第四話 逃走
玲司は反射的に部屋を飛び出した。
非常階段へ走る。
「対象確認!」
「確保しろ!」
玲司は歯を食いしばって階段を駆け下りた。
意味が分からない。
なぜ追われる。
なぜ父は死んだ。
何も分からない。
だが捕まればまずい。
それだけは本能で理解できた。
下階からも足音が迫る。
挟まれる。
玲司は途中階の工事中フロアへ飛び込んだ。
薄暗い空間。
鉄骨。
資材。
剥き出しの配線。
玲司は息を潜める。
外で男達の声。
「対象はこの階だ!」
玲司は周囲を見回した。
逃げ道がない。
その時だった。
建物全体が激しく揺れた。
遠くで爆発音。
次の瞬間、工事用足場が崩落した。
轟音と共に通路が塞がる。
追手の怒号。
玲司は呆然と立ち尽くす。
偶然?
いや、おかしい。
タイミングが良すぎる。
玲司は崩れた隙間を抜け、別の非常通路へ出た。
さらに下へ走る。
途中で配管が破裂し、蒸気が噴き出した。
視界が白く染まる。
背後で追手の悲鳴。
「視界ゼロ!」
「熱源探知使え!」
玲司は転びそうになりながら地下駐車場へ辿り着いた。
荒い呼吸。
心臓が痛いほど鳴っている。
その時。
一台の黒いバイクが滑り込んだ。
ヘルメット姿の女。
「乗って!」
玲司は後退した。
「誰だよ!」
女は短く言った。
「今は生き残ることだけ考えて!」
その瞬間。
背後の防火シャッターが突然閉鎖された。
追手の怒声が遮断される。
玲司は息を呑む。
まただ。
まるで――
何かが逃がそうとしている。
女が再び叫ぶ。
「早く!」
玲司は迷った末、バイクへ飛び乗った。
直後、バイクは地下駐車場を疾走した。




