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第46話 帰郷

おかえりなさい、リーゼ。

帰りの馬車の中で、リーゼは、穏やかに眠っていた。


 エルヴィンが、隣で、銀色の髪を見ていた。


「エルヴィン様。じっと見ないで」


「起きていたんですか」


「眠りが浅いの。——八年の癖で」


 リーゼは、身を起こした。


「ねえ」


「はい」


「あの演説の後、色々な貴族から手紙が来ているの。『銀髪の守護者』って、呼ばれ始めているみたい」


「二つ名ですか。格好いいですね」


「やめてほしいわ。恥ずかしい」


「似合っています」


「何でも褒めるの、やめて」


 二人で、笑った。


 馬車の窓から、ぼんやりと、ヴェルナー領の風景が、見えた。


 黄金の麦畑。修繕された水路。新しい学校の、屋根。


「変わったわね。ほんの、数ヶ月で」


「リーゼ嬢が、変えたんです」


「違うわ。みんなが変えたの。マリアも、セレナ嬢も、領民のみんなも。——私は、きっかけを作っただけ」


 馬車が、屋敷の門を通った。


 マリアとセレナが、出迎えていた。


「おかえりなさいませ、リーゼロッテ様!」


「ただいま」


 マリアが、泣きながら、抱きついた。セレナは少し離れて、静かに、微笑んでいた。


「セレナ嬢。留守中、ありがとう。帳簿は、見ました?」


「もちろんです。税収、先月比で八パーセント増。水路の修繕効果が、出始めました」


「素晴らしいわ」


 屋敷の中に、入った。


 見慣れた——いや、ぼんやり見える——廊下。窓の光。庭の木の影。


 ここが、自分の居場所だ。


 王宮ではなく。王子の隣でもなく。


 ここが。

短い回ですが、好きな回。ただ帰ってくるだけの話。でもそれが一番大事。

税収8パーセント増加って報告するセレナ、完全に有能な行政官になっててちょっと笑った。

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