↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承惑星  作者: 室木 星嶺
第一部 遺された者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/36

第二十八話 始祖の言葉

SUVは夜明け前の山道を走っていた。


雨は止み始めている。


だが空の黒い亀裂は消えていない。


裂けた空は、世界そのものが壊れ始めている証拠のようだった。


車内には重い沈黙が流れていた。


玲司が見た“石の扉”。


そして。


『継承は、呪いじゃない』


という言葉。


真田が低く呟く。


「……始祖かもしれん」


玲司が顔を上げる。


「始祖?」


真田は頷いた。


「最初の継承者だ」


車内の空気が変わる。


玲司は息を呑む。


アリシアが静かに微笑む。


「ついにそこまで辿り着いたのね」


凛が険しい顔で聞く。


「真田さん、本当に実在するんですか」


真田は少し黙った後、答えた。


「恒一さんは、そう考えてた」


玲司は混乱していた。


「……待てよ」


「継承って、親から子へ続いてきたんだろ」


「じゃあ最初の継承者って何なんだよ」


真田はフロントガラスの向こうを見たまま言う。


「そこが分かってない」


「だから皆、北海道を目指した」


玲司は眉をひそめる。


「皆?」


凛が静かに答える。


「過去の継承者達」


玲司は思い出す。


記憶の中で見た人々。


普通に生きようとして、

苦しみ、

逃げ続けた人達。


その多くが“始まりの場所”を探していた。


アリシアが小さく笑う。


「でも誰も辿り着けなかった」


玲司は睨む。


「何でそんな事知ってる」


アリシアは窓の外を眺めた。


「エデンは継承者を何世代も追ってきたから」


その言葉に玲司の背筋が冷える。


何百年も。


世界の裏側では、

ずっと継承者が観測され続けていた。


その時。


SUVが急停止した。


タイヤが雪を削る。


玲司達の身体が揺れた。


凛が即座に拳銃へ手を伸ばす。


「何!?」


真田が前方を睨む。


「……検問だ」


外。


山道を封鎖する複数の黒い車両。


完全武装部隊。


だが政府軍ではない。


白い紋章。


ノア・ガーディアンだった。


凛が小さく舌打ちする。


「最悪……」


ライトがSUVを照らす。


玲司は思わず目を細めた。


外から拡声器の声。


『神谷玲司』


『あなたへの危害意思はない』


『車両から降りてほしい』


まただ。


玲司だけは特別扱い。


玲司は苦しそうに笑った。


「……もう慣れそう」


凛が真剣な声で言う。


「慣れないで」


その瞬間。


外で部隊同士の怒号。


別勢力が接近している。


真田が険しい顔になる。


「時間がない」


アリシアが静かに言った。


「玲司」


玲司が振り向く。


アリシアの目は真っ直ぐだった。


「あなたが迷えば、また同期反応が起きる」


玲司は息を呑む。


確かに今までそうだった。


感情が乱れるほど、

世界が歪む。


アリシアは続ける。


「落ち着いて」


凛が警戒する。


だが玲司は気づく。


アリシアの声だけは、

不思議と頭のノイズを抑えていた。


まるで継承そのものへ近い存在みたいに。


その時。


外から怒号。


『対象周辺で重力異常確認!』


『距離を取れ!』


玲司の胸が苦しくなる。


空気が重い。


窓ガラスへ亀裂が走った。


真田が叫ぶ。


「玲司! 感情を抑えろ!」


玲司は頭を押さえる。


だが無理だった。


恐怖。


怒り。


孤独。


世界中から追われる感覚。


それらが一気に溢れる。


次の瞬間。


空が鳴った。


轟音。


山全体が揺れる。


雪崩のような音が遠くから響いた。


部隊が悲鳴を上げる。


『山が崩れるぞ!!』


玲司は震えていた。


そして気づいてしまう。


自分の感情一つで、

本当に世界が動いている事を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。