第43話 国王の招待
叙勲の回。リーゼ、報われます。
王都から、国王直筆の招待状が届いた。
『リーゼロッテ・フォン・ヴェルナー嬢を、収穫祭の式典に招待する。王国への功績を讃え、叙勲を授ける』
「叙勲——」
マリアが、声を詰まらせた。
「リーゼロッテ様。陛下、直々に」
「殿下が、裏で動いたのでしょうね」
リーゼは、苦く笑った。嫌では、なかった。
収穫祭。——宰相が、爆ぜようとしたあの祭。火薬は撤去され、今年は安全に行われる。
「行きましょう。——最後の仕上げよ」
* * *
王都に入る馬車の中で、リーゼは左目で、ぼんやりと、街並みを見た。
「変わっていないわね、王都は」
「リーゼ嬢。見えるんですか」
「輪郭だけ。——でも、この街の匂いと音は、よく覚えている」
王宮に着くと、侍従が丁重に案内した。以前の、北棟の客間ではなく、最上級の来賓室だった。
「ずいぶんと、扱いが変わりましたこと」
「国を、お救いになった方ですから」
リーゼは、肩をすくめた。
* * *
前夜。
アレクシスが、来賓室を訪ねてきた。
「リーゼロッテ。——久しぶりだな」
「殿下。——いえ、王太子殿下、でしたね」
「正式に冊立された。ルートヴィヒの推薦もあって」
「ルートヴィヒ様が。——立派になられたのね、弟君も」
「ああ。ルートヴィヒは宰相府の再建を任されている。十五とは思えん手腕だ」
「宰相に育てられた知識を、正しい方向に、使っているのね」
二人は、穏やかに、話した。
以前のような緊張は、なかった。王子と元婚約者、ではなく——戦友として。
「リーゼロッテ。——目は」
「左目が、少し。右目は、光だけ」
「そうか」
「でも、力は消えました。もう、未来は、視えません」
「……惜しいな。国にとっては」
「個人にとっては、解放ですわ」
アレクシスが、笑った。
「お前は、いつも、正直だな」
「嘘は、疲れますもの。——八年間の嘘で、十分ですわ」
「……すまなかった」
「何度目の謝罪ですの」
「何度でも言う。足りないくらいだ」
「では、一つだけ」
「何だ」
「明日の式典で、お話をします。——殿下の前で。宮廷の全員の前で」
「話?」
「八年間の、真実を。——私の口から」
アレクシスの目が、見開かれた。
「全てを——話すのか」
「ええ。未来視のことも、代償のことも、あなたを守り続けたことも」
「それは——お前が」
「私が決めることですわ。殿下が気を揉む必要は、ありません」
リーゼは、微笑んだ。
左目で、ぼんやり見える王子の顔は、赤かった。
「泣いていらっしゃるの、殿下」
「泣いていない」
「嘘が、お下手ですこと」
「うるさい」
「嘘つき」「泣いていない」のやりとり。恋人じゃない、でも他人じゃない。
銀の指輪、戦友としての証。「髪と同じ色だ」「偶然だ」って殿下、可愛いな。
カレー三日目。さすがに飽きた。




