監視者
玲司はカーテンの隙間から外を見ていた。
マンション前には黒い車が二台。
スーツ姿の男達が無線で何か話している。
ヘリの音も遠くで続いていた。
「……何なんだよ」
父が死んだだけだ。
なのに、なぜこんな事になる。
玲司は震える手でスマホを握った。
通知は止まらない。
知らない番号からの着信。
非通知。
意味不明のメール。
その中に、一件だけ異様なものがあった。
送信者不明。
件名なし。
本文は一行。
《部屋から出るな。監視されている》
玲司の喉が鳴る。
誰が送った?
何のために?
俺は何に巻き込まれた?
その瞬間。
下の道路で激しい衝突音が響いた。
玲司は反射的に窓を見る。
大型トラックが交差点でスリップし、電柱へ突っ込んでいた。
火花。
停電。
周囲が暗くなる。
マンションの廊下照明も消えた。
同時に、外の黒服達がざわめく。
「電力系統異常!」
「監視カメラが落ちた!」
玲司は息を呑む。
偶然にしては出来すぎていた。
その時。
スマホが鳴る。
また知らない番号。
玲司は恐る恐る出た。
「……誰だ」
『神谷玲司さんですね』
女の声だった。
落ち着いた声。
だがどこか緊張している。
『今すぐそこを離れてください』
「は?」
『あなたは現在、複数組織に監視されています』
玲司は苛立った。
「さっきから何なんだよ! 親父は何に巻き込まれてた!?」
数秒の沈黙。
そして女は言った。
『あなたのお父様は、死ぬことを世界が最も恐れていた人間でした』
玲司は眉をひそめる。
「意味分かんねえよ」
『三分後、あなたの部屋へ突入が行われます』
「……何?」
『とにかく逃げて。今は信じて』
通話が切れる。
同時に廊下で複数の足音、複数の低い声。
「対象確保を開始する」
玲司の背筋が凍る。
本当に来た。
多分捕まってはいけない。
父の最後の言葉が頭をよぎる。
逃げろ。
誰も信じるな。
次の瞬間。
玄関ロックが強制解除される音が響いた。




