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第39話 自分を守る戦い

最終章スタート。

## 第四章 最後のフラグ


 リーゼは、自分の死亡フラグと向き合うことを、決めた。


 八年間、他人のフラグを折り続けた。方法は——未来を視て、原因を特定し、潰す。


 今度は、未来視が、ない。運命の音だけ。


 音は「死が近い」と教えてくれる。原因も、時期も、具体にはわからない。


「考えるのよ、リーゼロッテ」


 自分に、言い聞かせた。


 原因は——未来視の代償。身体に蓄積した「未来の毒」のようなもの。八年分の代償が、今になって、命を蝕んでいる。


 治療法は、あるのか。


     * * *


 手を、尽くした。


 まず、領地の医師。


「身体が弱っておられます。特に、脳と心臓に、負担が——ただ、原因が、わかりません」


 王都の宮廷医にも、手紙を書いた。


 返事は同じ。「原因不明の衰弱」。


 次に、魔術師。この世界には、魔術がある。ならば——代償を、魔術で抜けるかもしれない。


 エルヴィンが伝手を辿り、王都の魔術学院から老魔術師を招いた。


 老魔術師は、リーゼの身体を、入念に視た。


「……ふむ。これは」


「何か、わかりますか」


「あなたの中に、膨大な魔力の残滓がある。使い果たされた魔力の——燃えかすのようなものだ」


「燃えかす」


「未来を視る力は、強大な魔力を使う。消費された魔力は、消えるのではない。——灰として、体の中に残る。それが、あなたの生命を圧迫している」


「取り除けますか」


 老魔術師は、首を振った。


「わしの力では、無理だ。これだけの量は——八年分の蓄積は。普通なら、人はここまで溜まる前に、死んでいる」


 リーゼは、苦く笑った。


「私は、死ぬべき時に、死ななかったんですのね」


「あなたは、よほど強い意志で、生きてきたのだろう。——だが、身体の限界は、意志では超えられない」


「方法は、本当に、ないのですか」


 老魔術師は、少し、考えた。


「一つだけ。——理論上の話だが」


「聞かせてください」


「魔力の灰を、別の器に移す。あなたの身体から抜いて、別の物に封じる。——ただし、それには、膨大な魔力を受け止められる器が要る。普通の器では、灰の重さに耐えられない」


「膨大な魔力の器」


「伝説の類だ。実在するかも、わからぬ」


 リーゼは、黙り込んだ。


     * * *


 老魔術師が去ったあと、エルヴィンが言った。


「リーゼ嬢。心当たりが、あります」


「何」


「ヴェルナー領の北の山に——古い神殿があります。子供の頃、父に連れられて行った。——そこに、大きな水晶が、祀られていた」


「水晶?」


「普通の水晶では、なかった。触れると、暖かいんです。まるで、生きているみたいに」


「魔力を帯びた、水晶——」


「もしかしたら、器に、なるかもしれません」


 リーゼの胸に、小さな灯が点いた。


 信じきるには、早い。——何もしないよりは、ましだ。


「行きましょう。その神殿に」


「足元の悪い、山道です。目が——」


「あなたが、私の目になるのでしょう」


 エルヴィンが、笑った。声で、わかった。


「ええ。——何度でも」

「魔力の灰」、燃え尽き症候群のメタファーのつもりで書いた。使い果たした代償は身体に残る。

神殿の水晶の伏線、エルヴィンの子供時代の記憶から拾う。こういうのが繋がる時気持ちいい。

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