誰かがまたやられてしまって、さらに悪い状況になる」
召喚士ガタックは顔色悪く、倒れそうになりながらも、ようやく立ち続けている。
「もし、次に、誰かが欠けたら、戦いの節目も大きく変わる」
とアデル。
「巾着が気が狂っていて、妄言を吐いたとしても、私らはもう、行くしかない」




