第47話 春を待つ
甘い回。糖分補給にどうぞ。
冬が、来た。
ヴェルナー領は、雪に覆われた。
リーゼは、暖炉の前に、エルヴィンと並んで座っていた。
「来春の挙式の準備、進んでいますか」
「マリアとセレナ嬢が、取り仕切ってくれているわ。私は——花嫁衣装を選ぶくらい」
「花嫁衣装。見たいですね」
「当日のお楽しみよ」
リーゼは、暖炉の火を見つめた。左目で、ぼんやりと、オレンジの揺らぎ。
「エルヴィン様」
「はい」
「結婚式には、殿下も、ルートヴィヒ様も、ハインリッヒ様も、お招きしたいの」
「もちろん。——殿下、来ますかね」
「来るわ。断る理由がないもの」
「元婚約者の結婚式、辛くはないですか」
「殿下は、強い人よ。自分で立てる王になった。——元婚約者の幸せを祝えるくらいには」
「リーゼ嬢は、優しいですね。殿下にも」
「優しいのでは、ないわ。——もう、恨んでいないだけ。八年分の怒りは、あの演説で、出し切ったから」
エルヴィンが、リーゼの手を取った。
「僕は、あなたの、最初の選択ではなかった。——それは、知っています」
「え」
「最初に愛したのは、王子、だったんでしょう」
リーゼは、黙った。
「それは——」
「否定しなくていいです。——僕は、二番目でいい。二番目から始まって、一番になればいい」
「……馬鹿ね。もう、とっくに、一番よ」
「え」
「だから、二度は、言わないと——」
「聞こえませんでした。もう一度」
「聞こえたでしょう!」
「聞こえません」
「……一番よ。あなたが。とっくに」
エルヴィンが、リーゼを引き寄せた。
暖炉の火が、パチパチと、はぜた。
「春が、待ち遠しいですね」
「ええ。——待ち遠しいわ」
「一番よ。あなたが。とっくに」を二回言わされるリーゼ。エルヴィン策士。
「二番目から始まって、一番になればいい」、自信じゃなくて覚悟があるんだよなこいつ。
ホットココア飲みながら書きました。




