表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/50

第49話 宴の夜

最終話の一歩手前。みんなの幸せを見届けて。

式のあと、ヴェルナー邸で祝宴。


 領民も貴族も混じり合って、音楽と笑い声。


 リーゼは——踊った。


 目がほとんど見えない花嫁だ。エルヴィンがリードした。二人の呼吸は、ぴたりと合った。


「目が見えなくても、踊れるものね」


「僕が合わせているんですよ」


「知ってる。でも、リズム感は、私の方がいいわ」


「それは、認めます」


     * * *


 宴の途中、アレクシスが声をかけてきた。


「一曲、踊ってもらえるか。——元婚約者として」


 エルヴィンがほんの一瞬、表情を固くした。リーゼが笑って、頷いた。


「一曲だけ」


 アレクシスとリーゼが、踊った。宮廷の正式な舞踏。八年の婚約時代に、何度も踏んだステップ。身体が、覚えていた。


「リーゼロッテ。幸せか」


「ええ。——殿下は」


「……幸せでは、ない。だが、正しい方向に歩いている気はする」


「それで、十分よ」


「お前に教わったことが、三つある」


「何かしら」


「一つ。——人の価値は、目に見えるものだけでは、測れない」


「まあ」


「二つ。愛は——もらうものではなく、気づくもの」


「殿下がそんなことを、仰るなんて」


「三つ。——遅すぎるということは、ない。遅くても、始めることに、価値がある」


 リーゼは、微笑んだ。


「殿下。立派な王に、なれますわ」


「ああ。お前が守ってくれた命で——この国を、変える」


 曲が、終わった。


 アレクシスが、手を離した。


「ランベルト」


 エルヴィンが、アレクシスの前に立った。


「彼女を、頼む」


「命に代えても」


「命に代えなくていい。——命を、大事にしてやれ。この女は、命を粗末にしがちだから」


「ひどいですわ、殿下」


 三人で、笑った。


     * * *


 宴が終わり、客たちが去った。


 ルートヴィヒが、帰り際、リーゼに頭を下げた。


「リーゼロッテ嬢。兄を——ありがとうございました」


「あなたこそ。あの日、兄上の側に立ってくださったこと、感謝していますわ」


「僕は、正しいことをしただけです。——あなたに、教わりました。選ぶことの意味を」


「直接、教えた覚えはないわ。——それは、あなた自身が、見つけたものよ」


 ルートヴィヒが、笑った。十五の少年が見せる、大人の笑い方だった。


「僕も——良い政治家になります。兄の隣で」


「期待しておりますわ」


     * * *


 深夜。


 リーゼとエルヴィンは、屋敷のバルコニーに立っていた。


「星、見えるかしら」


「見えますか」


「左目で——光の点が、いくつか。あれが、星?」


「ええ。今夜は、満天の星です」


「きれいなんでしょうね。——私には、光の粒にしか見えないけれど」


「十分、きれいですよ」


 エルヴィンが、リーゼの肩を抱いた。


「明日から、二人の日常、ですね」


「ええ。普通の、穏やかな日常が」


「フラグのない」


「フラグのない。——最高ですわ」


 星空の下で、二人は、静かに笑った。

アレクシスとリーゼが踊るシーン、第1話の婚約破棄の大広間と同じ場所なんですよ。あの時は嘲笑で、今度は拍手。

「フラグのない」「最高ですわ」、二言に全部込めた。

明日、最終話を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ