↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継承惑星  作者: 室木 星嶺
第一部 遺された者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/36

第二十七話 北へ

黒いSUVは夜の高速道路を北へ走っていた。


雨は少し弱まっていた。


だが空にはまだ黒い亀裂が残っている。


世界そのものが傷ついた痕のようだった。


車内は静かだった。


玲司は父から渡された写真を見つめ続けている。


幼い自分。


若い父。


笑顔。


その光景だけが、今の現実から切り離されていた。


真田が運転しながら低く言う。


「恒一さんは最後まで、お前を普通に生かそうとしてた」


玲司は視線を落としたまま呟く。


「……無理だったけどな」


真田はすぐには答えなかった。


やがて静かに言う。


「いや。最後まで諦めてなかった」


玲司は写真を握り締める。


助手席の凛がバックミラー越しに玲司を見た。


「あなたのお父さんは、解除方法を探してた」


玲司は顔を上げる。


「本当にあるのか」


凛は少し迷った後、答えた。


「可能性はある」


アリシアが窓の外を眺めながら笑う。


「でも成功した継承者はいない」


車内が静まる。


玲司は苛立った。


「お前、希望潰すの好きだな」


アリシアは玲司を見る。


「現実を言ってるだけ」


その目は相変わらず静かだった。


まるで玲司が絶望へ向かう事すら受け入れているように。


真田が話を変えるように口を開く。


「北海道に、恒一さんの研究施設がある」


玲司が反応する。


「施設?」


「ああ。表向きは廃観測所だ」


凛が続ける。


「そこで継承について調べていた」


玲司は少し考えた後、低く聞いた。


「……親父は、どこまで知ってたんだ」


真田の表情が曇る。


「かなり深いところまでだ」


「始まりの継承者についても」


玲司の呼吸が止まる。


始まり。


全ての起源。


アリシアが静かに微笑む。


「ついに核心へ近づくのね」


玲司はその言葉に妙な寒気を覚えた。


まるでアリシアは、この瞬間をずっと待っていたようだった。


その時。


車内の通信端末が突然起動する。


ノイズ。


そしてニュース映像。


『世界各地で異常気象が発生――』


『各国政府は“同期災害”という新たな呼称を使用――』


『神谷玲司とされる人物の映像がネット上で拡散――』


玲司の顔が強張る。


画面には、自分の姿。


モーテル。


崩壊する高速道路。


空の亀裂。


世界中へ拡散されていた。


『SNS上では“地球の心臓”という呼称も――』


『一部宗教団体が神格化を開始――』


『国連は世界規模危機対象として――』


真田が通信を切った。


沈黙。


玲司は呆然としていた。


「……終わった」


凛が振り返る。


「玲司」


玲司は乾いた笑いを漏らす。


「もう普通の人生なんか無理じゃねえか」


誰も否定できない。


世界中が知ってしまった。


神谷玲司という存在を。


アリシアだけが静かに言った。


「だから言ったでしょう」


玲司は睨む。


アリシアは穏やかな声で続けた。


「あなたはもう、“普通”へ戻れない」


その言葉が車内へ重く落ちる。


玲司は窓の外を見た。


暗い海。


雨。


黒い空。


そして自分。


その時だった。


突然。


玲司の視界へ、また知らない光景が流れ込む。


白い雪山。


巨大な石の扉。


その前に立つ、一人の男。


男は振り返る。


玲司と同じ目をしていた。


そして呟く。


『継承は、呪いじゃない』


玲司は息を呑む。


次の瞬間。


映像が消える。


玲司は頭を押さえた。


凛が振り向く。


「また見えたの!?」


玲司は荒い息のまま呟く。


「……雪山」


「石の扉」


真田の表情が変わった。


「まさか……」


アリシアが目を細める。


玲司は震える声で続けた。


「継承は呪いじゃないって……」


その言葉に、車内の空気が変わった。


まるで今、

誰かが核心へ触れたように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。