第48話 花嫁の朝
結婚式回。ハンカチ用意してください。
春。
桜に似た白い花が、街道に散っていた。
結婚式の、朝。
マリアが花嫁衣装の仕上げをしていた。純白のドレス。リーゼの銀色の髪と重なって、全身が白銀に、光っていた。
「リーゼロッテ様。お美しい」
「ぼんやりとしか、見えないけれど。——白いのは、わかるわ」
「銀と白の花嫁。——伝説みたいです」
「大袈裟よ」
セレナが、ヴェールを整えた。
「リーゼロッテ様。今日のために、私とマリアで、刺繍を」
「刺繍?」
「ヴェールの縁に。銀の糸で——小さな星を、四十七個」
リーゼの指が、止まった。
「四十七——」
「八年間であなたが折った、死亡フラグの、数です」
リーゼの目から、涙がこぼれた。
「セレナ嬢——」
「泣かないでください。化粧が崩れます」
「あなたのせいでしょう!」
三人で、笑った。泣きながら。
* * *
式場は、ヴェルナー領の大聖堂。
領民が集まっていた。王都からも客が来ていた。
アレクシスとルートヴィヒが、最前列。ハインリッヒも、いた。
エルヴィンが、祭壇の前で、待っていた。騎士の正装。——手が、震えていた。
「エルヴィン様。緊張していらっしゃる」
副官が、からかった。
「緊張していない」
「嘘ですね」
「……少しだけ」
大聖堂の扉が、開いた。
リーゼが、父親に付き添われて、歩いてきた。
銀の髪。白いドレス。四十七の星が刺繍された、ヴェール。
ぼんやりと見える道を、一歩ずつ、踏みしめて。
大聖堂が、息を呑んだ。
祭壇にたどり着いた。エルヴィンが、手を差し出した。
リーゼは、その手を、取った。
「遅くなりましたわ」
「待っていました。——ずっと」
司祭が、誓いの言葉を、述べた。
「エルヴィン・ランベルト。この女性を妻とし、病める時も、健やかなる時も、共に歩むことを、誓いますか」
「誓います」
「リーゼロッテ・フォン・ヴェルナー。この男性を夫とし、病める時も、健やかなる時も、共に歩むことを、誓いますか」
リーゼは、微笑んだ。
「誓います。——二度は、言いませんわよ」
会場が、笑いに包まれた。
鐘が、鳴った。
死亡フラグの鐘では、なかった。
祝福の、鐘だった。
四十七個の星の刺繍。マリアとセレナが仕込んだやつ。ここで泣かなかったら嘘でしょ。
「誓います。——二度は言いませんわよ」が誓いの言葉になるの、第35話の伏線回収。書いた時は狙ってなかったけど繋がった。




