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うわーん、私、嘘ついた。
嘘ついて、私が傷つくって何なの?
「今、俺は伝説の剣を求めて、村を出たことを後悔してるんだ」
普通に会話が続いたので、私は嘘がばれないように、平静を装うしかなかった。ふらふらになりながらだけど。
「王様の軍隊の勇者にまでなれたんだから、凄いことよ」
ルーは、伝説の剣「ゴットフリートの剣」の話を信じて、十五の時故郷を出て、旅に出た。その旅路で、王立軍の勇者や戦士と出会い、イントーン王家の王様イントーン王に使える兵士になったのだと言う。
逃げて泣きたい気分だけど、もうこのまま突っ切るしかない。そもそも、自由に逃げられないし、巾着の体だから、足遅いの、私。
巾着になったら、人間との関係が複雑になるのね。
巾着になったら、外見気にせずにいられて、意思疎通は楽のくせに。
「イントーンの聖王にしか手にできないっていう伝説の剣でしょ。絵画や本なら、すごく綺麗な剣に描かれてるもの。探し出して、見つけたいと思っても当然よ」
「今頃、伝説の剣を求めて探している勇者なんていないだろ。伝説の勇者とか、神話の勇者とか逆に言われて、俺、仲間からからかわれたよ」
なんだか、大人に見えたルーが案外、可愛らしい少年に見える。
「大丈夫よ、あなたはこの国でも賢くて、勇気があって、素晴らしい勇者って評判よ。女だから、全員あなたのこと好きで、国民にも人気がある」
「やだな、そんな女子が俺なんて、困るよ」
勇者は顔を赤らめる。
「まあ、国民に信頼されているのはうれしい。国の軍を預かる兵士長として、威儀を正さねばと、王様や上司の将軍から厳しく言われててね。世間もそんなふうに見てくれているなら、後世も悪評も残らないだろう。これで安心して最後の戦いに望めるよ」
「またそんな、自信のないことを言っちゃって」
エリーレッド公がルーを守るように言ったことが、私にはなぜか分かる気がしていた。
ルーって朴訥で、気弱な少年だったみたいね。
それで、伝説の剣を夢見ているなんて、本当、夢見る少年だわ。
これは、男らしさの反対の可愛らしさがあるわよ。
「でも、本当にどこにもなかったの?」
「うん、俺はあらゆる場所や、伝説の場所を探していたけど、駄目だった。おかげで、武力訓練にはなって、対戦能力は上がったけど」
「それがなぜ欲しいの?」
「なぜとか、理由はないけど、一応、剣士として、その剣を使いたいという気持ちがあるからかな」
「信じるものを信じていたらいいのよ、別に誰にも咎められないわ」
私は外見を見られてない気楽さ半分、巾着という姿の気楽さ半分で、分かったようなことを言えるのだ。
腰巾着って、全部自力で解決できない。
だから、腰元から他人に命令したり、指示したりして動かすしかない。
巾着にならないと皆分からないだろうけど、全部、冷静な目で見られるようになる。
所詮、主人の腰元でぶらぶらしているしかない腰巾着だからね。
「とても綺麗なもので、凄いものだと思ったけれど、手に入らない幻なのかって、今は信じる気持ちが薄れてる。今更、伝説の剣を信じるなんて。あのとき、剣のことなど考えずに今、村にいたらと思っているよ、最近」
西の寒村生まれのルーは、大自然の中で育った。
町の暮らしより、田舎暮らしが性分に合っていると、故郷に帰りたいとよく漏らしている。
「試しに、ルーの求める聖剣、超取り寄せの力で、取り寄せてみようか?」
「え・・・・本当?」
「ちょっと待ってて」
私はまたごそごそした。何か、出せそうな気がする。何か大きな力がどこかに隠れている気がするのだ。




