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継承惑星  作者: 室木 星嶺
第一部 遺された者

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第七話 父の部屋

翌朝。


雨は止んでいた。


だが空は灰色のままだった。


テレビでは依然として世界各地の異常現象が報道されている。


《原因不明の重力異常》


《太平洋沿岸で潮位変動》


《各国で同時通信障害》


玲司はソファに座ったまま、一睡もできずにいた。


凛は窓際で外を警戒している。


玲司は低く言った。


「……俺は普通の人間だ」


凛は何も答えない。


「地球がどうとか、継承とか……そんな話、信じられるわけないだろ」


「普通ならそう思う」


「普通じゃないって言いたいのかよ」


凛は玲司を見る。


「昨日、あなたは死ぬ状況を何度も回避した」


玲司は言葉を失う。


確かにそうだった。


偶然。


そう思いたかった。


だが――。


「……親父は知ってたのか」


「おそらく、全て」


玲司は拳を握る。


父は何年も、自分一人で抱えていたのか。


その時。


凛の通信端末が震えた。


凛の表情が険しくなる。


「追跡が始まってる」


「ここも危ないのか?」


「時間の問題」


凛は数秒考え、玲司を見る。


「あなたのお父様の家へ向かう」


玲司は眉をひそめた。


「家?」


「何か残している可能性がある」


玲司は迷った。


だが結局、頷くしかなかった。


もう逃げるだけでは限界だった。


昼過ぎ。


二人は郊外の古い一軒家へ到着した。


玲司が幼少期まで暮らしていた家。


今は恒一が一人で住んでいた。


門には規制テープが貼られている。


「警察が来た後か」


凛は周囲を確認する。


「急いで」


玲司は鍵を開け、中へ入った。


空気が止まっていた。


父の匂いが残っている。


玲司の胸が痛んだ。


居間。


古い時計。


読みかけの本。


コーヒーカップ。


昨日まで父が生きていた痕跡。


玲司は唇を噛んだ。


その時。


凛が本棚を見て立ち止まる。


「……不自然ね」


本棚の一部だけ、僅かに擦れた跡がある。


凛が押す。


音。


本棚が横へ動いた。


隠し扉。


玲司は目を見開く。


「……何だよこれ」


地下へ続く階段。


冷たい空気が流れてくる。


二人はゆっくり降りていった。


そこには、小さな地下室があった。


壁一面の地図。


古い写真。


無数の資料。


そして中央には、大量のファイル。


玲司は呆然とする。


「親父……何やってたんだ」


凛は机上の写真を手に取る。


そこには様々な年代の人々が写っていた。


だが奇妙な点がある。


どの写真にも、裏面へ同じ印が刻まれている。


円の中に、裂けた地球のような紋章。


玲司は一冊のノートを開く。


そこには父の字。


《継承は連続している》


《解除方法は存在する可能性が高い》


《だが条件不明》


《歴代継承者の大半は“普通の人生”を望んでいた》


玲司の喉が詰まる。


ページをめくる。


そこには、さらに衝撃的な文章があった。


《玲司には継承させたくなかった》


玲司の指が止まる。


その時。


凛が奥の棚を見つめた。


「……これ」


古いビデオレコーダー。


テープには手書きで名前。


《玲司へ》


玲司は息を呑む。


震える手で再生ボタンを押した。


画面が砂嵐の後、映像へ変わる。


そこには、疲れ切った父・恒一の姿が映っていた。


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