第五話 黒瀬凛
湾岸部の廃倉庫。
バイクを止めた女はヘルメットを外した。
長い黒髪。
鋭い目。
玲司より少し年上に見える。
「……アンタ誰だ」
女は玲司を見た。
「黒瀬凛」
「それで?」
「政府直属特務警護官」
玲司は乾いた笑いを漏らした。
「政府?警護? さっきの連中も政府だろ」
「組織が違う」
凛は淡々としていた。
感情が読めない。
玲司は苛立つ。
「説明しろよ! 親父は何だった!? なんで俺が追われる!」
凛は少しだけ視線を落とした。
「……まだ全部は話せない」
「ふざけんな!」
玲司は近くの机を蹴った。
「親父が死んで! 訳分からねえ連中に追われて! 何も説明しないって何なんだよ!」
凛は玲司を見つめる。
その目には僅かな迷いがあった。
その時。
倉庫の照明が一瞬消える。
凛の表情が変わった。
「伏せて!」
次の瞬間。
窓ガラスが一斉に砕けた。
小型ドローンが十数機突入してくる。
「対象発見」
機械音声。
凛は即座に拳銃を抜いた。
発砲。
乾いた閃光。
ドローンが次々と墜落する。
だが実弾ではない。
電磁パルス弾。
玲司は混乱した。
「何なんだよこいつら!」
凛は短く答える。
「あなたを欲しがってる連中よ」
「だから何で!」
凛は一瞬だけ口を閉ざした。
そして静かに言った。
「あなたが、世界で最も重要な人間だから」




